サスティナブルでローカルに寄り添う
街づくりやビジネスにもそんな思いが反映されている
アメリカ西海岸北西部、オレゴン州のポートランド。車社会のアメリカにあって市内は公共交通で移動でき、世界有数の地ビール醸造所や質の高いコーヒー焙煎所、豊かな自然を楽しみに観光客が訪れる。
また、この街の魅力として、サスティナブルでローカルを大事にする暮らし方やコミュニティを醸成する街づくりなどがあって、コロナ禍の前には自治体や生活産業、不動産・開発事業会社などの視察も多かった。
ポートランド観光協会によると、2023年はそんな視察旅行が復活してきているという。ポートランドの場合、視察は観光のついでではなく、そのためのツアー催行会社を利用したり、大学のサマープログラムに参加したりという真剣な視察旅行が中心という。ちょうど12月にそんな例にぴったりの東京からリノベーション会社が視察に訪れるとのことで同行させてもらうことにした。
ポートランドを訪れたのは、恵比寿に本社のある株式会社リビタの11名。一棟まるごと・一戸単位のマンションや戸建てのリノベーションからシェア型賃貸住宅、ホテル、オフィスなどの企画・運営まで幅広く手掛けている。年に一度、社員が自ら学びたいテーマを設定しグループに分かれて、全国各地、時には海外に赴く社員研修旅行を実施している。
今回の視察では、ポートランドの街やホテルを回って、リノベーションにおけるブランドデザインやコミュニティ機能づくり、サスティナブルな取組みなどを学ぶのが狙い。
100年以上前の温浴施設が
ヴィンテージ感を活かしたホテルに。地下に驚きの設備も
1軒目は、使われなくなった学校・教会・農場などをホテルやブルワリーパブ(ビール醸造所にパブが付随している施設)に再生しているのマクメナミンズが手がける「マクメナミンズクリスタルホテル」51室。
元は、1911年築のバスハウス(温浴施設)だが、一時は日本人夫婦が経営するホテルだった時期もあったそうで、オーナー夫妻が住んでいた部屋は今は客室に改装されている。ヴィンテージ感あふれるアートなどは、元のものを生かしたり社内で作っているものが多い。
地下には共用設備としてソーキングプールがあり、隣接のクリスタル・ボールルーム(昔、ダンスホールだった施設をライブミュージックホールにリノベーション)で楽しんだ後にここでくつろぐゲストも多い。
視察メンバーは、100年前のヴィンテージ感が他にない雰囲気を作っているのと細部にいたるデザインの作り込みをカメラに収めていた。
カフェやギャラリーでゲストと地元を繋ぐ
ニーズに合わせて部屋タイプを改変
2軒目は、新築だがローカルとゲストを繋げるコミュニティの場作りやホステルから個室までの共用設備の作り方が参考になる「ロロ パス」。
ベッド数は250だが、部屋タイプをニーズに合わせて臨機応変に変更しているのが興味深い。コロナ禍で2段ベッドを集めたタイプよりプライベートな個室の希望が増え、改変した部屋も多い。
ポートランドでは数少ないルーフトップバー、ゲストが利用できるコミュニティキッチン、仕事などいろんな用途で使える1階のカフェ、月に一回交流会なども開くギャラリーと、泊まるだけでなくローカルとの交じわれる仕組みづくりが面白い。海外からの若いゲストを現地との交流ボランティアとして迎え入れて無料宿泊を提供したりもしている。
エジプトから運んだ中古タイルやパン屋のファサード!
古いビルの中でいかしたインテリアに
3軒目は、1911年築の当時は一時労働者用宿泊所だった建物をリノベーションした「KEX」203室。歴史的建造物に申請もしており、規制もあるため、1年かけてリノベーションをした。
創業者の一人は映画のセットデザイナーで、ホテルの第1弾は、アイスランドで映画のセット用にと考えていたものがそのままホテルになって成功。ポートランドはその第2弾。
コンテナで世界各地から運んできた家具やパーツの使い方に目を見張る。エジプトのパン屋のファサードをそのままキッチン周りに使ったりと驚かされる。視察メンバーは、リサイクル建材を巧みに活用して古いビルの存在感にマッチしたストーリー性の高いインテリアがとても参考になったという。
このホテルも一階のバー&レストラン、ルーフトップ、さらに中庭やホテル内のコモンスペースなど、集まれる場所が数々あって、ホテルとしてもゲストと地元の人が一緒に飲食をして友達になる場を提供するというのを目指しているという。
視察メンバーは「どのホテルも街や建物を紐解き、個性や信念の感じられるブランディングやローカルのビジネスやコミュニティ醸成の一助になっている。これらの取り組みがポートランドらしさに溢れていて感銘を受け、自社のビジネスにも大変参考になる有意義な視察だった」と感想を述べていた、
執筆:
(おのあむすでんみちこ)