名古屋市の東隣に位置する尾張旭市は、名古屋市東区と瀬戸市を結ぶ名鉄瀬戸線(通称:瀬戸線)が、市の東西を走る緑豊かな街だ。
市内には停車駅が4駅あるが、その中の1つ三郷駅周辺のまちづくり事業が動き出そうとしている。

市内初・駅直結のマンションのほか、
商業棟、公共施設、駅前広場などが誕生
同事業は三郷駅の南側と北側にわたる約1.1haの敷地で進められ、まずは南側から再開発工事を進める計画だ。約3,000㎡の駅前ロータリーを中心に、多彩な施設を3つの棟にゾーニングする。
1つにはマンション棟、もう1つは立体駐車場と駐輪場、そして商業施設の棟を配置。テラスやデッキを造設して各棟につながりを持たせることで、一体感があるオープンな空間づくりを目指している。
現在は地元住民を中心に「三郷駅前地区市街地再開発準備組合」を立ち上げて、今年夏の都市計画決定を目標としている。
地権者合意等をプロセスを経て、現時点の想定スケジュールでは最短で令和6年度に工事着手、令和9年度をめどに完成見込みで、北側の再開発はその後に行う予定(変動する場合もある)。
都市計画決定後に事業が本格化するため、マンションの不動産ベロッパーや商業施設の入居テナント等の詳細は未定だ。
今後、変更も含めて具体的な検討が進められる可能性があるが、マンションは22階建て、約140戸の規模で駅直結型を想定している。実現すれば市内初の駅直結マンションが誕生する。
名鉄瀬戸線沿線、陶磁器産業で栄えた三郷
長年住民の声を集め、再び活気を起こしたい
三郷駅は瀬戸線の急行停車駅で、名古屋の都心の栄町まで直通で最短24分とアクセスが良いことから、市内で最も乗降客数が最も多い駅だ。同事業を担当する市の都市計画課の穂園卓也さんに街の成り立ちについて伺った。

「三郷は瀬戸市に隣接していることから、かつては陶磁器産業が盛んでこの街を中心に尾張旭市は栄えていきました。それにより、鉄道沿線に家や人口が増えていきました。
時代の流れとともに、街の中心が三郷から離れていったことで、祭りやイベントが減り、地元の人たちがかつてのにぎわいを取り戻したいと願ったことが今回の事業のきっかけです。」

「駅の南側には昔、三郷市場がありましたが平成11年に市が跡地を買い取りました。昔から住む地元の人たちにとって、小さい頃、この場所に人が集う光景を見ていただけに、『再び滞留する場所をつくりたい』との声が上がりました。」

平成21年頃から、地元の人たちがワークショップや勉強会を何度も開き、次第に機運が高まった。そして地権者を中心に発起人会から「まちづくり協議会」が発足。
以降は街づくりのコンセプトを練りビジョンを策定。平成28年から事業化を目指し地権者の意向や民間事業者へのヒアリングを進めた。約10年かけて、ようやく方向性が固まり準備組合発足に至った。
市は4月1日に「三郷駅周辺整備推進室」を新設。準備組合と協力して都市計画実現に向けて尽力していくそうだ。
住民と行政による地域密着型都市空間が、街に活気をもたらすことを期待したい。
健美家編集部(協力:アンズコミュニケーションズ)