コロナが明けて話題の大型物件などが続々オープンを迎えている。夏以降さまざまな物件を見てきたのだが、どの物件も緑がもりもりである。振り返ってみるとコロナ禍中で見た物件も同様。コロナ禍では花卉業界が需要を拡大したというレポートがあったことも重ね合わせると自然志向がより高まりつつあると言えるのかもしれない。
緑を中心にした大型物件、麻布台ヒルズ
話題の大型物件といえば2023年11月24日に開業する麻布台ヒルズだろう。そして麻布台ヒルズのコンセプトといえば“緑に包まれ、人と人をつなぐ「広場」のような街 – Modern Urban Village -”である。
約8.1㏊という敷地の中央には約6000㎡の中央広場があり、全体での緑化面積は約2万4000㎡に及ぶ。これまで細街路に低層の住宅が中心となっていた地域に大きな森、緑の公園ができたようなものである。
麻布台ヒルズだけではない。2014年の虎ノ門ヒルズ森タワーに始まった虎ノ門エリアの開発も2023年の虎ノ門ヒルズステーションタワーの開発で一段落したが、ここでも緑は随所に配されており、開発が進むにつれて周辺の風景も変化してきた。
法令で民間にも緑化が義務付けられるように
この背景には2000年以降、法令で民間の開発にも緑化が求められるようになったことがある。たとえば2002年の都市再生特別措置法は各種緩和を受ける要件として環境貢献を求めており、東京都でも2000年の東京における自然の保護と回復に関する条例の改正で、1000㎡以上の敷地を有する建築行為には屋上緑化等を義務付けている。
コロナ禍で花、観葉植物が売れた
国や行政といった大きな単位での緑化推進以外に、都市化などのストレスもまた緑や自然などを求める方向に向かっているように思われる。というのはコロナ禍以降、花や観葉植物などが売れているのだ。
生花販売大手の第一園芸が花卉業界の変化を定期的にレポートしているのだが、それを明らかな変化が読み取れる。
たとえば2021年のレポートでは「コロナ禍でおうち時間が増加し、自宅に花を飾る需要が膨らんだことで、狭いスペースでも華やかに飾れる、小ぶりの「スプレー咲き」(1つの茎に複数の花が付く)タイプの花の取扱数量が増加しています」という。
観葉植物の需要も高まっており、同レポートでは品不足から卸売り平均価格が前年度比114%と上昇していることが報告されている。
また、東京新聞は2021年7月に「今年4~5月の自宅用切り花の店頭販売額は、コロナ前の2019年同期比で60%増。毎月一定の料金で店の花を自由に選べる「定額制」の会員数も、20年の1.5倍となる3万人超に増えた」とやはり生花販売大手の日比谷花壇のコメントを掲載している。
2020年6月からはユニクロが都内2店で花束の販売を始め、現在は東京の8店舗を始め、全国の21店舗で販売されている。花だけでなく、観葉植物も販売されており、オンライン販売も。ニーズの拡大が感じられる。
自然な佇まいの緑化に人気
そうした背景を考えると住宅に緑が配されているのも当然といえば当然かもしれない。2023年10月19日に開業した東急不動産の『職・住・遊 近接の新しいライフスタイル』を提案する新複合施設「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」も外から見ると木と緑が目立つ、これまでにないような建物である。
入口から覗くと敷地内にも緑がいっぱい。しかも、かつてのように整然と、いかにも植えましたという感じではないのが今風らしい。自然に生えてきたような感じになっているのである。
また、最近見学に行った文京区湯島の賃貸住宅天神町placeも中庭に自然に生えているかのように見える緑が印象的だった。
振り返ってみると藤沢市のちっちゃい辻堂(2023年7月)、和光市の鈴森ビレッジ(2023年2月)、大田区の+GARDEN(2023年1月)、LEAF COURT PLUS(2022年9月)など話題になった物件はいずれも緑満載。それが選ばれるようになっているのである。
そう考えると、小規模な物件でもどこかに自然を感じる空間を作るなどの工夫を考えてみても良いのかもしれない。これらの物件ほどでないにしても、エントランス周りにちょっとした緑があるだけでも印象は変わるはずだ。