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全国の地価下落ワースト10に大阪・ミナミの8地点!インバウンド回復に備え「逆張り」不動産投資戦略もあり

調査(不動産投資)/基準地価・公示地価・路線価 ニュース

2022/04/24 配信

全国ワースト1の地価下落率となった大阪市の旧づぼらや
全国ワースト1の地価下落率となった大阪市の旧づぼらや


コロナ禍で消えたインバウンド、道頓堀も閑散

有名ホテルは今やコロナ感染者療養ホテルに

大阪市の繁華街・ミナミの地価の回復が全国に比べて大きく遅れている。

国土交通省が3月に発表した2022年の公示地価では、全国の商業地の下落率上位10位のうち8地点が大阪ミナミだった。インバウンド(訪日外国人客)頼みで成長してきたが、新型コロナウイルス禍でそのインバウンドが蒸発し、ドラッグストア大手などが相次いで撤退しているのがその理由だ。

もっとも、安い物件が放置されている可能性があり、コロナ後のインバウンド回復を見据えて安い物件をいまのうちから仕込んでおくのも一つの戦略だ。

「新型コロナの感染拡大前は、このあたりも中国人や韓国人の観光客だらけだった。コロナが広がってからは、ほとんどいなくなったわね」

ミナミの中心地・道頓堀で営業する喫茶店関係者の女性はこう語る。

「近くの有名なホテルに泊まる外国人客も、ホテルの朝食の値段が高いからと、うちまでわざわざモーニングを食べにきていました」

しかし、2020年初めごろからのコロナの拡大でインバウンドが蒸発し、道頓堀近辺からも外国人客がパタリと姿を消してしまった。

今では、喫茶店の前の通りも閑散としている。くだんの近所の有名ホテルはいまやコロナの感染者療養ホテルと化し、通常の宿泊客をまったく受け付けていない。前を通りかかると、関係者以外立ち入り禁止の表示が掲げられ、出入り口は封鎖されていた。

最近はひところに比べてコロナも収まってきたためか、外国人客の姿もちらほら見かけるようになったという。

しかし、喫茶店の女性関係者は「外国人が戻ってくることで、コロナが再び広がるのではないか… そんな不安もあります」と、複雑な表情を見せた。

2022年地価公示の下落率ワースト1位は旧づぼらや
都市圏別でも東京圏、名古屋圏に比べ大阪圏は回復遅い

前述のように、国交省が3月に発表した22年の地価公示では、全国の商業地の下落率上位10位のうち、なんと8地点がミナミだった。前年の調査に続く「快挙」でもある。

また、都市圏別にみても、東京圏、名古屋圏の商業地がそれぞれ前年比で0・7%、1・7%の上昇に転じたのに対し、大阪圏は横ばいにとどまり、回復の遅さが際立った。

下落率10位に入った地点の全国での下落率順位、住所、地価の前年比での下落率は、具体的には以下の通りになる。

①大阪市中央区道頓堀1の6の10 旧づぼらや(ー15・5%)

②中央区日本橋1の21の6 千成屋(-14・7%)

③中央区宗右衛門町7の2 デカ戎橋ビル(-10・9%)

④中央区心斎橋筋2の8の5 サンドラッグ心斎橋中央店(-10・7%)

⑤中央区難波1の8の2 ドトールコーヒーショップ難波店ほか(-9・9%)

⑥中央区千日前2の4の13 COFFEE&EVENTS ワナカ(ー9・8%)

⑧浪速区日本橋4の7の20 永和信用金庫本店(ー8・8%)

⑨中央区西心斎橋2の1の2 心斎橋W-PLACE(-7・8%)

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ちなみに、下落率1位だった旧づぼらやは1920年の創業で、100年以上にわたって営業され、親しまれてきた老舗のふぐ料理店だ。店の前に吊るされた巨大なトラフグの看板が目印で、多くのインバウンドからも愛されてきた。

づぼらやの運営会社がミナミと、通天閣近くの新世界の2店舗の閉店をきめたのは20年6月。すでに4月から臨時休業していた。

閉店の理由は、コロナを含むさまざまな理由だったという。

ミナミの店舗のトラフグの看板は、今も撤去されずに残っている。づぼらやの入っていたビルには、まだ新たなテナントは入っていないもようだ。

2019年の来阪インバウンドは10年前の7倍もコロナで蒸発
コロナ後、賃料収入などなくなり地価下落 逆張りのチャンスも

コロナ前の大阪には多数のインバウンドがやって来て、地価上昇の要因となった。大阪観光局のデータによると、大阪府へ来たインバウンドの数は09年には170万人だったが、10年後の19年には1231万人と7倍以上に膨れ上がった。

これらのインバウンドによる買い物需要をあてこんで、ミナミの商店街には、高額の家賃を支払ってでも、大手ドラッグストアのチェーンなどが次々に進出した。

商業地の地価は「不動産市場での実際の売買価格」と「調査対象となる地点における、ビルの家賃収入といった収益力」から計算される。進出したドラッグストアなどが支払う高い家賃収入によってビルの収益力が高まるなどし、ミナミの地価は上がり続けた。

だが、コロナによってインバウンドがいなくなり、もうけられなくなったドラッグストアなどは高い家賃を嫌って次々に撤退。ビルの収益力が上がらなくなるなどしたミナミの地価は下落に転じた。

全国のほかの地域より下落率が大きく、なおかつ回復が遅れている事実は、ミナミのインバウンドへの「依存度」がそれだけ大きかったことを物語っている。

ちなみに関西でも、ミナミと違って国内客からの人気が高い京都は地価の落ち込みが小さい。大阪市内でも、梅田界隈の「キタ」は再開発が進んでオフィス需要が高い関係で、やはりミナミと比べると落ち込み方がましとなっている。

ミナミの地価回復のカギをにぎるのは、やはりインバウンドがどこまで回復するかだといえるだろう。これに関しては、ワクチンや治療薬の普及によって、コロナを今後どこまで抑え込め、国どうしの行き来がどこまで自由になるかにかかっている。

同時にミナミが、京都のように国内客を引き付けられる魅力をどこまで作り出せるかも重要になるだろう。

2025年には大阪・関西万博が大阪で開かれる予定だ。こちらも国内外の客をミナミに回遊させるチャンスとなるかもしれない。

今後は、コロナ後を見据えた不動産取引がミナミで盛んになるかもしれないという専門家の見方もある。価格の下がっているビルなどを今から仕込み、将来の賃料収入回復に備えるという「逆張り」の不動産投資戦略もありではないだろうか。

取材・文:小田切隆(おだぎりたかし)

■ 主な経歴

経済ジャーナリスト。
長年、政府機関や中央省庁、民間企業など、幅広い分野で取材に携わる。

■ 主な執筆・連載

  • ニュースサイト「マネー現代」(講談社)
  • 経済誌「月刊経理ウーマン」(研修出版)
  • 「近代セールス」(近代セールス社)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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