世界遺産・姫路城を擁する兵庫県姫路市は1972(昭和47)年の新幹線開通以来、鉄道の高架化、駅前の土地区画整理、道路整備を目指し、街づくりを進めてきた。今から50年前の話である。
当時の姫路駅周辺は山陽本線、姫新線、播但線、飾磨港線という4本の鉄路で南北が分断されており、慢性的な渋滞が問題だったのである。
50年前の計画が令和に至って実現
それを新幹線同様高架化できれば問題は解決に向かうと高架化を目指すものの、4路線ともなると莫大な資金が必要になる。
ところが1986(昭和61)年に飾磨港線が廃止となったことで、事業費の縮減が可能になり、それ以降、1989(平成元)年に連続立体交差事業、関連道路事業、都市区画整備事業の3つの事業が認可され、姫路駅前は以降、少しずつ変化してきた。
2006(平成18)年に山陽本線、2008(平成20)年に姫新線、播但線が高架化され、2011(平成23)年にはすべての鉄道高架事業が完了。
続いては鉄道高架化、車両基地や貨物基地移動によって生じた土地を開発する事業がスタート。駅前の玄関口に当たるエントランスゾーン、商業の拠点となるコアゾーン、市民交流の場として期待されるイベントゾーンの3つのゾーンでそれぞれ開発が進められてきた。
高架化から始まる3つの事業の総称がキャスティ21.これはお城のキャッスル、都市のシティ、そして21世紀を組み合わせた造語で、市民から公募した愛称とか。
駅前空間、駅ビルが2013年に完成
まず2013(平成25)年に完成したのは駅前空間キャッスルガーデン。これは駅を出てすぐのところにある地下に設けられた広場からなる空間で、日本有数の規模を誇る。イベント等でもよく使われている場所で、姫路を始めて訪れた人は広さ、賑わいにびっくりするのではなかろうか。
姫路駅を挟んでキャッスルガーデンの反対側には地下街グランフェスタが続き、フェスタビルという商業ビルもある。
同年には駅の中央コンコース正面にキャッスルビューと名付けられた姫路城が一望できる眺望デッキも完成。
姫路城と正対する駅の立地を生かした空間で、姫路城の門をイメージしたものとか。観光客の多くはここからまず姫路城の写真を撮るようで、利用度の高い空間である。
また、この年にはJR西日本による駅ビルピオレ姫路が完成、向かいにあるキャスパ(山陽姫路駅ビル)を繋ぐ眺望・連絡デッキも完成している。
ホテル、映画館その他民間主導の開発も
コアゾーンでは民間主導の開発が進められ、ホテルモントレ姫路、映画館・スーパーマーケットなどが入った複合商業施設テラッソ姫路をはじめ、フィットネスクラブレフコ、姫路医療専門学校やクリニック、保育園などが作られている。
さらに、その奥、播但線を挟んでは2021(令和3)年にアクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)がオープン。最後に残った隣接地には2022年5月に県立はりま姫路総合医療センターが開業。施設整備としては完成を見た。
こうした整備の結果、姫路駅前の公示地価はコロナ禍の2021年までは9年連続で上昇してきた。2021年には下がりはしたものの、兵庫県内では上位5番目となっている。
駅から姫路城間の大手前通りを起爆剤に
こうした駅前の整備に加え、姫路駅から姫路城までの大手前通りで国土交通省が2021年に新設した道路活用のための制度・歩行者利便増進道路「ほこみち」に指定されてもいる。
この制度で初の指定を受けたのは大阪市の御堂筋、神戸市の三宮中央通りの3か所と聞けば、姫路市の街の賑わい作りに対しての積極的な姿勢がお分かりいただけよう。
既存の大型商業施設は苦戦
その一方で駅から離れた老舗百貨店、ファッションビル等の廃業が続いており、それに抗するように姫路城近くの商店街では再開発が模索され始めている。
大手前通り沿いで現在解体工事が進んでいるのは1947(昭和22)年に創業、播磨地方初の百貨店だったヤマトヤシキ姫路店(上図では旧ヤマトヤシキ姫路店と記載されている)。
リーマンショック以降の消費低迷に経営が悪化、2018年に閉店している。加古川店は現在もラオックスのグループ企業として営業を続けているが、姫路店跡地の使い道は今のところ、白紙。中心部の広い土地だけにどう使うかは今後の市の賑わいにも大きく関係してきそうである。
大手前通りと並行する商店街みゆき通りと、それに直交する二階町商店街に面した広大な土地だけにどういった使い方が良いのか、模索が続けられているというところだろうか。
このエリアでは2016年にみゆき通りの東側を並行するおみぞ筋商店街にあった姫路フォーラスというファッションビルが駅周辺の商業施設の増加に苦戦を強いられ、2016年に閉店。現在はダイワロイネットホテル(上図に記載がある)とマンションの2棟に建替えられている。
駅からさほどの距離ではないものの、駅周辺の吸引力に地域の商店街はまだしも、大型店は抗しきれずにいるというところだろう。だが、みゆき通り、おみぞ筋商店街ともに休日には人が出ており、店舗も新たに入れ替わってきている。
本町商店街では再開発を模索する動きも
また、さらに奥、姫路城寄りの本町商店街では商店街を大胆に作り替える再開発を計画している人たちもいる。商店街としてというよりも、観光、文化、商業拠点としての複合施設を目指す開発のようで、2001年に勉強会としてスタート。途中、リーマンショックでの中断を経て、現在は姫路本町CD地区再開発まちづくり協議会として活動をしている。
その後の状況を考えると計画通りには進捗してはいないようだし、これだけの計画が容易に進むとは思えないが、姫路駅と姫路城を繋ぐ大手前通りを中心に回遊性のある街づくりが模索されている姫路市にあっては、これらの商店街は重要なピースのひとつ。今後の跡地、開発がどうなるかは気になるところだ。
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健美家編集部(協力:
(なかがわひろこ))