多くの企業がコロナ後も
テレワークを拡大・維持する見通し
国土交通省は2019年12月から「企業等の東京一極集中に関する懇談会」という会議を開いている。
2020年12月に開催された懇談会では、企業向けに実施されたテレワークに関するアンケートの結果が公表された。
今後のテレワークの実施について、コロナ収束後も継続するかという質問に対し、約70%の企業が「テレワークを拡大・維持する」と回答している。

※引用:国土交通省
なお、テレワークの導入に伴い、本社を移転・縮小するかという質問に対しては、検討すると回答した企業は回答数の26%にとどまっており、まだ少数派だ。
移転を検討する企業も
その多くが首都圏に止まる見通し
また、東京に本社を置いている企業に対して行われた、移転先を尋ねる質問については、大多数の企業が東京圏内への移転を検討していると答えている。

※引用:国土交通省
人材大手のパソナは、2020年9月以降、本社機能を東京から淡路島へ移転すると発表した。
パソナが発表した、1,200人の従業員が2024年5月までの間に淡路島へ移るという計画は、世間の注目を大きく集めた。
しかし、パソナ同様に東京から地方へ移ることを検討している企業はとても少ないと言える。
東京圏在住者の6割は
引越しに消極的
東京圏在住のフルタイム労働者に対する、業務がほぼ完全にテレワークとなった場合、引越しを検討したいかという設問に対しては、約6割の回答者が引越しに消極的な姿勢を示している。

※引用:国土交通省
東京圏出身者は特に、引越しに消極的な様子がうかがえる。
また、東京圏出身者で引越しを検討したいと答えた人に対する、引越し先について尋ねる設問には、50%〜60%の人が1都3県への引越しを検討したいと回答した。
※引用:国土交通省
今後テレワークが継続するとしても、特に東京からの人の動きは1都3県の中に限定されそうな様子が伺える。
2020年の通年で見れば
東京の人口は増えている
2020年5月に、東京の人口は約7年ぶりに転出超過を記録したとするニュースが大きく報道された。
また、7月以降は転出増加が続いているとも報道されたため、東京では人口が大きく減っている印象を持つ人もいるかもしれない。
しかし、2020年の通年で見れば、東京都の人口は約31,000人増えている。
ちなみに、東京都の中でも、東京特別区部の人口増加数は約13,000人だ。
※参照:総務省 統計局
東京特別区部の人口増加数は、前年比で約51,000人減っており、人口増加の勢いが鈍っていることは間違いない。
しかし、まだ人口が増えていることに変わりはなく、東京一極集中の流れが完全に変わったとは言い難い。
大阪市や横浜市では
人口が大きく増加した
総務省が発表した「人口移動報告」によると、2020年に最も人口が増えたのは、大阪府大阪市だ。
大阪市における2020年人口増加数は16,802人で、2019年の増加数を3,040人上回っている。
東京特別区部が人口増加の勢いを大きく落とした一方で、大阪市では増加の勢いが増したことになる。
そのほか、2020年に人口増加の勢いを強めたのは、神奈川県横浜市・千葉県八千代市・宮城県仙台市などだ。
これらの都市は、人口増加数を2019年よりも1,000人以上伸ばしている。
なお、2020年の人口増加数ランキングトップ20までのうち、12を神奈川県・千葉県・埼玉県の市が占めている。
この結果は「東京圏からの人口移動は1都3県の中に限定される」流れを裏付けていると言えるだろう。
取材・文:秦 創平