「名古屋のベッドタウン」と呼ばれるまちはいくつかあり、愛知県知立市(ちりゅうし)もその一つ。
愛知県のほぼ中央に位置する知立市は、周辺を豊田市・刈谷市・安城市など自動車をはじめとするものづくり産業の盛んな都市に囲まれた、人口約7万2,000人・面積16.3km2の“人口密度高め”なコンパクトシティ。
江戸時代には東海道五十三次39番目の宿場である池鯉鮒宿(※)が置かれ、交通の要衝として繁栄。現在も鉄道・道路ともに愛知県西三河エリアでの重要な交通結節点となっている。
※池鯉鮒=ちりゅう、歴史的仮名遣いでの振り仮名は「ちりふ」


古くからの交通の要衝。西三河の玄関口
名鉄名古屋駅まで最速20分の「知立」駅
交通アクセス性が良く、コンパクトゆえに「どこへ行くにも近くて便利なまち!」と謳っている知立市の玄関口は、名鉄名古屋本線および名鉄三河線の分岐駅「知立」駅。
豊橋駅ー名鉄岐阜駅を結ぶ名鉄名古屋本線の特急停車駅で、名鉄名古屋駅までは最速20分。自動車産業が盛んな豊田市や刈谷市・碧南市にも直結するハブ駅だ。
そんな「西三河の玄関口」である知立駅ならびに駅周辺がいま大きく変わろうとしている。

複数の事業を一体的施工で進める
「100年に一度のまちづくり」
現在は、名古屋本線が東西・三河線が南北に走っており、鉄道によって市街地が分断されている状況。
加えて、電車の往来が激しい知立駅の踏切は”開かずの踏切”にもなりがちで、市内の主要な踏切では慢性的な交通渋滞の発生も まちが長年抱える問題だ。

そこで、これらの問題を解決するために知立市が進めているのが「100年に一度のまちづくり」と銘打った一大プロジェクト。
まちの発展の妨げになっていた市街地分断を解消し、知立駅を中心とした駅前の賑わいや都市機能の向上、まちなか居住の促進などで魅力あるまちづくりを目指している。
このプロジェクトでは、主に以下の複数事業を一体的に実施。
■知立駅付近連続立体交差事業
■知立駅周辺土地区画整理事業
■知立駅北地区第一種市街地再開発事業
1つめの「知立駅付近連続立体交差事業」は愛知県が施行。
鉄道による市街地の分断や踏切問題を解決するため、知立駅を高架化し、道路と鉄道の立体交差を進めている。
これにより、10箇所の踏切が除却され、人と車の流れがスムーズかつ安全になることが期待される。同事業は2023年度完了予定だ。

3つ目の「知立駅北地区第一種市街地再開発事業」は、地域住民の生活利便性を向上することや、まちの賑わい・まちなか居住の推進が目的。
市内最高層の再開発ビル『エキタス知立』がまちのシンボルとなることを期待して、知立駅北地区市街地再開発組合の施行によって5年をかけ2019年度に完了した。

知立駅周辺の環境改善を目指して
中心市街地の土地区画整理事業が進む
そして知立駅界隈では、連続立体交差事業と併せて、知立市施行の土地区画整理が着々と進んでいる。

「知立駅土地区画整理事業」では、中心市街地を”まちの顔”として魅力的に、そして貴重な土地を有効利用できるよう、地区ごとの特性や将来に合わせてゾーニング。
例えば、新たに知立駅を南北につなぐ通りは、広幅員の歩道を設け、植栽で彩るユニバーサルデザインのシンボルロードに。交通環境の改善とともに美しいユニバーサルデザインにもこだわるようだ。

以前は古くからの民家や商店など目立った駅周辺は、計画的な区画の整形が行われ、2026年度の完了予定を目指す同事業によって駅前居住も増えると予測されている。
さらに「 知立駅南土地区画整理事業」も計画中であり、さらに魅力的な中心市街地形成を目指していくという。
リニア開業後はますます首都圏が身近
知立⇔東京は1時間半もあれば余裕!?
リニア中央新幹線の開業を見越して沿線自治体ではさまざまな事業・開発が行われ期待が高まっているが、知立市もそれは同じ。
現在の東海道新幹線「名古屋ー品川」は最速1時間30分ほどだが、リニア開業後は半分以下の最速約40分で結ぶというのだから、首都圏はさらに近いものになる。
先述のとおり、名鉄名古屋本線の特急停車駅「知立」駅は名古屋駅まで最速20分。
本数も多く、普通・準急・急行・特急…と全車が停車するため「次々に電車が来る駅」であることも利便性を高めている。
ということは、再開発・土地区画整理後に住居も増え、まちなか居住をした場合は、乗り継ぎもスムーズに品川まで1時間強も不可能ではない?!

2027年開業の延期が事実上決まったリニア中央新幹線だが、開業の頃には、「100年に一度のまちづくり」によって生まれ変わった”新生”知立駅周辺の風景もまちに馴染み、人の流れや駅前生活を謳歌する人々も多くなっていることだろう。
鉄道でも、車でもアクセス性が良く、利便性の高いコンパクトシティの将来が楽しみだ。
※掲載写真はすべて2021年2月末に撮影
健美家編集部(協力:アンズコミュニケーションズ)