集約・連携型の都市づくり実現に向けて
駅前に商業・住居・公益機能などを整備
富士市は静岡県東部に位置する人口約25万人の都市。北には富士山、南には駿河湾が広がり、気候は温暖、地下水に恵まれることから古くから紙のまちとしても栄えてきた。
都市部からのアクセスは至便で、新東名高速道路・東名高速道路を使うと東京方面から1時間30分、大阪方面から4時間50分、新幹線を使うと東京から1時間20分、大阪から2時間20分の距離だ。

富士市には東海道新幹線の新富士駅と、JR東海の東海道線・JR貨物が乗り入れる富士駅と、2つの駅がある。富士駅は市の代表的な駅で、駅にはジェイアール東海静岡開発が運営する施設「ASTY富士」が入居し、周辺には多数の製紙工場、市役所をはじめとする行政機関、富士本町商店街も点在している。
富士駅周辺地区は商業・業務の中心地、公共交通の交通結節点として市の発展をけん引してきたが、近年は郊外部への商業施設の進出、モータリゼーションの進展などにより来街者は減り、かつての賑わいは失われつつある。
これに伴い駅の利用者も減り、1日平均乗客数は1990年代半ばには1万5000人を超えていたのが、直近では8000人を割った。
一方、富士市は集約・連携型の都市づくりを目指すとし、駅周辺地区を重要な都市拠点として位置づけ。サービス・交流・都市環境・交通結節の各機能の向上を図ろうとしている。これを背景に、2013年から富士駅北口周辺地区の地元地権者と協働で、今後のまちづくりの在り方を検討してきた。概要は下図の通り。

出所:富士市ホームページ
そのうち、富士駅北口第一地区については、再開発手法により老朽化が進む建物を更新し、商業・居住・公益機能などを整備するため、2016年に地権者が市街地再開発準備組合を組織。事業化に向けた検討を進めてきたが、今夏に入り静岡鉄道を代表企業として、ミサワホーム、戸田建設、静鉄建設が参画する共同事業体と事業協力に関する協定を締結することに。
「繋がり」「賑わい」「安らぎ」をコンセプト据えた、防災力や環境性能、将来の可変性を備えた住宅と、駅前の利便性・回遊性向上につながる商業・公益施設の複合施設を整備するという。

出所:プレスリリース
住宅の総戸数は119戸を予定し、商業・公益施設のほかに駐車場なども備える。商店街と駅前公益施設をつなぐなど、回遊性にも配慮するようだ。別途計画されている駅前広場の整備事業とも連携し、富士駅北口の機能向上を図る。
不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、富士駅の標準的な物件の賃料は直近3年間で2.69%上昇している。静岡県の変動4.18%より低い水準だが、こうした再開発を通じて駅周辺の魅力が見直され、住まいやショッピングの需要は高まるかもしれない。工事は2024年に着工、完成は2028年の予定だ。
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健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))