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福島県・JR浪江(なみえ)駅周辺の再整備がスタート。隈研吾建設都市設計事務所などが参画し復興を後押し

都市計画・再開発(地域情報)/仙台/東北 ニュース

2021/10/16 配信

海、山、川に囲まれた自然豊かなまち
東日本大震災から復興が進行中

福島県浪江町は、同県沿岸部の浜通りのほぼ中央に位置し、双葉郡に属するまち。東は太平洋に面し、西は阿武隈山系に囲まれた、自然豊かなエリアとして知られる。東北地方だが積雪はほとんどなく、夏は涼しく過ごしやすい。

電車では東京から約3時間、仙台からだと1時間少し、自動車でも常磐自動車道を使うとアクセスしやすい立地。ご当地グルメの、浪江焼きそばでも有名だ。
電車では東京から約3時間、仙台からだと1時間少し、自動車でも常磐自動車道を使うとアクセスしやすい立地。ご当地グルメの、浪江焼きそばでも有名だ。

浪江町といえば、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けたことでも知られている。同町では震度6強を観測し、揺れや津波により沿岸部は壊滅的な状況に陥った。

加えて、隣接する大熊町域では東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生し、放射能漏れが深刻化したことを受け双葉郡の市町村住民は避難を余儀なくされ、約2万1500人の町民は全国に散り散りになることに。

2017年3月末には一部地域の避難指示が解除、一部地域での居住は再開されたが、現在も多くの人が町外での避難生活を続けている。現在の住民登録数は約1万6400人で、町内に住んでいるのは約1600人にとどまっている。

SDGsの理念に沿った先進的な
復興まちづくりを推進

除染やインフラ復旧、生活基盤の再生は着実に進んでいる。まちの中心部である浪江駅にはJR東日本の常磐線が乗り入れていて、東日本大震災以降は営業を休止していたが、17年の一部地域の避難解除に伴い同駅~小高駅間が運転を再開。昨年3月には、常磐線全線が復旧した。

まちの再生に関しても、この10年間で災害公営住宅などを整備するとともに、浪江診療所の開設、なみえ創成小・中学校や浪江にじいろこども園を整備するなど、早期帰還を希望する町民がくらせるまちづくりを推進。

スーパーマーケットの誘致、道の駅なみえの建設なども行ってきた。主産業である農林水産業の再生に向け、営農再開支援や穀物貯蔵施設のカントリーエレベーターの整備、産業団地への集成材工場の誘致、漁港とその周辺でも漁業施設の整備を進めてきた。

震災の発生以降、様々な復旧・復興事業を行ってきた浪江町。安心・安全に生活できる環境整備に取り組んできた。 出所:「浪江駅周辺整備計画」(2021年3月)
震災の発生以降、様々な復旧・復興事業を行ってきた浪江町。安心・安全に生活できる環境整備に取り組んできた。
出所:「浪江駅周辺整備計画」(2021年3月)

持続可能な社会の実現を目指す世界共通の目標として国連が掲げる「SDGs(持続可能な開発目標)」の理念に沿い、先進的なまちづくりにも進めている。

「なみえ水素タウン構想」はその一つだ。2020年3月に沿岸部の棚塩産業団地内に、再生可能エネルギーを利用した世界最大級の水素拠点となる「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」が竣工し、同所で製造する水素を積極的に活用。効率的な水素の活用導入に向け様々な実証実験を行い、再生可能エネルギーのみを使用する「棚塩RE100産業団地」に水素を供給・活用する計画だ。

ゼロカーボンシティを宣言した。2050年までに二酸化炭素の排出量実質ゼロを目標に低炭素・脱炭素に関する取り組みを進め、なみえ水素タウン構想と連動し、浪江産水素の地産地消を目指す。

復興スマートコミュニティ事業では、電気自動車の活用を通じて、再生可能エネルギーの蓄電による非常用電源としての利用や、廃蓄電池リサイクルなどのビジネスモデル化による雇用の創出など、EVを活用したまちづくりを目指している。

駅周辺8ヘクタールのエリアで
交流施設や住居、商業施設などを開発

浪江駅を含む中心市街地では、賑わいの復活の向けた取り組みも行われている。2017年3月には「浪江町中心市街地再生計画」を策定し、対象約160ヘクタール内の将来イメージを示し、各ゾーンのイケル機能と回遊性の向上について整理を行い、昨年3月には「浪江駅周辺エリアのまちづくりビジョン」を策定。

まちの顔である駅前のにぎわい創出を目的に、コンパクトなエリアに集中投資する「先導整備エリア」と、その投資効果を周辺エリアに波及させる「まちづくり推進エリア」の考え方を示している。

「浪江駅周辺エリアのまちづくりビジョン」の概要。駅周辺エリアを「先導整備エリア」と「まちづくり推進エリア」にわけ、中心市街地の再生に取り組む。 出所:「浪江駅周辺整備計画」(2021年3月)
「浪江駅周辺エリアのまちづくりビジョン」の概要。駅周辺エリアを「先導整備エリア」と「まちづくり推進エリア」にわけ、中心市街地の再生に取り組む。
出所:「浪江駅周辺整備計画」(2021年3月)

これを具体化すべく、今年9月5日には浪江町と隈研吾建築都市設計事務所、伊藤順二事務所、住友商事と、デザインの力で復興とまちづくりを進める連携協定を締結した。

同協定では、両事務所が駅周辺の約8ヘクタールの建物や都市空間などのデザイン・設計を担当。行政や住友商事が進める水素や再生可能エネルギーとの調和を図りながら、帰還者や移住者を増やし復興を加速させるのが目的だ。

浪江町は林業が盛んで、日本最大規模のFLAM(福島高度集成材製造センター)が稼働するなど、県全体の木材産業をけん引する地域。木材を基調とした建築作品で知られる隈研吾建築都市設計事務所が設計、美術評論家でアート・デザインのイベントやプロデュースを手掛ける、プランナー・プロデューサーの伊藤順二氏が代表の伊藤順二事務所が全体の空間デザインを担う。

まちは本年度にマスタープランを策定のうえ、その後は4者で連携して交流施設や公営住宅、駅東西自由通路、商業施設、民間マンションなどの開発を2024年以降に進め、2026年度までの整備完了を予定している。

浪江駅周辺施設の構想イメージ。駅前一帯を再整備し、にぎわいや交流を促す。これにより市街地のさらなる復興を目指している。 出所:ニュースリリース
浪江駅周辺施設の構想イメージ。駅前一帯を再整備し、にぎわいや交流を促す。これにより市街地のさらなる復興を目指している。
出所:ニュースリリース

交流施設にはコワーキングスペースやレンタルオフィス、移住定住のワンストップ窓口などを設置、居住施設には帰還町民や自宅への帰還を目指す町民、産業団地の就業者などが入居すると想定されている。駅周辺の公共空間はバリアフリーで、水素・自動運転などの実験と情報発信、多様な活動の場となるオープンスペースとして活用される見通しだ。

JR常磐線の全線運転再開で、今後はさらなる駅利用者の増加、復興が進むにつれ帰還者や移住者が増えてくることも予想される。そのカギとなる今回の再開発プロジェクトには多大な期待が寄せられる。

健美家編集部(協力:大正谷成晴)

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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