確定申告も大詰めの時期になり、納税額の目途はついているという方も多いだろう。
しかし、思いのほか納税額が大きくなってしまい、納税資金の資金繰りに困っている方もいらっしゃるのではないだろうか。
また、逆に、納税資金には問題がないが、申告期限までに申告に必要な資料が揃わないなどの理由で確定申告が間に合わないという方もいらっしゃるのではないだろうか。
今回は、確定申告制度を活用しておこなうことのできる納税資金対策や、確定申告・納付期限の延長制度と、確定申告が期限に間に合わない場合の対策についてまとめた。
■ 振替納税・クレジット納税、災害等による申告・納期限の延長
実は、税金の納付を口座振替にするだけで納付期限を遅らせることができる。
納付期限を遅らせる手続きとして、近年は、クレジットカード納付もできるようになっている。クレジット納税は手数料が徴収されるが、口座振替の場合、手数料はかからない。
令和4年分の振替納税の引落日は、所得税が4月24日、消費税が4月27日となっている。約1カ月、無料で納付期限を延長することができることになる。
なお、e-Taxの場合に利用できる口座振替手続きにダイレクト納付と呼ばれる制度があるが、この制度は、納税者が指定した日に納税をする制度であり、振替納税制度とは異なる。
これらの手続きは、1カ月以内に納税資金が入って来る見込みがあるときに有効である。重要なのは、税務手続上、納期限を過ぎた納付とみなされないことだ。利子税や延滞税などのペナルティはいっさい発生しない。

「災害等による申告・納付等の期限延長申請」も、納期限を延長する制度であり、災害その他やむを得ない理由による場合に申告・納付等の期限延長の指定を受けることができる制度だ。コロナウィルス感染症を理由として納期限を延長する場合などがこれに該当する。
なお、昨年までは申告書に記載するのみでよかったコロナ簡易申請は、令和4年分からはなくなり、原則に戻って申請書を提出する必要がある。
■ 延納と納税猶予制度
本来、正規の納期限が過ぎてしまった場合は、なんらかのペナルティがつく。たとえば、延滞税は原則、年8.7%で元々の税金に付加されてかかってくる。
所得税の延納制度を利用すれば、納税額の半額以下の納期限を延長することができ、ペナルティは年0.9%の利子税のみとなる。延長した税額部分の納期限は、5月31日となり、振替納税からプラス1カ月だけ延びる。

納税の猶予には、換価の猶予と納税の猶予という制度があるが、いずれも、一定の理由に該当する場合に、納税者の申請によって1年間、換価(財産の差押えと売却)や納税が猶予される。ペナルティは、年0.9%の延滞税のみとなる。
換価の猶予であっても、納税の猶予であっても、結局は滞納した場合の財産の差押えが猶予されるので、効果は同じだ。換価の猶予は、「事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある」ことが条件となっており、個別事情に応じて猶予を認める納税の猶予制度と比べると活用シーンが限定されているといえる。
これらの制度は、申請書類に猶予申請をする理由を記載するほか、納付計画を記載し、財産収支状況書などを添付することが条件となる。審査の結果、猶予が認められないこともある。
■ 確定申告が期限に間に合わない場合の対策と確定申告の重要性
確定申告が申告期限までに間に合わない場合、間に合わないから申告期限を過ぎて申告をすると、大きなペナルティが課される。
前述した延滞税のほか、15%〜20%の無申告加算税を課せられる可能性があり、青色申告特別控除は65万または55万から10万に減額されてしまう。2年連続して期限後申告となった場合、青色申告が取り消されることもある。
このようなペナルティを回避するため、揃った資料のみでとりあえず確定申告し、後から修正申告や更正の請求によって正確な申告をおこなうという選択も実務ではしばしば見られる。
ただし、その場合にも、1回目の申告で選択することが条件となっている措置(いわゆる当初申告要件)は、漏らさずに申告をする必要があるので注意したい。当初申告が要件となる措置としては、住宅ローン控除やマイホームの譲渡にかかる3,000万円控除などが挙げられる。
次回、(4月8日)の「不動産投資の税務基礎シリーズ」は、不動産賃貸業の法人成りと節税対策について取り上げる予定である。