ニッセイ基礎研究所の2021年12月のレポートがレンタルオフィス、シェアオフィス、コワーキングスペースといったサードプレイスオフィスの市場を分析している。
コロナ禍で在宅ワークを求められるようになったものの、自宅で仕事をするには場所がないその他の理由から自宅近辺で仕事ができる場所を求める人が増えているが、需要を満たせていないエリアが多数あるというのがレポートの要旨。このニーズを利用する手があるのではなかろうか。
異業種からの参入相次ぐ、サードプレイスオフィス事業
レポートでは東京電力、青山商事、サイバーエージェントなど不動産業以外からの他業種からのサードプレイスオフィス事業への新規参入が相次いでいることを挙げ、実際のサードオフィスに使われているビルの状況を分析する。
それによると都心五区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区)では超大型ビル内にあるオフィスも15%とかなりの数あるものの、全体で見ると小型ビル(延床面積1000u未満)が33%、中型ビル(延床面積1,000u以上5,000u未満)が32%となっており、中小型ビルが全体の約3分の2を占めているという。
入居するビルの築年数では「30年以上40年未満」が28%と最も多く、5年未満の割合は15%にとどまっている。つまり、築古の中小ビルを利用して作られていることが多いというのである。
25坪未満、築30年以上のビルにもチャンス

実際の拠点面積を見ると東京五区では比較的広いオフィスが多いが、全体では50坪未満の小規模なものが7割弱。さらに細かく見てみると25坪未満が全体で41%、郊外(都心五区以外の特別区18区、都下、神奈川県、埼玉県、千葉県)では51%を占めており、古く、小規模なビルを利用したオフィスが多く作られていることが分かる。大資本でなくても参入は可能といえるわけである。
レポートでは開設エリアについても分析をしている。それによると首都圏郊外に立地する主なサードプレイスオフィスの周辺人口(半径1キロ圏内)の平均値は
@人口 4万6376人
A生産年齢人口 3万1446人
B雇用者 1万7167人
C世帯数 2万5035世帯
だという。
一概に比較することはできないとしつつ、レポートでは他の複数業種の商圏人口を例として挙げている。食品を中心にするスーパーマーケットで3万〜3万5000人、ドラックストアで1万〜1万5000人、小型コンビニで4000〜5000人。サードプレイスオフィス開設にはスーパー以上の人口は必要というわけである。
ニーズはあるのにオフィスがない駅も多数
では、それだけの要件を満たす駅でどの程度、実際にサードプレイスオフィスがある場所があるか。意外にまだない駅があるのが現状だ。

「首都圏「郊外」の全1,424駅について、「周辺人口」(半径1キロ圏内)が、サードプレイスオフィスの「周辺人口」(平均値)を上回った 駅は、約3割の398駅(東 京都271駅・神奈川県68駅・千葉県37駅・埼玉県22駅)、このうち、駅1キロ圏内に拠点が未開設の駅は、156駅(東京都100駅・神奈川県27駅・千葉県21駅・埼玉県8駅)であった」というのだ。つまり、潜在的にニーズはあると予測されるにも関わらず、まだ作られていない駅が多数あるということである。
具体的な地域としては東京都では城南および城北、多摩地区、神奈川県では横浜市および川崎市、千葉県では湾岸部等が潜在ニーズが確認できるものの未開設という。異業種からの参入も相次いでいるが、まだまだ足りていないというわけである。
ちなみに月額利用料金(最安料金)は1万円以上2万円未満が43%と最も多い。月極契約のほか、53%のオフィスではドロップインと呼ばれる1日または時間単位で利用料を支払って一時利用する方式を取り入れている。移動の合間などの短時間利用も多いことを考えると、両方式が選べるほうが利用されやすくなると考えられているのだろう。
また、最近ではコロナ禍を反映、個室の利用ニーズが高まっているそうで、80%のオフィスが個室を用意しているとも。こうしたニーズや不足状況を考えると、地域によっては住宅よりこうしたオフィス経営に利がある可能性もあるのではなかろうか。