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建物不要。5年間で150万人を集めた、駐車場を劇的に稼ぐ場に変える仕組みが横須賀に上陸

賃貸経営/空家・遊休地活用 ニュース

2024/04/07 配信

ピンクと白の階段、奥にはピンクの壁。この壁にはライブペインティングで絵が描かれる予定
ピンクと白の階段、奥にはピンクの壁。この壁にはライブペインティングで絵が描かれる予定。写真は野比海岸の#ジハングン

土地を活用しようとした時、賑わいを生もうとした時、多くの人は土地の上に不動産を建てることを考える。だが、建物を建てることなく、土地に稼がせる、人を集めさせる手がある。それが4月1日に横須賀市の野比海岸に開業した#ジハングンだ。

横須賀市に登場する以前には福岡県糸島で5年間で150万人をなんの変哲もない駐車場に集めた。一体、どんなものなのか、現場を見て来た。

写真を撮るために駐車場にやってくる人たち

視認性の高いピンクの構造物。高さは6m
視認性の高いピンクの構造物。高さは6m

京急YRP野比駅から海岸を目指して歩くこと数分。風景の中に突然、ピンク色の構造物の一端が見えてくる。それが#ジハングンだ。

#ジハングンを一言で説明すると「映える駐車場」。

2016年に福岡市は市街化調整区域の土地利用規制緩和に基づき、地域の農林水産業や観光などの産業振興に寄与するものであることを条件に市街化調整区域内に地域産業志向施設の営業を許可した。

そこで2018年7月に福岡県西区と糸島市の境界に位置する県道45号線に面した1万㎡の遊休地に株式会社ブルースカイのプロデュースで誕生したのが賑わい創出コンテンツ「#ジハングン」。

自販機が並ぶ一画。本物は1台だけ
自販機が並ぶ一画。本物は1台だけ。こちらも野比海岸のもの

本物とフェイクが入り交じる自動販売機(だから名称は#ジハングン!)をはじめとするさまざまなスタイルのアートコンテンツが点在しており、それはさながら海辺の美術館。そこで写真を撮るために若い女性たちが集まり、駐車場を利用する。

さらにはそこに集まる人を対象に周辺に次なる映えスポットが誕生し、回遊性が生まれ、それが新たな人を呼び込む。その結果、糸島の玄界灘沿いの駐車場には5年間で150万人が集まった。普通、駐車場は目的地ではなく、目的地に行くために利用されるものだが、#ジハングンが生まれたことで駐車場は目的地になったのである。

野比海岸沿いにピンクのアートオブジェが点在

その#ジハングンが2024年4月に横須賀の野比海岸に誕生した。野比海岸に隣接する北下浦海岸通り沿いに市の2つの駐車場があり、株式会社ブルースカイとまちづくりに関心のある人ならご存知だろう、鎌倉を本拠とする株式会社エンジョイワークスの共同事業体が指定管理者になった。

主な業務は駐車場施設運営業務と施設維持管理業務という文字にすると至って固い内容だが、その中には海辺に約1キロ続く遊歩道のうちの500mに点在する不思議なアートオブジェの運営、維持管理なども含まれている。

どんなオブジェがあるかといえば、名称通りに実際の自動販売機とフェイクの3台、高さ6mもの目立つブランコ、ヨコスカと書かれた箱文字、その下に広がる階段に描かれたアルファベット、開かれたドアなどなど。いずれも人目を惹くピンクに塗られており、それ以外にも隠れたピンクスポットもあるという。

写真を撮る、SNSで共有するのが当たり前の時代

子ども達がお母さんと一緒に通りかかり、誰に言われるともなく絵になる場所で自らポーズ。撮られ慣れていることにびっくり
子ども達がお母さんと一緒に通りかかり、誰に言われるともなく絵になる場所で自らポーズ。撮られ慣れていることにびっくり

そんな子どもだましの仕掛けで人が集まる、駐車するものかと思う人もいるかもしれないが、開業日の朝に訪れてみるとまださほどの告知がされているわけではない状況でありながら近所の新小学生たちが母親たちと通りかかり、勝手にオブジェと一緒にポーズを取っては撮影合戦に。それ以降も通りがかる若い人達はオブジェを上手に利用、写真を撮っているのである。

アルファベットの書かれた階段で自分のイニシャルを探す。開業前に訪れた地元の有力政治家も子どもと一緒に撮影していたそうだ
アルファベットの書かれた階段で自分のイニシャルを探す。開業前に訪れた地元の有力政治家も子どもと一緒に撮影していたそうだ

写真を撮る、それをSNSで共有することが当たり前の時代である、誰もが写真を撮れる時代である。となれば絵になるスポットに行って写真を撮りたい、それを見せたい、そしてそれを見た人がそこに行って私も写真を撮りたいとなるのは自然の流れ。

実際に撮影をしまくっている人達を見ると、かつて糸島に多くの人が集まった理由が納得できるというものである。

人が集まる場にはさらなる期待も

写真を撮りたがるのは若い人、親だけではない。孫がかわいい祖父母世代も撮りまくる
写真を撮りたがるのは若い人、親だけではない。孫がかわいい祖父母世代も撮りまくる

人の集まる場には周囲から期待もかかる。すでに地元の飲食店経営者たちからはこの場で街コンができないかという打診も来ているとか。それで認知度が上がれば、より多くの人がこの場を使いたいと考えるはず。

キッチンカーを出したい、各種イベントの会場に使いたい、ウェディングの撮影をしたいその他いろいろな使い方が考えられるが、それは駐車場の収益に繋がり、場合によっては場所代として稼ぐことにも繋がるかもしれない。

駐車場自体、設備さえあれば人を常駐させておかなくてはいけない施設ではなく、言ってみれば無人で運営できるもの。もちろん、設備のメンテナンスは必要だが、それはどこの駐車場も同じ。だが、近くに目的地がなくても駐車場が目的地なら人は来る。その意味では#ジハングンは駐車場を自立して稼げる場にするということでもあるわけだ。

どこかに真似する余地はないか

もちろん、どこででも成り立つわけではない。糸島には玄界灘という背景となる風景があり、野比海岸も同様。だが、そこまで雄大でなくても海や山その他を背景にした土地は他にもあり、また、駐車場の中に映える何かを設置するという手は十分あり得る。

実際、前述したように糸島では#ジハングンの成功にならい、周辺にも駐車場が増えて、映えアイテムも増えた。そしてそうした映えスポットが集積することで人気も上昇している。

それを考えると、#ジハングンそのままの真似はできないにせよ、なにか、参考になることはあるかもしれない。気になるようなら一度現地を見に行ってみれば良い。

駐車場入口の看板。看板自体も目立つ
駐車場入口の看板。看板自体も目立つ

ちなみに野比海岸の駐車場の利用料金は1時間500円。1日最大2000円である。それで糸島同様1年に30万人が来たら。なかなか、楽しい妄想ができるというものである。

※「#ジハングン」は株式会社ブルースカイの登録商標です(登録番号6682700)

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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