地方自治体に寄付という形で納税することで、返礼品をもらうことができるふるさと納税は、すっかり定着した感がある。高級食材に家電、旅行券など、高額な返礼品を用意している自治体も多く、納税者からすると、つい返礼品に目がいきがちである。
しかし、ふるさと納税は、所得税と住民税の寄附金控除を利用して税金の調整をする仕組みになっている。高額なふるさと納税をしてしまうと、控除しきれずに本来納めるべき税金よりも多額の税金を納めてしまうことになりかねない。特に、不動産所得がある不動産投資家は、控除上限額の計算が分かりにくいため注意が必要だ。

不動産所得がある場合、ふるさと納税の控除上限額に注意
ふるさと納税では、2,000円の自己負担は避けることができない。しかし、それ以外の部分は、上限額を超えなければ、本来納めるべき所得税と住民税が寄附金控除という枠組みによって減額される仕組みになっている。
ふるさと納税のポータルサイトなどでは、この寄附金控除が最大限に適用される控除上限額について、年収や家族構成、居住地域の社会保険料などの条件から、早見表を設けたり、シミュレーターを用意したりしている。
しかし、このような早見表やシミュレーターは、給与所得のみのサラリーマンを対象としていることが多く、不動産所得がある場合は、その不動産所得の金額を考慮して上限額を計算する必要があるので注意が必要だ。
ふるさと納税の控除の仕組み
ふるさと納税の税金控除の仕組みはどのようになっているのだろうか。

ふるさと納税の寄付額は、第一段階として、その年の所得税の計算において寄附金控除として控除される。第二段階として、住民税から寄附金税額控除として控除される。
- 所得税の寄附金控除
(ふるさと納税の寄付額−2,000円)×所得税率×1.021
所得税の寄附金控除は、所得控除といって、税金計算の基となる所得から寄付金額が控除される仕組みだ。そのため、2,000円の自己負担額を除き、ふるさと納税の寄付額に所得税率を掛けた金額が、本来の所得税から引かれる。
- 住民税の寄附金税額控除
基本分:(ふるさと納税の寄付額−2,000円)×10%
特例分:(ふるさと納税の寄付額−2,000円)×(90%−所得税率×1.021)
住民税の寄附金控除は税額控除であり、本来納めるべき住民税の額から直接控除される。控除枠は、基本分と特例分に分かれ、基本分は寄付額の10%となっており、ふるさと納税以外の寄附金にも適用がある。特例分がふるさと納税の寄付の特別枠で、基本分と所得税で引かれた分の残りを控除する仕組みになっている。所得税で引かれた分を計算するため、控除額は所得税率によって変わる。住民税の特例分の控除額は、住民税の税額(所得割)の20%が上限となっている。
具体的な控除上限額の目安
このようなふるさと納税の税金控除の仕組みから、寄附金控除を最大限適用するには、住民税の寄附金税額控除の特例分が、住民税の税額(所得割)の20%に収まる必要があることが分かる。
すなわち、ふるさと納税の控除上限額は、所得税の課税所得金額に応じて、次の表のように整理することができる。
課税所得金額(所得税) | 控除上限額 |
〜195万円 | 住民税所得割×23.559%+2,000円 |
195万円超〜330万円 | 住民税所得割×25.066%+2,000円 |
330万円超〜695万円 | 住民税所得割×28.744%+2,000円 |
695万円超〜900万円 | 住民税所得割×30.068%+2,000円 |
900万円超〜1,800万円 | 住民税所得割×35.520%+2,000円 |
1,800万円超〜4,000万円 | 住民税所得割×40.683%+2,000円 |
4,000万円超 | 住民税所得割×45.398%+2,000円 |
課税所得金額は、所得税の確定申告書に記載する金額で、給与所得や不動産所得の合計額から各種所得控除を差し引いた金額になる。
住民税の所得割は課税所得の10%だが、住民税の場合は、基礎控除や配偶者控除、扶養控除などの人的控除の金額が所得税とは微妙に異なる。自分で計算する際は、所得税の確定申告書ではなく、居住地域の住民税の申告書を取り寄せるなどして確認するとよいだろう。以下、簡単な設例で計算例を掲載する。所得の合計額が前年と変わらないのであれば、前年の住民税課税決定通知書に所得割が記載されているのでそれを利用して上記の表に当てはめて計算してみてもよいだろう。
【設例・給与所得者で不動産所得がある場合】
所得 | 給与所得520万(給与収入700万)、不動産所得400万 |
控除 | 配偶者あり(所得0)、子どもなし、社会保険料100万 |
この場合、ふるさと納税の寄付上限額の目安は次のように計算できる。所得税の課税所得金額は、520万+400万−48万−38万−100万=734万となり、住民税所得割に乗ずる割合は、695万円超900万円以下のものが適用される。
住民税所得割=(520万+400万−43万−33万−100万)×10%=744,000円
控除上限額=744,000円×30.068%+2,000円=約225,700円
取材・文 佐藤永一郎