名古屋の歓楽街と言えば、「錦3丁目=通称:キンサン」を真っ先に思い浮かべる方が多いことだろう。しかし、いま名古屋で注目を集めているのはキンサンの隣に広がる「錦2丁目地区」だ。

2021年9月下旬に発表された名古屋圏の基準地価は、トヨタ自動車を中心とした自動車関連企業の好調ぶりが下支えとなり、2年ぶりに上昇。
中でも商業地で「+11.5%」という驚異的な地価上昇率を示したのが、中区錦2丁目19番1号のオフィスビル「名古屋鴻池ビルディング」地点だった。
長年名古屋で暮らしていても、すぐに同ビルの場所が思い浮かんだ人はおそらく少ないはず。これまで“やや地味な都心”という印象があった錦2丁目で、いったいいま何が起こっているのか?
風俗産業の浸食から一転、都心の上質な住宅街へ
北は桜通、東は本町通、南は広小路通、西は伏見通と、大きな幹線道路に囲まれた錦2丁目は、もともと「長者町繊維街」を中心に問屋街として隆盛を極めたまちだった。
しかし、繊維産業が衰退し人口減少や事業者の撤退が進むにつれて、隣接する歓楽街・錦3丁目から風俗産業の浸食が目立つようになり、まちの治安や風紀の悪化が課題となっていた。
そこで、地元住民らが中心となって2004年に錦二丁目まちづくり協議会(旧:錦二丁目まちづくり連絡協議会)を発足。「住民が住む理想のまちの実現」をテーマに、約17年をかけて取り組んできたまちづくり成果がいま実りつつあるのだ。


名古屋市が提唱する
「二核一軸構想」のど真ん中
錦2丁目地区の“格上げ”のきっかけとなったのは、名古屋市が提唱する「二核一軸構想」によるところも大きい。
名古屋の二大商業地である名古屋駅地区と栄地区を「2つの核」に位置付け、2地区の回遊性を高めるために面で「1つの軸」をつくる。その面のちょうど中間点に位置しているのが「伏見」エリアであり、注目の「錦2丁地区」も伏見エリアに属している。
伏見エリアでは大幅な容積率緩和を受け、高度利用による都市機能の再整備が急速に進んでいる。そのリーディングプロジェクトが「名古屋・錦二丁目7番第一種市街地再開発事業」だ。

このタワーマンションが完成(2022年1月予定)すると、一気に同地区に360世帯が増えることになるため、地域人口の急増を見込んでドラッグストアなど生活関連施設のオープンが近隣街区で相次いでいる。こうした「まちの機能変化」が地価を押し上げる一因となっているのだろう。
「低炭素モデル地区」認定第1号、
クリーンなまちのイメージも好感に
また、錦2丁目地区は2015年に名古屋市の「低炭素モデル地区事業」第1号に認定され、環境にやさしいまちづくりの取り組みを続けている。
太陽光や地熱発電などの自然エネルギーを活用した「CEMS(地域エネルギーマネジメントシステム)」の構築のほか、壁面・屋上・歩道への木材利用による「都市の木質化プロジェクト」を推進するなど、“クリーンな都心”としてのイメージが定着してきたことで、まちの好感度もアップしているようだ。
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そもそもの立地ポテンシャルに加え、地域住民らの取り組みによって“まちの個性”を獲得したことにより、急速に成長している「錦2丁目地区」。
近隣街区では「コートヤード・バイ・マリオット名古屋(2022年春開業予定)」「ザ・リッツ・カールトン名古屋(2022年冬開業予定)」「コンラッド名古屋(2026年開業予定)」などの高級ホテルの開業も相次いで予定されているため、今後しばらく地価ののびしろへの期待感が続きそうだ。

健美家編集部