バブル期に一大スキーリゾートとして栄えた岩手県八幡平市の「安比高原(あっぴこうげん)」にこの夏、世界から熱い視線が注がれている。バブル崩壊とスキーブーム終焉に加え、近年では温暖化による雪不足、雪質の低下や東日本大震災が追い打ちをかけ、かつての賑わいを失いかけていた安比高原再生の原動力となっているのはーー。

英国名門校誘致による次世代型街づくり構想、
にわかに注目される安比高原
最盛期の1990年代には年間150万人が訪れ賑わいを見せていた安比高原スキー場も、震災後は30万人代にまで客足が激減。サラサラのパウダースノーを売りにインバウンド需要に活路を見出したものの、コロナ禍に冷水を浴びせられていた。
起死回生策として、同スキー場を運営する株式会社岩手ホテルアンドリゾートなどが立ち上げたのが、安比高原リゾートを世界のグローバル化に対応したリゾートに生まれ変わらせ、進化させる「バレー構想プロジェクト」。
その第一弾として手掛けたのが、イギリスの創立450年の名門全寮制スクール「ハロウ」の誘致だ。
イギリスの元首相ウィストン・チャーチルらを輩出し、ウィリアム王子らの母校であるイートン校とともに英国名門9校のひとつに数えられている。この日本校が、今年8月、いよいよ安比高原に「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」として開校する。2022年度は、小学6年生から中学3年生までの約200名を募集する予定だ。

すでに20年前からタイ・バンコクや中国・上海、北京などアジアを中心に8校のインターナショナルスクールを運営してきたハロウの知名度はアジア圏で特に高い。
世界的な指導者やノーベル賞受賞者を多く輩出してきた伝統に裏打ちされたカリキュラムはもちろん、安比高原の豊かな自然環境の中、日本最大級のスキーリゾート、36ホールを有するゴルフ場、18面のテニスコートが完備されている施設の充実ぶりに惹かれ、特に中国本土や台湾の富裕層の子弟が多く入学してくる見通し。
注目集まる安比高原の収益物件、
中国からの買い付けも増える見込み
「バレー構想プロジェクト」では、ハロウ開校を核として、観光・教育・健康をコンセプトに、商業施設、定住型別荘、富裕層向けホテルなどの各種施設を整備し、将来的に1万人規模が定住する街づくりを構想している。
ハロウの公式サイトによると、学費は、学年が上がるにつれて上昇し、年額なんと849万から927万円!国内外の超富裕層が岩手の山奥に集まるということになる。地元への経済効果が期待される。
実際に、今年2月にオープンしたインターコンチネンタル ホテルズ&リゾーツの新しいホテル「ANAインターコンチネンタル安比高原リゾート」(客室数38室)は、正規料金1泊7万円からという強気の値付けにも関わらず、開業以来、高稼働率を維持しているという。
地元不動産業者によると、ハロウ開校に乗じて、今年に入ってバブル期に多く建てられたスキー客向けのペンションや別荘、保養所などの売り物件がちらほら市場に出てきたという。
価格はリゾートマンションの区分で300万円前後、ペンションや保養所の一棟物件で2000万円代前半が主流だそう。温泉権付き分譲地なども出ており、いずれ中国資本が流入すれば、何倍もの価格で取引されそうなお宝物件も見受けられる。
開校後はさらにアジアでの知名度が高まり、不動産投資家の注目も高まる一方だろう。コロナ後のスキー客需要の増加も加味すれば、かなり優良な投資先として「安比」を覚えておいてもらいたい。
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健美家編集部(協力:大崎良子(おおさきりょうこ))
■ 主な経歴