私、大家のプーさんの連載7回目をご覧頂き、ありがとうございます! 今回は、「 管理業務を通して気がついた、不動産の失敗パターン 」です。
■ 管理会社業務を通して得た財産
僕の大家としての強みは、不動産業者時代に首都圏( 東京 )の管理会社業務だけでなく、地方( 北関東 )の管理会社業務も経験した事だと思っています。もちろん大家として、両エリアの物件を保有した経験もあります。
「 どんな物件を長期保有物件にするか? 」
これが知れただけでも、僕は管理会社の代表という経験をして良かったです。この件に関するノウハウは、ほぼ全て管理会社時代に身につけました。
僕は、「 不動産投資は仕入れが9~10割 」と思っています。しかし、「 仕入 」はほんの一瞬です。そして、大家業は保有している間にいかに物件のパフォーマンスを引き出しながら満室経営をするかを考え、実践する「保有期間」の方が圧倒的に長いです。
儲かる物件になるかどうかは「 仕入時 」にほぼ決まってしまうのに対して、年収( 年間CF )は「 保有期間中の展開 」で決まるということです。
何が言いたいのか? というと、大家業をする上で、「 長期保有に適した物件と、そうでない物件がある 」という事です。この大枠を理解することで、大きなリスクを避けつつ、賃貸経営をすることが可能になります。
■ 突発修繕が発生しやすい「 怖い 」物件の特徴
管理会社をしながらゾッとした経験が何度かありました。細かいものを数えたらキリがありませんが、中でも「これしかない」というものを上げるとしたら、すぐに思いつくものがあります。
あえて年代を特定しませんが、それは「 築古のRC( 鉄筋コンクリート造 )物件 」に関係しています。正直、知識なしでは戦えない物件です。初心者が突っ込んで、大変な目に遭うのを何度も見ました。
僕が見てきた築古RC物件のリスクの主なものは、以下の4点です。
①水道配管に不具合が発生した場合、コンクリートを斫って対応することになる。
②①が完了しても、あくまで暫定対応に過ぎない。モグラ叩きのように同様のトラブルが続くことが珍しくない。( ※実際に多く見てきました )
③中古物件は屋上防水やその他の手入れができていない物件が多い。そのため、そこから派生するトラブルやリスクが常にある。
④アスベスト( 石綿 )の存在。( 大規模工事や解体の時は莫大な費用がかかる )
それぞれの対処法を記載します。
①は、露出配管の建物を買う事や、竣工図面一式がしっかり整っている物件を買うことでリスクや突発経費を抑える事ができます。
②これは防ぎようがありません。
③お金で解決するしかありません。( 安く買って自分で直すか、既に手入れの行き届いている業者売主物件を買うか。※ただし後者は、多くの場合は金銭的な旨味は少ないと思います )
④次の3点がポイントです。
・アスベスト含有の調査済物件を購入する
・1995~7年以降のアスベスト含有率が5%未満とされる物件を購入する
・2006~7年以降のアスベスト含有を一切禁止された時代の物件を購入する
このように、対処法はないわけではありません。しかし、僕自身は「 解体費や土壌改良費、その他の諸経費が出て行ったとしても利益が出そうな首都圏の好立地物件以外の築古RC物件はやめておこう 」という結論になりました。
かといって、私もまったく買わないわけではありません。しかし、長期の保有はしない前提で、という注釈がつきます。新築RCに関しては、投資に値すると思いますが、こと「 首都圏以外 」の築古RC造については、リスクが高いと思います。
実は今回、この郊外築古RCのリスクについて、コラムにするかどうか迷いました。それは、築古のRCを良いと思う方も多くいらっしゃいますし、現時点において、それで成功している方々がいらっしゃるのも事実だからです。
すべてのものに言えますが、「 リスクを織り込んで勝算のある価格 」で買えば、問題はありません。投資のステージによっても選択肢は変わってきます。上級者の中にはあえて地方の築古RCばかり買っている人もいるくらいです。
そもそも、「 投資家 」としてRCを購入されてきた方は、上記のリスクは承知の上であると思います。それと、初心者の方がリスクをよく調べないまま突っ込むのとでは、話が違うということです。
もちろん、郊外築古RCだけでなく、僕が大家業としてメインで保有している郊外の築古木造アパートや戸建だって、リスクがあります。
上記で築古RCについて言及してきた内容は、僕の郊外築古物件でいうところの、「 これから郊外なんて危ない! 人口は減少するし、未来のない投資だ! 」という内容と同義かもしれません。
もちろん僕は上記に対して反論もしなければ、僕の投資スタンスも崩すつもりもありません。なぜなら、それらのリスクを承知でやっているし、実際にうまくいっているからです。ある投資手法がダメなのではなく、誰がやるかによって、リスクの大きさは変わってきます。
■ 全ての情報や事象に、自分なりの回答があるか否か
不動産投資は、全ての手法や物件について、メリットもあればデメリットも必ず存在します。少なくとも、ご自身が取り組まれる物件については、メリット/デメリットはしっかりと把握し、特にデメリットに関しては対応策やリスクヘッジはされるべきです。
僕が知る中で、「 郊外の築古RC 」は、デメリットポイントが非常に大きいと感じます。管理会社に携わっていた時に、それを深く実感する事が何度もありました。他の中古アパートが有するリスクの比ではありませんでした。
僕がこの健美家コラムを担当させて頂いた目的は、「 不動産で失敗する人を減らす 」ことです。若輩の僕の少ない知見で恐縮ですが、「 郊外の築古RC 」に関しては、失敗の可能性が大きいと思うからこそ、ここでコラムにさせて頂きました。
小さい失敗はどんどんすればいいと思っています。しかし、命にかかわるような大きな失敗は取り返しがつきません。
そして、本当大事な事は、僕の言葉を100疑う事でもありません。ご自身で、しっかりと調べた上で、その類の物件に取り組むのか否かを決めることこそが重要です。
株式投資の格言で有名な「 人の行く裏に道あり花の山 」という言葉のように、失敗も成功も、紙一重です。
全ての情報や事象に、自分なりの回答があるか否か。
これが投資家としての、あなたの「 格 」です。
このコラムをお読み下さっている、特に初心者の皆さん。この世界に足を踏み入れたからには、あなたは既に投資家です。
「 投資は、自己責任 」
多くの不動産投資家は、うまくいっている時ではなく、悪い時に、この言葉を痛感することになります。そして、過去の自分の判断を悔やむのです。その時を迎える確率が、少しでも減る事を願って、今日は終わりにさせて頂きます。