不動産投資では、思わぬ臨時収入が発生することがある。確定申告の時期が迫ってきたが、臨時収入があった不動産投資家は、その取扱いに注意したい。
たとえば、損害保険の保険金は、事故による支払保険金と満期返戻金では、所得税の取り扱いが大きく異なる。
敷金や保証金では、無利息で預かっていることの利益が収入とみなされて課税される場合もある。
借地権に関連する収入では、譲渡所得課税となる場合や平均課税が適用できる場合に注意したい。
損害保険の事故による支払保険金と満期返戻金
不動産投資では、投資用の収益不動産に、損害保険を掛けることが一般的だ。近年は、台風による風災や水災も増えている。不幸にも、収益不動産にこのような事故があり、損害保険金の支払いを受けた場合、その保険金は確定申告でどのように扱えばよいだろうか。

所得税法の取扱いでは、突発的な資産の損害補償金、相当の見舞金は非課税となる。収益不動産が減価償却しており、帳簿上の建物価格よりも多額の保険金が支払われ、保険差益が生じた場合、その保険差益も非課税となる。
また、積立型保険の場合、満期になると満期返戻金が支払われることがある。満期返戻金は、所得税法上の一時所得となって、所得税が課されることになる。満期返戻金にかかる一時所得は、支払った保険料又は掛金の総額を控除し、さらに、50万円を上限とする特別控除額を控除した後、2分の1をして算出する。
一時所得の額=(満期返戻金―支払った保険料又は掛金の総額―特別控除額)×1/2
敷金や保証金は返還不要なら不動産所得
無利息分の利益が所得になることも

敷金や保証金は、一時的に預かり、返還を要するものであるから、原則として収入にはならない。しかし、一定の場合には、不動産所得に計上しなければならないので注意が必要だ。
まず、返還を要しないことが確定したときである。たとえば、退去時の敷金の精算がこれに該当する。退去時にクリーニング代など一定の金額を差し引いて入居者に敷金を返還する。
この際、敷金から充当した部分は、その金額を雑収入などとして不動産所得に計上する必要がある。解約時に敷金のうち一定額を償却するという賃貸借契約の場合は、契約を締結した時点で不動産所得に計上しなければならない。
敷金や保証金は、無利息で預かるのが普通であろう。しかし、税法上は、その無利息分について経済的利益が発生しているとみなされる点に注意が必要である。
ただし、国税不服審判所の裁決では、無利息部分の経済的利益は賃貸料の一部と相殺していると解釈しており、通常、課税関係は生じない。
ところが、この敷金や保証金を自宅の購入など、家事用に消費している場合は、適正な利率を乗じて計算した利息相当分を不動産所得に計上する必要がある。
相場と比較して、多額の敷金や保証金を預かった場合には、その資金管理に注意したい。
借地権の権利金、更新料、譲渡承諾料は?
平均課税を適用すれば節税に
借地権に関連する収入があった場合、どのように取り扱えばよいだろうか。
借地権を設定した場合、権利金を受け取ることがある。これは原則不動産所得となるが、権利金の額が、土地の時価の2分の1を超えている場合、譲渡所得として分離課税になるので注意が必要である。
借地権の更新料、譲渡承諾料も同様に、原則不動産所得となる。ただし、借地権の更新料として新規貸付けと同程度の金額を受け取り、その金額が土地の時価の2分の1を超えている場合は、事実上の追加設定とみなされる。この場合も譲渡所得課税となる。

なお、権利金、更新料、譲渡承諾料があった場合、平均課税という優遇税制の適用を受けられる可能性がある。平均課税とは、所得の浮き沈みが激しかったりする場合に、その部分について軽減税率を適用することができる制度である。
平均課税の適用を受けるには、臨時所得および変動所得に当てはまる所得が総所得の20%以上あることなどが条件となる。
不動産の使用料関連収入の臨時所得の条件は、「3年以上の期間使用させることにより受け取るもので、その金額が使用料の2年分以上であること」となっている。つまり、通常の家賃の権利金や更新料は対象とならないことが多いだろう。
不動産関連以外でも、ライターの原稿料や印税収入、漁業収入などが変動所得となる。これらの収入が多い不動産投資家の場合、適用を受けることを検討してみるとよいだろう。
取材・文 佐藤永一郎