名古屋には二大商圏がある。東海の玄関口である“名駅(メイエキ)”こと名古屋駅エリアと、名古屋の中心地に位置する栄(サカエ)エリアだ。
名古屋にお住いの読者ならご存知かと思うが、平成バブルの頃までは圧倒的に「栄」のほうが人を惹きつける街だった。友人同士で待ち合わせをする場所は決まって「栄」であり、栄交差点地下のクリスタル広場や、栄のシンボルである中日ビル前は、週末ともなると多くの若者でごった返していた。
一方、当時の名駅はビジネス街でありあくまでも働くための場所。買い物・食事・遊びに出かけるなら「栄」一択だった。
平成11年のタワーズ誕生以降、
人々の関心は栄から名駅へ
しかし、「名駅」VS「栄」の二大商圏勢力図に変化が見られるようになったのは平成11(1999)年のこと。名古屋の新たなランドマークとして名古屋駅上にJRセントラルタワーズが開業。
地上245mのツインビルは名古屋で最も背の高い建物となり、タカシマヤやマリオットなどナショナルブランドを冠する施設が名古屋初進出となったことで、名駅エリアが一気に沸いた。
その後もリニア中央新幹線開業に向けて名駅周辺では大規模再開発が続いており、現在も進化の勢いが止まらない。栄は一歩出遅れる形になったのだ。
栄エリアで根強く守られてきた
「景観形成基準」のルール
実は「栄」エリアの再開発が出遅れた理由のひとつには、厳格な景観形成基準のしばりがあったからだと考えられる。
名古屋市では、平成3(1991)年に栄エリアのメインストリートを中心とした街区を『広小路・大津通都市景観整備地区』に指定。特に名古屋都心の大動脈である広小路通沿いでは、昔ながらの「高さ31mの街並み」を守りながら広告物の掲示等を制限し“街のにぎわいと品格”を保ってきた。
しかし、時代の変遷に合わせて平成19(2007)年に同条例を緩和。平成27(2015)年に同エリアが『都市再生緊急整備地域』の指定を受け、平成29(2017)年に『大規模建築物の建築規模要件』が見直されることになった。
この見直しによって、従来「高さ100m以上かつ延べ面積5万m2以上」の大規模建築物に必要とされてきた環境アセスメント(環境影響評価)が、都市再生緊急整備地域では「高さ180m以上かつ延べ面積15万m2以上」の規模まで不要に。市が定める環境基準をクリアすれば、広小路通周辺でも高度利用による大規模再開発を行いやすくなったのだ。
続々と高層ビルが登場する栄・広小路通、
あの『コンラッド』も初進出
この時機を待っていたかのように、現在「栄交差点」を中心とした広小路通沿いでは高層ビルの建設ラッシュが続いている。
こうした栄・広小路通の再開発を受けて、地価の上昇率にも変化が見られた。
名駅のタワーズ開業から23年、約四半世紀の時を経て再び栄エリアが勢力奪還の気配を見せる名古屋都心エリア。
ここ数年名駅を中心に投機を画策されてきた読者の皆さんも、今後さらなる伸びしろが期待できそうな「栄」の街の変化に目を向けてみてはいかがだろうか?
健美家編集部