
オフィス棟にはライオンの本社が入居
日本郵政グループで不動産事業を担う日本郵政不動産は、東京都台東区の蔵前で、再開発建物の「蔵前JPテラス」を竣工したと3月に発表した。
再開発建物は、都営浅草線の蔵前駅から徒歩2分のところにある。最寄りは蔵前駅だが、JR総武線の浅草橋駅から徒歩7分・両国駅からも徒歩12分と近い。

上記の地図では蔵前駅が2つあるが、計画地に近い方が都営浅草線の駅で、北にある蔵前駅は都営大江戸線の駅だ。
都営線は東京駅こそ通っていないが、浅草線を利用すれば品川方面へ行けるほか、京急線に乗り換えれば羽田空港にもアクセスできる。
また、大江戸線を利用すれば六本木などを経由して新宿方面へ行くことも可能だ。
なお、蔵前の西には秋葉原・御徒町の街があり、隅田川沿いに北へ行くと浅草の街がある。
蔵前は浅草や秋葉原ほどの知名度を持っていないが、都心から非常に近く交通アクセスの良い便利な街だ。
蔵前JPテラスの規模は、敷地面積約14,400u・地上23階・塔屋1階建てとなっており、主な用途は住宅・オフィス・物流施設など。

オフィスは「JPライオンビルディング」という名称になっており、歯ブラシなど日用品を生産するメーカーのライオン本社が入っている。
ライオンはこれまで蔵前JPテラスから見て隅田川の対岸北側に本社を構えていたが、蔵前JPテラスの完成に合わせて本社を移転した。

また、ライオンのグループ各社が集約されるため、蔵前周辺にはライオンと関連会社に勤める人が集まってくることになるだろう。
そのほか、建物の9階には屋上庭園が配置され、庭園の南側には菜園が設けられている。菜園は入居者に加えて外部の人も利用できるようだ。

蔵前JPテラスを勤務先とする人が集まってくることに期待
日本郵政グループが手掛けた再開発だけあって、1階には郵便局が入っているほか、「物流棟」を備えているのが蔵前JPテラスの特長だ。
近年、EC事業の振興などを背景として、不動産デベロッパーが郊外に大型物流施設を建てることはめずらしくない。
しかし、秋葉原や上野といった山手線圏内に近い都心で、商業施設ではなく物流施設を作ったのは日本郵政グループならではの開発と言える。
分譲用のタワーマンションが建っていない点も、その他のデベロッパーが手掛ける再開発とは異なるところだ。

プレスリリースによると、物流棟は日本郵便が物流拠点として利用するという。
物流棟は9階建てで延床面積が約29,000uあり、建物の規模はオフィス棟とほとんど変わらない。
物流施設は商業施設と違って街の賑わい創出には直結しないが、新たに物流施設ができれば、施設で働く人が周辺に集まってくることになる。
ライオン本社および関連会社に勤める人たちと物流施設の勤務者を合わせれば、それなりの数になるのではないだろうか。蔵前周辺や都営線沿線での賃貸需要喚起に期待がかかるところだ。
取材・文:
(はたそうへい)