東京、福岡などで大学の都心回帰が進んでいる。加えて計画が明らかになっているのが仙台だ。
東北最大の私立大学である東北学院大学が現在、3カ所に点在しているキャンパスのうち2カ所を集約、新たに仙台市から取得した旧市立病院跡地に新しいキャンパスを整備するというのである。
この背景にはキャンパスの交通利便性を上げて学生を確保したいという意図がある。市内では地下鉄東西線の開業によって東北大川内、青葉山キャンパス、宮城教育大学、東北工大へのアクセスが劇的に改善した。
一方の東北学院大学の1~2年生は泉または多賀城という、仙台駅からやや離れたキャンパスへ通学しなくてはならない。特に多賀城キャンパスは築50年ほどが経過し、老朽化も気になる。そこで、全体を仙台駅から利便性の高い土地に移そうというのである。
下が現在の東北学院大学のキャンパス配置図である。新しく整備される五橋キャンパスは既存の土樋キャンパスとは愛宕上杉通りを挟んだ向かい側にあり、旧市立病院の跡地。解体工事は18年末から始める予定で、新キャンパスの着工は20年度。
21年度末の完成を目指し、泉、多賀城両キャンパスからは1年をかけて移転を行い、23年4月には授業開始というスケジュールとなっている。
新キャンパスにはホール棟、講義棟、地上19階建ての高層棟、研究棟、カフェ棟の計5棟を建設する。一部の建物と市営地下鉄南北線五橋駅を直結する方向で市と調整する。既存の土樋キャンパスも同様に駅出入り口に隣接する市福祉プラザの敷地内を通行して駅と繋げたいとしており、こちらも今後協議が行われる。
問題は学生がいなくなる泉と多賀城の既存キャンパスの行く末。泉キャンパスは教養学部などの学生ら約6000人が在籍しており、多賀城には工学部の約2200人がいる。
そのうち、泉キャンパスには野球場などの運動施設が集まっていることから、五橋移転後も活用するというが、利用する頻度、数が大幅に減少することは間違いない。
多賀城は市の中心部に位置する好立地でもあり、市と調整しながら売却も含めた検討が行われるという。いずれも再開発などが行われるのは23年以降とされている。
どちらの地元でも学生流出、まちの空洞化を懸念する声が出ており、特に学生向けアパートや飲食店その他が集まり、大学の門前町化している泉キャンパス周辺では死活問題である。学生の労働力が減ることへの飲食店の不安もある。
こうした状況を反映してか、泉キャンパス周辺では学生アパートの売り物件が少なからず登場し始めている。特に学生アパートが集まる歩坂町が目につくようだ。この地域に物件を所有しているオーナーからするとなんとか売り抜けたいのだろうが、さて、どうなることだろう。
ちなみに国内の大学生数は少子化で減少を続けており、2018年の65万人から、13年後の31年には48万人にまで減る見通しとか。14年時点で約4割の私立大学が「定員割れ」であり、2018年には170校が閉鎖の危機に陥るという予測もある。学生向けアパートがその影響を大きく受けることは明らかであり、今後はそれを見越した売り物件が市場に供給されることになるだろう。
健美家編集部(協力:中川寛子)