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不動産賃貸業の法人成りと節税効果、税務リスク【不動産投資の税務基礎シリーズ12】

不動産の税金/税務基礎 ニュース

2023/04/09 配信

法人化

新年度を迎えて、今まで個人で確定申告をしていた不動産賃貸業を法人化したいと考えている方もいらっしゃるかもしれない。

しかし、既存の不動産賃貸業を法人化(いわゆる法人成り)するのには手間もかかるし、税務リスクもある。法人成りはどの程度の節税効果があるのかを見極めて、リスクも承知したうえで慎重に対処したい。

今回は、不動産賃貸業の法人成りと節税効果というテーマで、法人成りの節税メリット、形態、税務リスクについてまとめた。

■ 法人成りのメリットは、税率差、累進税率の緩和、所得分散、給与所得控除の適用の4つ

法人成りの節税メリット
法人成りの節税メリット

まず、個人の不動産賃貸業を法人化すると、なぜ節税メリットがあるのかについて考えていこう。

節税メリットの要因は、主に4つ挙げられる。個人と会社の税率差、個人と会社との所得分散による累進税率の緩和、役員報酬の支給による所得分散、役員報酬の支給による給与所得控除の適用である。

第1に挙げられる個人と会社の税率差はよく言われているところだ。個人の所得税・住民税の税率(実際には個人事業税が課せられることもある)が、15.105%~55.945%まで所得段階に応じて上昇するのに対し、法人の法人税・法人住民税・法人事業税の税率は、22.4%~36.8%まで所得段階に応じて上昇する。一定以上の所得であれば、同じ所得であっても法人に移した方が税率は低くなる。

第2は、個人と会社との所得分散による累進税率の緩和効果である。見落としがちであるが、法人に所得をすべて移してしまったら生活費として利用する資金がなくなってしまう。

そこで、個人にも多少所得を残しておく必要があるが、個人の最低税率(15.105%)は、法人の最低税率(22.4%)よりも低いから、仮に、最低税率までの所得は個人に残し、それを超えた部分のみを法人に移すことで、すべてを法人に移すよりも節税になる。

第3のメリットは、法人から役員報酬を支給することで、複数人の所得に分散できることだ。1人に集中していた所得が複数人の所得になれば、累進税率が緩和される可能性が高く、その分は明確に節税になる。

第4のメリットは、給与所得控除が利用できることである。給与所得者には、給与所得につき概算控除が認められている。これにより55万円以下の給与所得はゼロになり、所得が上がるにつれて給与所得控除額の割合は減るものの、850万円までの給与所得者なら、約23%以上が概算控除となる。給与所得控除は、実際の支出をいっさい伴わない控除であるから、節税メリットは大きいといえる。

■ 法人成りの形態は大きく分けて3種類

法人成りの形態
法人成りの形態

個人の不動産賃貸業が法人化する形態は、主に3種類ある。管理型法人、サブリース型法人、所有型法人の3つである。

管理型法人は、管理業務のみを法人化する形態だ。賃貸用不動産は個人が所有し、法人には管理のみ委託して、オーナーである個人からは管理料を支払う。管理料の支払いは、不動産賃貸業の必要経費となるため、その分の所得が法人に移転する。

サブリース型法人は、法人が賃貸用不動産を一括借り上げし、個人に保証家賃を支払う形態だ。入居者側には貸主は法人となるだけでなく、法人がオーナーに支払う借り上げ料は、管理料と空室保証料が差し引かれることになる。つまり、サブリース型では、管理料に空室保証料を上乗せした所得が、法人に移転する。

最後の所有型は、形態としては最もシンプルだ。賃貸用不動産を法人が所有し、個人には役員報酬という給与所得を支払う。もしくは、賃貸用建物のみを法人が所有し、個人には地代を支払う。前者の場合は家賃収入のほぼすべてが、後者の場合には、家賃収入と地代との差額分の所得が法人に移転されるため、節税効果は大きい。

■ 法人成りの税務リスクと同族会社の行為計算否認

過大な不動産管理料の否認例
過大な不動産管理料の否認例

節税目的で法人化する場合、税務リスクに注意が必要となる。特に、管理型とサブリース型では、賃貸用不動産のオーナーと法人のオーナーが同一であることから、同族会社の行為計算否認規定によって否認されることがある。

同族会社の行為計算否認規定とは、同族会社の行為計算が不当に税負担を減少させる結果となる場合に、これを否認する規定である。

管理型の場合、管理業務が実態としてあるのかどうかが問題となる。賃貸用不動産の日常の管理業務を記録として残し、管理料は、その管理業務の対価として適正な金額の範囲である必要がある。

サブリース型でも、管理業務の実態に加えサブリースの実態が税務上問題となりうる。入居者との契約や賃料の入金を法人口座に入金するようにするほか、修繕費用や管理費用をオーナーあるいは法人どちらの負担とするのか、サブリース契約に明記しておく必要がある。サブリース型の適正管理料は、15%程度までと言われる。

いずれの場合でも、税務当局に不相当に高額な管理料であると判断された場合、否認されるリスクがあるといえる。自己所有型法人の場合、このような否認リスクはほぼない。

ただし、個人で所有している不動産を法人に移転させる際には、譲渡所得税が課税される。簿価で売却したとしても、税務上は時価で売却したものとみなされ、いわゆるみなし課税が発生するので注意が必要だ。

このように、不動産賃貸業を法人化する場合、法人形態に応じて様々な税務リスクがあるので注意したい。

取材・文:佐藤永一郎(さとうえいいちろう)

佐藤永一郎

FP不動産投資よろず相談所

■ 主な経歴

筑波大学大学院修了。新潟大学大学院博士後期課程在籍。2級FP技能士。会計事務所で約10年、中小企業、不動産オーナーの節税コンサルティングや融資サポートなどに携わる。スタートアップのCFO、監査役などを経て、築古戸建ての不動産投資家として独立。不動産投資のコンサルオフィス「FP不動産投資よろず相談所(https://fprealestateoffice.jp/)」を運営している。不動産投資や税金をテーマとした執筆活動もおこなう。大学院にて所得税制を研究中。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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