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JR西日本、ローカル線30区間赤字の衝撃 廃止も検討、不動産投資戦略の変換は不可避

都市計画・再開発(地域情報)/全国 ニュース

2022/07/03 配信

収支の低迷が公表された芸備線。ローカル鉄道は廃線の危機に瀕している
収支の低迷が公表された芸備線。ローカル鉄道は廃線の危機に瀕している


収支率最低は芸備線(東城~備後落合)の0.4%

最大の営業赤字は山陰線(出雲市~益田)の34億5000万円

国内各地の鉄道ローカル線が「廃止」の瀬戸際にある。人口減少などで利用客数が減って鉄道会社の収益が圧迫されており、廃止を含めた検討の動きが加速しているのだ。

JR西日本が初めて公表したデータによると、1日の平均乗客数(輸送密度)が2000人未満の17路線30区間は、2017~19年度の平均の営業損益が全て赤字だった。

一方、路線を廃止しなければ鉄道運賃が最大6割値上がりするとの民間試算も。ローカル線が廃止されれば人の居住や動きも大きく変わるのは間違いなく、地方で不動産投資を手掛けている人は戦略を見直す必要がある。

JR西日本の発表によると、公表された路線のうち、収支率(費用に対する収入の比率)が最も低かったのは、芸備線の東城~備後落合で0.4%だった。次いで収支率が低かったのは木次線の出雲横田~備後落合で1.5%となった。

一方、営業赤字が最も大きかったのは山陰線の出雲市~益田で34億5000万円。次いで大きかったのは紀勢線の28億6000万円だった。

ご参考に、JR西日本は発表した公表対象路線と、それぞれの収支の表を以下に掲載しておく。ご自身がお住まいの地域や、投資対象の物件がある地域と比べ、参照してほしい。

JR西日本の資料から
JR西日本の資料から

JR西日本の資料から
JR西日本の資料から

JR西は「沿線人口の減少・少子高齢化、道路整備や、道路を中心としたまちづくりの進展など、ローカル線を取り巻く環境は大きく変化(している)」と指摘する。

その上で、地域の住民と課題を共有し、「地域公共交通計画」を策定する機会などにも参加して、「鉄道の上下分離等を含めた地域旅客運送サービスの確保に関する議論や検討を幅広く行いたい」としている。「鉄道の上下分離」方式は、線路などの運営と保有の主体を別にする運営方法だ。

「廃線」へ警戒強める自治体 JRと攻防激化も
国交省調査では複数の鉄道会社が「バスへの転換など必要」

JR西の公表に関して、「廃線の布石だ」との警戒感を沿線自治体は強めている。広島、島根の県知事らは記者会見で、採算性のみ重要視して地方路線を見直す動きを批判した。

さらに、全国知事会長の平井伸治鳥取県知事はJR西日本の発表を踏まえ、沿線住民の意思を重んじ、鉄道事業者の考えだけでローカル線が廃止されない仕組みを検討するよう求める要請書を自民党の議員連盟に対して提出している。

ただ、苦しいのはJR西日本だけではない。

ローカル線の収支は、JR四国や九州、北海道も公表している。国土交通省がJRや私鉄、第三セクター41社に対してアンケート調査したところ、複数が「利用者の少ない路線は廃止し、バスをはじめとするほかの他の交通手段へ帰るべきだ」と考えていることが分かったという。

国土交通省
国土交通省

今後、路線廃止も含めて検討したい鉄道事業者と、それを阻止したい自治体との間の攻防が激しくなりそうだ。

野村総研の試算では、路線維持なら最大6割運賃値上げへ
「人口減少」+「新しい生活様式」で鉄道のあり方変わる

ただ、無理に路線を維持するとなると、利益水準を保つため鉄道運賃を大きく上げなければならなくなるとの試算がある。鉄道会社がそんな決断をできるわけがなく、路線の廃止は結局、避けられないだろう。

この試算は野村総合研究所が行った。試算によると、JR5社(北海道、東日本、西日本、四国、九州)がいまの路線を維持したまま2019年度の利益水準を得ようとすると、2040年度には2~6割程度、鉄道運賃を引き上げなければならなくなる。

野村総研のレポートから
野村総研のレポートから

かりに路線や運賃水準を維持したとしたら、40年度の各社の利益水準は、19年度をそれぞれ1とした場合、北海道が0.78、東日本が0.83、西日本が0.81、四国が0.70、九州が0.86へと減少するという。

野村総研はレポートで「新型コロナウイルス感染症は人の移動に大きな制約をもたらし、鉄道、航空、バス等の主要な公共交通の利用者が大きく減少しました」と指摘。

中でも鉄道は、「コロナ禍以前の稼ぎ頭であった新幹線などの長距離移動の需要や都心部の通勤需要が大きく減少」したとする。

さらに、これまで鉄道会社がとってきた「新幹線・特急や大都市圏の高収益路線の黒字で地方のローカル線の赤字を支えるという『内部補填』スキーム」が、テレワークなどの「新しい生活様式」の浸透により新幹線などの収益回復が見込めず、「『内部補填』の維持が難しくなっています」と分析している。

もともとの人口減少、過疎化に加え、新型コロナによるテレワークの浸透や鉄道利用者の減少で、地方路線廃止の動きは止められそうにない。廃止される地方路線の周辺は賃貸需要が激減するだろう。こうした動きに敏感にアンテナを張りながら、不動産投資戦略に生かしていきたい。

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取材・文:小田切隆(おだぎりたかし)

■ 主な経歴

経済ジャーナリスト。
長年、政府機関や中央省庁、民間企業など、幅広い分野で取材に携わる。

■ 主な執筆・連載

  • ニュースサイト「マネー現代」(講談社)
  • 経済誌「月刊経理ウーマン」(研修出版)
  • 「近代セールス」(近代セールス社)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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