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激変する金沢市中心部の最新事情。ホテルは飽和状態、マンション急増、北陸新幹線延伸に期待も

都市計画・再開発(地域情報)/金沢/北信越 ニュース

2022/07/18 配信

北陸新幹線開業後、観光客が増加していた金沢だが
北陸新幹線開業後、観光客が増加していた金沢だが

2015年3月の北陸新幹線の駅開業以来続いてきた金沢市のホテル建設ラッシュがコロナ禍でストップ。民泊、簡易宿所が打撃を受けているのはもちろんだ。一方で中心地にはマンション建設が目立つようになってもいる。そんな金沢中心部の不動産最新事情を聞いた。

遅れてやってきた金沢のホテル建設ラッシュ

「そもそも、金沢のホテルラッシュは遅れてやってきた」と有限会社E.N.N.金沢R不動産代表で地域と移住者を繋ぐメディア・real local金沢の運営にも関わる小津誠一氏。

2011年の九州新幹線がうまくいかなかったことを見ていたため、経済効果への期待より、ストロー現象(新幹線や高速道路などの交通網の整備でそれまで地域の拠点となっていた都市が経路上の大都市の経済圏に取り込まれ、ヒト・モノ・カネなどがより求心力のある大都市に吸い取られる現象。ストロー効果などとも)への警戒感のほうが強かったというのである。

もちろん、市やJRは新しい新幹線を成功させようと大がかりなプロモーションを行っており、最終的にはそれが功を奏した。

開業から2年後、2017年度の日本政策投資銀行北陸支店のレポートによると石川県、富山県両県の観光客数は開業後に15~18%程度の前期比増となっている。また、石川県ではそれまで主要観光地だった加賀、白山といった温泉地から金沢エリアへのシフトが見られている。

その一方で2016年くらいまではホテルの数が増えておらず、そのため、市内の宿泊者数はそれほど増えていない。警戒感が投資を控えさせていたわけである。

同レポートを見ると新たなホテル開業が目につき始めたのは2017年以降。2015年までに開業したホテルが6件であるのに対し、2017年以降は2020年までに17件の開業が予定されていた。

実際にはコロナ禍で計画がストップしたホテルもあり、すべては開業していないが、新幹線開通から少し遅れてのホテル建設ラッシュだったことが分かる。

コロナ禍で休業も他ホテルへ継承される例多々

その後、コロナで人の流れ、観光が停滞し始めたのが2019年末から。実際に影響が出始めたのは2020年からだろうか。同年4月にはカプセルホテル「ファーストキャビン金沢百万石通」が同時期のファーストキャビン倒産に伴い、営業を休止。以降、いくつかのホテルが営業を辞めているが、廃業に至っているところは少ない。

ファーストキャビンについては2022年3月に宿泊施設運営のABアコモが「トリフィート ホテル&ポッド 金沢百万石通」としてリニューアルオープンさせている。

2013年と早い時期に開業したホテルトラスティ金沢香林坊も2022年3月に営業を休止したが、7月には後継ホテルの開業が予定されている。その意味では変遷はあるものの、ホテルニーズはまだ高いと読んでいる人が少なくないということだろう。

2023年の北陸新幹線延伸に期待

福井駅前では新幹線開業に向けてさまざまなプロジェクトが動いている
福井駅前では新幹線開業に向けてさまざまなプロジェクトが動いている

その背景には2023年度末の北陸新幹線の金沢~敦賀駅間の開業予定がある。2015年の開業時と同じような観光客ラッシュの再来が期待できると考えている人が少なくないのだ。実際、福井駅前では大規模な開発が行われており、新幹線効果に寄せるものは大きい。

だが、いくつか、不安要素もある。ひとつはここまでご紹介してきたレポートは2017年度時点の需給試算でその時点で計画されている金沢市内におけるホテル投資はやや過大と評価している。

「2020年までに金沢市内で計画されているホテルがフル稼働すると考えられる2021年については、仮に市内宿泊者が現状よりも年間約61万人(1日1700人)も増加する345万人(1日9500人)になったとしても金沢市内のホテルの定員稼働率は現状63%から6ポイントも低下する57%となってしまうことがわかった」。

もちろん、2020年以降でストップしている計画もあり、休業していたホテルがあったなどでホテル数の伸びはとりあえず止まっている。民泊や簡易宿所なども休業あるいは廃業したこともあり、客室は増えてはいないが、それ以上に観光客が止まっている。

増加が期待されているインバウンド客についてはゼロである。今後、コロナ明けと新幹線開業が重なれば一気に戻るのではないかという期待はもちろんあるが、さて、どうなるか。

駅正面の左側の塀で囲まれた土地がくだんの空き地。一等地のまとまった土地である
駅正面の左側の塀で囲まれた土地がくだんの空き地。一等地のまとまった土地である

もうひとつ、ホテル絡みでは金沢駅前にある、2017年3月に閉館、解体された金沢都ホテルの跡地も気になるところ。

当初は2020年をめどにオフィスとホテルの複合ビルとして再開発されると言われていたが、現在のところは更地のまま。駅前の一等地に資金を投入できない状況が何を意味するのか。土地は関西の近鉄不動産の所有になっている。

