品川から新幹線で38分で行ける温泉街 熱海。テレワークやワーケーション目的で、今、地元の不動産業者には、不動産を購入したいとの問い合わせが急増している。GoToトラベルの影響もあり、旅行客も戻ってきていた。

ワーケーション目的で、
不動産を買いたい人が前年比140%UP
熱海駅前の不動産会社ロイヤルリゾートが発行する「アタミロイヤルタイムズ第39号」によると、テレワーク目的などで不動産の購入反響数が、今年3〜6月期、前年比140%増の多さである。
熱海には、海も山も温泉もあり、リゾート気分を味わいつつも、東京までのアクセスもよく、ワーケーションには最適である。
ただし、コロナの影響で新たなホテルの建設には、歯止めがかかっている。
熱海の代表的なイベント「熱海海上花火大会」の打ち上げ場所の付近にある、熱海港の遊休市有地(熱海市和田浜南町)の活用策として、東急不動産が会員制ホテルの建設を提案していた。それがコロナの感染収束の見通しが立たないことから、同社が提案を取り下げたと静岡新聞が7月11日に報じている。

地元の旅館関係者に話を聞くと、コロナ禍において、海外旅行客は減ったものの、国内需要は戻ってきており、旅館では、GoToトラベルの影響もあり、リピーターやシニア層によって賑わいを見せているそうだ。また、特筆すべきは、ここ最近の熱海では、若者の旅行者や移住者が増えてきていることだ。
数年おきに熱海に取材で訪れているが、今回、実際に街を歩いてみて、外国人旅行者はまったく目にしなかったが、20〜30代の若者が多い印象を受けた。
「熱海が復活したとマスコミに言われ始めたのが2015年ぐらいのこと。30〜40代が中心になって、シャッター街の遊休不動産の活用が進み、熱海に若い人を呼び込もうとの動きが活発になっていきました。その頃から、クリエイターなど、若い移住者が増えてきましたね」
たとえば、廃墟になっていたパチンコ店をリノベーションしたゲストハウスマルヤが熱海の中心街「熱海銀座」にでき、多くの旅行者に親しまれているのを筆者も取材した。安く宿泊できるゲストハウスの存在も、若者を呼びよせるきっかけになったのだろう。
熱海市が財政危機宣言を出したのは2006年。そこから熱海市は市の発展のために、若年層を対象とするプロモーションを打ち出し、テレビの情報番組やバラエティ等のロケ地として露出を増やしていた。そうして、観光客だけではなく、若年層の移住者も増えてきた。
2017年の観光庁が発行した観光白書では、熱海がV字回復を遂げた街の事例として紹介している。

2017年に、熱海の街を活性化させたいとの思いでオープンした『熱海プリン』は、今や1日に5000個売れる熱海名物となっている。インスタグラムなどSNSでも、フルーツサンドの『熱海フルーツキング』などと合わせて話題だ。
SNSで熱海の街や食を若者が楽しむ姿を見て、さらにまた熱海を訪れる若者が増えているのだろう。
熱海には魅力的な賃貸住宅が少ない!
若者が好むような物件のニーズあり
こうしたSNSを利用する層に届くように、写真映えするような内装にこだわった賃貸住宅を新築した男性に話を聞いた。
「熱海の賃貸住宅事情は、いいとはいえません。老朽化して、見栄えが悪い賃貸住宅が、高い家賃で、入居者を募集しています。裕福な大家さんが多いのか、お金をかけてまで賃貸住宅をどうにかしなければいけないと考えるが少ないのでしょう。だからこそ、魅力的な賃貸住宅が求められている」
テレワークやワーケーション目的で、いきなり不動産を購入するのはハードルが高い。特に熱海の不動産は、温泉がついているものも多く、管理費や修繕費が高額なケースもあり、維持していくのにお金がかかる。賃貸で暮らしてみてから、購入を考える人も多いだろう。
試しにネット検索をすると、5〜6万円で住めるような単身者向け賃貸物件は次々と出てくる。築年数が経っており、移住を希望する20〜30代が飛びつくとは思えないものも多い。だからこそ若者が住みたくなるような賃貸住宅が求められているのかもしれない。
健美家編集部(協力:高橋洋子)