地価の回復傾向が全国的に広がっている。新型コロナウイルス感染拡大で大きな影響を受けた地域も反転上昇に向かっており、三大都市圏では大阪圏の商業地が3年ぶりに上昇に転じた。東京圏と名古屋圏の商業地は2年連続で上昇した。
国土交通省が3月22日に発表したもので、今年1月1日時点の調査。全用平均は住宅地・商業地のいずれも2連続で上昇し、全国の最高価格は東京都中央区「山野楽器銀座本店」の1u当たり5380万円(前年比1.5%上昇)だった。
外国人の入国制限が大幅に緩和され、人の移動制限もなくなったことで人流が活発になったことで消費を押し上げた。山野楽器銀座本店は、前年の地価公示では1.1%下落していたが、社会経済活動の正常化の動きを反映している。
大阪ミナミ回復途上も持ち直し示す
大阪圏で最も地価が高いエリアは、大阪市北区にある「グランフロント大阪 南館」で1u当たり2240万円であった。ビジネス街の梅田を中心に堅調なオフィス需要とホテルの稼働率が上がるなどで地価を押し上げている。コロナ前は、訪日客需要を取り込んで大阪ミナミが大阪圏で最高価格の時もあった。
その大阪ミナミを見ると、道頓堀エリアの地価が持ち直している。
大阪圏商業地価格2位の「大阪中央5-2」は1u当たり1880万円となり、前年の地価公示で10.9%の二桁落ち込みだったが、今年は横ばいだった。「大阪中央5-19」の商業地は同495万円で、こちらも前年の地価公示で15.5%の下落だったが、今年は1.0%の上昇率となっている。
心斎橋筋エリアの「大阪中央5-23」は大阪圏商業地4位の1330万円/uとなり、前年地価公示の10.7%下落から今年は0.0%と横ばい。コロナ前に訪日需要の依存度が大きかっただけに地価回復は道半ばではあるが、総体的に落ち直しの傾向が見られる。
地価の上昇は全国的な広がりを見せている。地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)では、コロナ禍でも上昇基調が続き、今回での地価公示でも住宅地・商業地ともに10年連続で上昇している。その他の地方圏でも全国全用途平均と商業地が3年ぶりに上昇し、住宅地では28年ぶりの上昇となっている。
台東区浅草寺は東京都の上昇率1位
大阪圏と同様に今回の地価の特徴としては、全国的に観光需要の回復期待が大きいことが挙げられる。東京の商業地を見ると、東京都の上昇率1位は台東区浅草地区となり、8.8%上昇している。浅草寺を中心に国内外からの観光客が回復傾向であることが店舗の収益性を改善させており、1u当たり174万円だった。
東京都の商業地は23区全体で3.6%上昇(前年0.7%上昇)となり、全ての区で上昇となった。このうち20区が上昇率を拡大し、千代田区、中央区、港区の3区が下落から上昇になった。
再開発事業による利便性の向上が見込まれる地点を中心に上昇傾向が見られ、中野区5.2%(前年2.3%上昇)や北区5.2%(同1.7%上昇)、荒川区5.2%(同2.0%上昇)が5%超の上昇率を見せている。
東京都は住宅地も全23区が上昇率を拡大し、23区全体で3.4%上昇している。上昇率が大きい区は、台東区4.8%、豊島区4.7%、中野区4.6%となっている。特に都心周辺の利便性の高い地域でマンションや戸建て住宅の需要が強い。
全国上昇率トップ10は北海道が独占
地方圏に目を移せば、コロナ禍に悩まされ続けた中で、石川県金沢市や静岡県熱海市、京都・祇園地区、島根県出雲市、愛媛・道後温泉地区といった観光地の地価が上昇トレンドを強めている。地方圏にも回復傾向が広がりを見せている。
全国上昇率トップ10は住宅地・商業地とも北海道の地点が占めた。住宅地1位は、北広島市共栄町1丁目の地点で30.0%(前年26.0%上昇)の上昇率となり、商業地1位は「北海道銀行北広島支店」で28.4%(同19.6%上昇)上昇率だった。
この北海道の独占状態は、今年からプロ野球の日本ハムファイターズが本拠地とする「北海道ボールパークFビレッジ」の開発が大きな要因である。
北広島駅西口再開発事業などで利便性と繁華性が高まると見込まれているほか、地価が既に高止まりしていた札幌市内での住宅探しからまだ割安感のある北広島市へと住宅需要が移っている。
ただし、北海道の地価は二極化が鮮明になっている。全国下落率地でワースト10に北海道の地点で商業地が8地点、住宅地で5地点がそれぞれランクインしている。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))