震災による耐震性の問題や、火災被害などで大都市等では、木密解消に向けての都市整備が進められる。能登半島地震では、木造建物の延焼が広がったり、倒壊した。木造に対する不安が高まっているが、その一方で、木造に対する評価と注目度も高まっている。
耐火・木造技術の進展
三井不動産と竹中工務店は先月、国内で最大・最高層の木造賃貸オフィスビルの建設に着手した。鉄骨とのハイブリッド。東京都日本橋に地上18階建て・高さ84mで延べ床面積が2万8000㎡の木造オフィスとしてアピールしている。
使用する木材の量は、1100㎥を超える。一般的な鉄骨造のオフィスビルと比較すると、躯体部分での建築時の二酸化炭素(CO2)排出量をおよそ3割削減する効果を想定。業界団体の不動産協会が策定した「建設時GHG排出量算出マニュアル」を適用してCO2排出量を把握する初のオフィスビルという。
木造部分の耐火性能については、竹中工務店が開発し大臣認定を取得した耐火・木造技術などを導入する。主要な構造部材に木材を活用する。
3時間耐火集成材「燃エンウッド」のほか、鉄骨梁の耐火被覆には2時間耐火の木被覆技術などを使う。CLT(直交集成板)を用いた耐震壁・制震壁も導入される。構造材だけでなく内装や仕上げにも木材を積極的活用して木質ならではの温かみのあるオフィス空間の創出を目指している。
日本初の防火地域での3階建て
事業用に限らず居住用でも防火地域での3階建てCLTログハウスが日本で初めてお目見えした。純木造建築だ。東京・福生市に地上3階建て延べ床面積564㎡の建物で、1階にはオーナー経営の会社が入り、2~3階に8世帯が入居する賃貸住宅となる。ログハウス「BESS」ブランドを展開するアールシーコア(東京都渋谷区)が最先端技術の木造建築物が昨年末に竣工した。
同物件で使用した木材の量は171㎥となり、その建物のCO2固着量を一世帯・一人当たりのCO2排出量と比較すると、一世帯で35年分、一人当たり74年分のCO2排出量に相当するという。ログハウスは、直行する木材を組み合わせて外壁・内壁に木を現わして利用する構法だ。
アールシーコアでは、「CLTを用いたログ材の特許」と「CLTログハウスの商標」を持っている。従来は、防火の法律により防火地域では2階建てまでしか建築ができなかったが、2023年2月に「90分準耐火構造認定」を取得したことで、日本で初めての3階建てCLTログハウスが実現した。
同社では、長尺材が取れるCLT材の活用と防火認定によって戸建て住宅や集合住宅、商業施設、オフィスなど幅広い用途で3階建ての建築物が可能になるとしている。
木材のメリットが見直されている
阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、能登半島地震などを踏まえて耐震性に対する注目度が上がっている中で、こうした木造建築物にトライするプロジェクトが鳴りを潜める様子はない。
その背景として建築基準法に基づく新耐震基準は、震度6~7でも倒壊しないよう設計されていることや、木造住宅の耐火性の面が見直されていることが大きい。
最近では木材ならではの柔軟性も着目され、デザインと間取りの自由度が高いことなども挙げられる。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて総重量も軽いことで地震の震動エネルギーを金属に比べて吸収しやすいとされ、建設費用も木造のほうが鉄筋コンクリート造や鉄骨造と比べての費用対効果的にもよい。
地球沸騰化により猛暑・酷暑が増す昨今だが、その中で木造ならではの通気性や遮熱効果・断熱効果などが見直され、コンクリートジャングル化からの脱却を後押ししている。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))