民泊、軒先利用その他空き空間の利用には様々なビジネスが生まれているが、他にないメリットのある新ビジネスが登場した。それが空き空間を物置として利用する「monooQ(モノオク)」である。
■立地が悪くても運用可能
空き室や空いている押入れを物置として貸す「monooQ(モノオク)」。8月から始めたβ運用では約1カ月で200カ所のホスト登録があったという注目の新ビジネスだ。
利用者側からすると利用料金が既存のトランクルームの半額ほどとはるかに安く、現地にモノを運ばなくても利用でき、登録その他の手続も楽と気軽に安価に使える点がメリットだが、実は使い方によっては貸す側、ホスト側にも大きなメリットがある。立地に関わらず、運用できるという点だ。
「規制が始まる前に民泊の開発などを手掛けていたのですが、観光地や駅の近くに立地していないと不利ですし、部屋の状態によってはうまくいかない。10軒やって成功するのは1軒ほど。
それなら、立地や室内の状態にとらわれずに空き空間を活用するやり方がないかと考え、たまたま個人的に空いているスペースにモノを置かせて欲しいと依頼されたことにヒントを得て、行きついたのが物置ビジネスです」(運営するLibtown・阿部祐一氏)。
トランクルームもそうだが、荷物は一度預けてしまえばそれほど頻繁に出し入れすることはない。また、搬入することを考えると、近所に気軽に預けられる場所があればそれに越したことはない。
つまり、周囲に人が住んでおり、かつ荷物を預けたいニーズがあれば、立地は関係ないのだ。駅から遠いなどで決まらない物件の空室を一時期物置に貸すこともでき、その場合、賃貸のような不利な物件とはならないわけだ。
もちろん、普通の家の空き室や空いている押入れなどを貸すわけだから、トランクルームほど温度や湿度の管理はできない。だから、その分、安くするのだが、世の中にはトランクルームに預けるほどお金はかけたくないが、保存しておきたいもののほうが多い。衣類や旅行用品、アウトドアグッズ、趣味の品や使わなくなった子ども関連の品など、想定されるものは多い。
■利用料金は1畳辺り数千円が目安?
利用料金はホストが決めることになっており、1畳あたり数千円など。トランクルームが1畳あたり1万円~1万5000円であることを考えると、半額あるいはそれ以下。貴重品以外なら「monooQ(モノオク)」が有利だ。利用料金は広さだけでなく、段ボール箱1箱いくらなどと設定することもできる。
利用期間もホストが決める。1日からもありだが、預ける手間を考えるとあまり現実的ではない。1週間、1カ月などと期間限定でも良し、期限を切らず、ずっと貸すことも可能。
現在ホストをやっている人としては個人事業主、主婦、大きな住宅に住んで空き室のある高齢者など様々。一部屋全部を貸している例から押入れひとつ、部屋の隅などいろいろあり、貸す際には「この部分を貸します」と写真を付けて提示。料金、期間などとともに借りる人を募集することになる。
荷物の搬入・搬出も当人同士でやりとりする。家の空きスペースを利用する場合に家に来てもらうのはちょっと嫌というのであれば、受取り場所を指定できるので、最寄り駅前などとすることも可。あるいは宅急便で配送なども可能。
一部屋を1畳ずつに分けて貸すなどもあり得るが、その場合には部屋を仕切る必要が出てくる。また、住戸内に入る、空き家を利用する場合にはセキュリティが問題になる。
そのため、同社では今後、仕切り、スマートロックなどより貸しやすくするためのツール、仕組みなどを整備していくという。ちなみに、この取り組みに対して空き家を活用したいオーナーを募集中とのことだ。
■改修前の部屋、部屋として貸せない部屋を物置に
では、どう貸せばよいだろう。ひとつは、空いている空間を一部屋以下の狭い範囲で貸す方法。アパート、シェアハウスの空室はもちろん、あまり使っていない共用部の一部や押入れ、階段下なども貸せる。
また、今後手を入れて貸すつもりで買った空き家をしばらくの間、物置として運用、それで改修費用を稼ぐという手もある。郊外の一戸建てを部屋ごとに分けて貸せば、1部屋数千円~1万円としてもそれなりの稼ぎになる。あるいは順に改修するつもりなら、手を付けていない部屋を順に貸す手も。
耐震性に欠け、部屋としては貸せない場合も物置としてなら貸せる。あまり締め切ったままでは荷物がかびたりする危険もあるので、たまに空気を入れる必要はあろうが、物置なら内装に手を入れる必要もない。
立地が都心近く、観光地近くなどであれば訪日外国人の荷物を滞在期間中預かるという手も考えられる。
■紛失、破損は保険でカバー
考えられるトラブルとしては荷物の紛失、破損があるが、これは同社が入っている保険でカバーできる。預ける前に何を預けたかを申告、写真も添付することになっているので、預けてないものを紛失したという言いがかり的なトラブルも考えにくい。
荷物を預けたまま、取りに来ないケースも想定できるが、料金はクレジットカード払いなので、未払いは発生しにくい。荷物そのものは最後、同社が回収するとしているので、この辺りもトラブルにはなりにくかろう。よく考えられているのである。
最後に現在の利用状況だが、登録されている場所としては都内が多いものの、それ以外は日本全国に点在。広さは半畳から10畳ほどまでいろいろ。ホスト数は9月20日現在で250人前後だそうだ。
様々な場所の、いろいろな広さの空間が活用されており、どこでも収益は挙げられそうだが、とりわけ期待できそうな場所としては「港区のように家賃は高いものの、住宅は狭く、様々なモノを持っている人が多いエリア、世田谷区のようにトランクルームの使用率が都内でも高いエリアなどが有望ではと考えています」とのこと。
始めるにあたって費用が発生するわけでもないので、空き空間をちょっと活用程度の気持ちで始めてみても良いのではないだろうか。
健美家編集部(協力:中川寛子)