平成29年ももうすぐ終わろうとしている。
今年1年間で不動産を売却した個人投資家も多いだろう。売却益が出ていれば、譲渡所得税を支払う必要がある。住民税を合わせた税率は、所有期間が5年以下(短期譲渡)で39%、5年を超えるもの(長期譲渡)で20%とかなりの高率である(この他、復興特別所得税が、税額の更に2.1%かかる)。
ところで、一定の要件を満たせば、この税額が大幅に軽減される。それが
「平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除」
である(以下「1000万円特別控除」という)。
これは、土地等(国内にある土地又は土地の上に存する権利)に係る(長期)譲渡所得の金額から、1000万円を控除することができるというもの(譲渡所得の金額が1000万円に満たない場合にはその譲渡所得の金額が控除額)。
つまり長期譲渡で200万円超(復興特別所得税を含む)の節税になるという制度である(措法35の2、措令23の2、措規18の3)。
この「1000万円特別控除」を受けるための要件は、次のとおりである。
1 平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地等を取得すること。
2 平成21年に取得した土地等は平成27年以降に譲渡すること、また、平成22年に取得した土地等は平成28年以降に譲渡すること。
3 親子や夫婦など特別な間柄にある者から取得した土地等ではないこと。
特別な間柄には、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれる。
4 相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済及び所有権移転外リース取引により取得した土地等ではないこと。
5 譲渡した土地等について、収用等の場合の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の課税の繰延べなど他の譲渡所得の特例を受けないこと。
つまり、不動産投資家が通常の売買で平成21年1月1日から平成22年12月31日の間に購入した物件を、今年(平成29年中に)売却したのであれば適用可能ということである。まずは、今年売却した物件の取得年月日を確認したい。
それから注意しないといけないのは、「1000万円特別控除」を受けられるのは「土地等」であるということ。つまり建物の売却益には適用できない。ただし、通常、不動産は土地建物を一括で購入する。このため、売却金額に占める土地部分の金額を算定し、購入時の土地金額(=簿価)を差し引きして、土地の売却益を計算する必要がある。
もう一つ、不動産の売却全般での注意点だが、会計上の固定資産売却益は
売却金額 −(取得価格−減価償却累計額)
※譲渡費用は除く
で計算する。つまり、例えば5000万円で買った物件を5000万円で売却しても、建物の減価償却費の分の譲渡所得が発生する。売却益はゼロと勘違いして、申告を忘れることの無いようにしたい。
「1000万円特別控除」の手続きは簡単で、確定申告書に
・譲渡所得の内訳書
・土地等の登記事項証明書や土地等を取得したときの売買契約書の写しなどで、譲渡した土地等が平成21年又は平成22年に取得されたものであることを明らかにする書類
を添付すればよい。是非とも、この制度は利用したい。
ちなみに、「1000万円特別控除」は、リーマンショック後の景気及び不動産取引の低迷を受け、平成21年度の税制改正で創設された制度である。当時は、土地の価格が上昇するなど全く考えていなかった投資家がほとんどだと思うが、首都圏など都市部の物件を取得していた人にとっては有難い制度である。
最後に、余談ではあるが、この制度は「租税特別措置法」に基づくものである。つまり、常に「今年で最後」となる可能性はあるということだ。物件の売却を検討する際は、このあたりも頭の片隅には入れておきたい。
健美家編集部