言わずと知れた東海地方の中心地
リニア開通で高まる存在感
名古屋と言えば、東京23区、大阪市とともに、日本三大都市圏の形成する中心都市のひとつ。約326㎡の面積に16区で構成されていて、名古屋駅のある中村区、ナゴヤドームのある東区、日本有数の繁華街である栄がある中区などが有名だ。
豊田市や四日市市とともに中京工業地帯の中核で、自動車、航空宇宙、鉄鋼、電機など幅広い産業が盛んで、トヨタをはじめ多くの企業が拠点を構え、ノリタケや東レ、アサヒビールなど大手メーカーの製造拠点も多い。
2017年度の実質市内総生産は13兆2517億9200万円を記録し、製造品出荷額は3兆3636億円にものぼった。文化・商業施設も数多くあり、一大経済圏を形成している。
1889年の市制施行時は15.7万人だったのが、1969年には200万人を突破、2020年3月時点で232万人を数える。もっとも多いのは緑区で、中川区、守山区、千種区、名東区、天白区、北区なども人口集中エリアだ。同市の調べによると、2033年まで人口は同規模をキープする見通しだという。
こうした背景からわかるのは、賃貸物件に対する高いニーズだ。『健美家』の「収益物件 市場動向マンスリーレポート2020年4月期」によると、名古屋を含む東海地方の収益物件は、区分マンション、一棟マンション・アパートのどれにおいても、近年だと価格は上昇傾向にあり、全国平均に比べると今年3月時点の水準は以下のような結果だった。
■区分マンション(利回り/価格)
全国平均:7.59%/1498万円
東海:10.91%/1162万円
■一棟アパート(利回り/価格)
全国平均:8.65%/6595万円
東海:8.48%/6701万円
■一棟マンション(利回り/価格)
全国平均:8.35%/1億5785万円
東海:9.57%/1億4441万円
一棟アパートは全国平均とあまり変わらない水準だが、区分・一棟マンションは価格が低く高利回りという結果。地方に比べると条件は良くないが、都市部としては収益を確保しながら不動産経営ができる。
名古屋に関しては東海の平均よりさらに物件価格は上がり利回りは下がると推測するが、高い賃貸需要が空室リスクを抑えてくれる可能性が高い。
市中心部では再開発が多数進行中
資産価値の上昇に大きく影響する?
名古屋の公示地価平均はバブル期ピークの1991年に171万円超をマーク。その後は低迷して2004年には24万円台にまで落ち込んだが、直近で47万円台後半まで価格を戻した。区ごとを見ても、2010~19年の間で公示地価が下がっているのは港区と南区のみで、残り14区は上昇曲線を描いている。とりわけ中区は名古屋駅周辺で地価が3倍以上にも上昇した。
その理由は、大規模な都市再開発のプロジェクトだ。かつ、中区や市全体の地価上昇を引き上げている最大の要因は、2027年開業予定のリニア中央新幹線であるのは言うまでもない。
これにより、現状は「のぞみ」で最短1時間29分かかる品川~名古屋間が、40分に短縮されるという。下手に都内や首都圏を移動するより名古屋の方が時間的に近くなるのだから、ビジネス的なつながりはさらに強くなるに違いない。これを見越して名古屋の地価が上昇していると考えるのは妥当だ。
駅周辺の再開発は加速するばかりだ。これまでもJRセントラルタワーズ(2000)、ミッドランドスクエア(07年)、モード学園スパイラルタワーズ(08年)、大名古屋ビルヂング(16年)、JRゲートタワー、JPタワー名古屋(ともに17年)と高層ビルの建築ラッシュが相次いだが、名古屋鉄道は駅前の大規模開発に乗り出すとすでに発表。
近鉄グループホールディングスや三井不動産、日本生命など地権者と合同で、高さ180m、南北400mにわたる巨大な高層ビルを建築し、27年度の開業を目指す。
新ビルにはオフィス、高級ホテル、商業施設がテナントとして入る予定だ。再開発に合わせて地下にある駅の面積も倍増し、ホームは現在の2本から4本へ強化。中部国際空港行き専用ホームの設置も検討している。
これだけではない。名古屋駅の東西にある駅前広場はリニア開業に向けて再整備を推進。さらに、駅から徒歩4分の名駅4丁目では「(仮称)名古屋三井ビルディング北館」の建設が進行中で、21年1月にオープン予定。長谷工グループの総合地所などは名駅南2丁目に42階のタワーマンションの建設を計画している。
場所は離れ、栄広場も再開発がスタートすることに。三菱地所などのグループが、地下4階、地上36階建て、高さ200mの高層ビルを建てる。地下2階~4階は大丸松坂屋が商業店舗を展開し、4~6階はシアターが入居。中層~高層階にはイノベーション拠点やオフィス、名古屋発となる外資系ラグジュアリーホテルが入る予定だ。
伏見周辺でもタワーマンションやテナントビル、ホテルの建設は進められていて、これらのプロジェクトにより、名古屋中心部の景色は変貌を遂げていく。
再開発でビジネス・商業施設が集積すると雇用が生まれ、周辺エリアには多くの人が集まり、住居も必要となる。おのずと賃貸物件へのニーズも高まるだろう。地価上昇による資産価値アップだけではなく、空室リスクを抑えた賃貸経営が可能だ。そんな魅力を名古屋は秘めている。
もともと、在来線や新幹線、エアラインと交通の便はよく、ビジネス街と繁華街も発達。地場だけではなく大手企業の工場も多く、ものづくりは盛ん。市内には多くの大学・専門学校があり多くの若者が暮らし、全人口に対する生産年齢人口の割合も高い。高い賃貸ポテンシャルのある名古屋は、ますます活性化するのではないだろうか。
健美家編集部(協力:大正谷成晴)