2020年と比較すると
2021年は運用成績が大幅に改善
金融庁は、2021年11月10日に「投資信託の共通KPIに関する分析について」というレポートを発表した。
このレポートでは、各金融機関が運用している投資信託について、運用損益がプラスまたはマイナスになった顧客の比率が公開されている。
レポートによると、2020年3月末と2021年3月末とで比較した時に、運用損益がプラスになった顧客は大幅に増えた様子が伺える。
※引用:金融庁
グラフの赤い部分は運用損益率が0%未満の顧客割合で、緑の部分は運用損益率が0%以上となった顧客割合を示している。
なお、運用損益率が0%以上となった顧客割合について、全業態の平均値は83%だった。
金融機関の種別に損益率0%以上の顧客割合を見ると、証券会社に分類される金融機関では、顧客割合が比較的少ない点が特徴的だ。
反対に、投資運用業者に分類される金融機関では99%の顧客が運用損益率0%以上となっており、運用成績の良さが目立つ。
金融庁の別資料を見ると、投資運用業者に分類されているのは、大手銀行またはデベロッパー系列の不動産投資顧問や、外資系のアセットマネジメント会社などだ。
投資運用業者はコロナが拡大していた2020年の時点でも運用成績が良かったことから、比較的安定した運用ができていると推測される。
主要行等の
運用損益別顧客比率
メガバンクを含む主要行等の損益別顧客割合は以下グラフの通りだ。
※引用:金融庁
大手銀行系金融機関で損益0%以上の顧客割合が最も多かったのはみずほ信託銀行だった。
その一方で、同カテゴリの中では4行が全業態の平均となる83%を下回り、オリックス銀行は70%となっている。
メガバンク系列の信託銀行という点で見ても、みずほと三井住友・三菱UFJとでは約10%の差がついた結果となった。
地域銀行の
運用損益別顧客比率
つづいて、地域銀行の損益別顧客割合は以下グラフのようになっている。
地域銀行では回答があったうち半数弱の金融機関が全業態平均の83%を下回っている。
※引用:金融庁
地域銀行で損益0%以上の顧客割合が最も多かったのは島根銀行だった。
以下もみじ銀行・北九州銀行・山口銀行・静岡銀行と続いている。なお、もみじ銀行は広島を営業エリアとする第2地方銀行だ。
偶然の結果とは思われるが、中国・九州地方の銀行が上位を占めている点が特徴的と言える。
なお、地銀最大手の一角を占める横浜銀行は77%と地域銀行の中では順位が比較的低めだ。
そのほか、東京都内を営業エリアとする東京スター銀行も83%と全業態平均のボーダーに位置している。
金融機関としての規模が大きかったり首都圏で営業していたりなどのポイントがあったとしても、必ずしも投資信託の運用実績が良いとは限らないと言えるだろう。
投資信託を始めるのであれば、可能な限り運用実績を比較してから金融機関を選ぶのが重要だ。
信用金庫など協同組織金融機関の
運用損益別顧客比率
信用金庫などの損益別顧客割合は以下グラフのようになっている。
※引用:金融庁
信用金庫などに関しては地域銀行と比較すると調査対象が少ないため、一概には判断できないが、全体的に損益0%以上の顧客割合が高い点が特徴的だ。
特に千葉県の銚子商工信用組合は99%とほぼ100%の割合になっている。
2番手以降を見ても、東春信用金庫は98%・静岡県労働金庫は95%など全体的に好成績だ。なお、東春信用金庫は愛知県を営業エリアとしている。
信用金庫は不動産投資の融資元として活用されることも多いので、物件運用で利益が上がった場合は、投資信託による2次運用も有効と言えるだろう。
証券会社の
運用損益別顧客比率
証券会社の損益別顧客割合は以下グラフのようになっている。
※引用:金融庁
証券会社の中で損益率0%以上の割合が多かったのは、楽天証券・SBI証券・丸三証券・野村証券など大手証券会社だった。
地銀のカテゴリで比較すると、運用実績が良かった地方の地銀も多かった一方で、証券会社で比較すると大手証券会社の方が運用実績が良かったことがわかる。
また、証券会社のカテゴリでは、全業態平均の83%を下回る会社が多い点が特徴的だ。
証券会社では投資信託の運用を預かる顧客が多いと予測されるため、顧客数の多さが運用実績に影響しているとも考えられる。
証券会社で口座を開いて投資信託を始めるのであれば、大手証券会社を選ぶ方が比較的安全と言えるだろう。
取材・文:
(はたそうへい)