中心部でマンション増のプラスマイナス

金沢での不動産の動きとしては、市内中心部、香林坊の裏手から近江町市場、繁華街である片町などでマンションが増えている点が挙げられる。きっかけとなったのは2018年に北國銀行本館跡地の一部を利用して完成した三菱地所の「ザ・パークハウス金沢城公園」

「元々、北陸三県は土地付き一戸建てのニーズが圧倒的に高く、しかも地場のハウスメーカーが非常に強く、都心の大手が入りにくかった土地。今でも若い人たちは郊外に2000万円以下の新築一戸建てを建てたがります。

ところが、バブル期に郊外に大きな家を建てた人たちが高齢期を迎え、都心回帰を始めています。そろそろ車の運転も不安だし、都心のほうが便利という考えでしょう。そこで中心部のマンションにニーズが生まれているというわけです。

香林坊から少し入った飲食店街の中に新築されたマンション。写真の右側、道の正面と2軒が分譲中だった
香林坊から少し入った飲食店街の中に新築されたマンション。写真の右側、道の正面と2軒が分譲中だった

また、首都圏などに居住する人がセカンドハウスとして買っている例もあるようですが、いずれにしても地域にとってはあまり歓迎すべき動きではありません。

中心部は他の都市同様不動産価格が高く、高齢化が進んでおり、都市経営という観点では入ってきてくれるなら若い人に入ってきてほしい。ところが若い人はどんどん郊外に向かい、高齢者が中心部に戻ってくるというのが現状です」。

可処分所得の高い層が入ってくれば税収は多少は伸びるだろうが、それで良いのか。中心部の将来を考えると微妙なところである。

また、マンションは建物としてどうしても没個性になりがち。住んでいる人以外には無縁の土地ができてしまうということでもあり、そうした空間が都市中心部に増えることは賑わいを削ぐ結果になりはしないか。懸念もある。

町家に住みたがるのはヨソ者、若者

金沢と聞くと町家をイメージする人もいるだろうが、残念ながら若い人たちも含め、地元の人たちにはそれほど歓迎される存在ではないと小津氏。

前述したように金沢市中心部、犀川浅野川に挟まれた旧市街地の価格は上がっているものの、郊外住宅地の価格はいまだに安く、2000万円あれば新築一戸建てが手に入る。それなのに1000万円もかけて古い家をリノベーションする意味が分からないというのである。

街中を歩くと町家というほど古くはなくとも雰囲気の良い建物は多く、好きな人なら手を出したくなるのでは
街中を歩くと町家というほど古くはなくとも雰囲気の良い建物は多く、好きな人なら手を出したくなるのでは

面白いのは中心部に住みたがる人と郊外で家を買おうと言う人はそもそもライフスタイルそのものから違うという点。

「金沢は昔から茶道、華道その他のお稽古事が盛んで、そうしたカルチャーに触れようとする人たちは中心部を選びますが、郊外に行きたい人たちはよりメジャーで一般的な市場を中心にしたライフスタイルを選択する傾向があるように思います。そして、パイはそちらの人たちが多い。世代の差ではなく、ライフスタイルの差が居住地、選ぶ不動産の違いになっていると思います」。

金沢市中心部は震災などの自然災害、戦災などにあわずに来たため、街並みも含め、藩政期からの文化が暮らしのディティールにまで息づいているものの、郊外にはその影響は少なく、より一般的、標準的な暮らしが中心になっているということだろう。

そうした現実を踏まえると金沢中心部の町家などへの投資を考える際にはそれを選ぶのは地元の人ではない金沢ファン、あるいは伝統芸能や文化などに関心の高い層が中心になってくることを意識する必要があるのかもしれない。

ウーバーイーツ振るわず

首都圏ではウーバーイーツを始め、デリバリーが伸び、ゴーストレストランも不動産の使い方として認識されるようになったが、金沢では全く振るわなかった。それは元々が車社会だったため。

「それぞれの店が店の前で弁当販売をしたり、電話予約したら用意しておきますよとさまざまな手でテイクアウト商品を用意。高いお金を出してデリバリーしてもらうより、これまで車で食事に行っていたように、車で取りに行ったほうが良いということでしょう。

そのため、ウーバーイーツなどを見るとリストアップされているのはチェーン店ばかりで地元の人たちにとっては全く魅力がなく、使う気になれない状況です」。

飲食でいえば、地元で馴染み客が多い店はこうした形で買い支えられ、なんとか大変な時期を凌いできたとのこと。一方、全国チェーンの居酒屋などは2020年の夏頃から閉鎖する例が出始め、現在も床面積の大きな物件の空きが目立つ状況が続く。

小津氏の仕事でも大型の商業施設などはストップ、一方で一人で小さく始めるという個人店のニーズは増えているとか。もともと、金沢は個人の、個性のある店が多い街であったことを考えると、原点回帰ということだろう。

日銀金沢支店移転、跡地問題が話題に

現状でホットな話題は香林坊のど真ん中にある日本銀行金沢支店の駅西エリアへの移転とその跡地をどうするかという問題。

香林坊の中心、写真では道路の右手にあるのが日本銀行金沢支店。中心部の目立つ建物だけに、今後がどうなるか
香林坊の中心、写真では道路の右手にあるのが日本銀行金沢支店。中心部の目立つ建物だけに、今後がどうなるか

「古い建物を残すべきという意見もあれば、地場の経済界からは高さ制限を撤廃しての建替えという声も出ています。それがどうなるか。あそこに高層ビルが経つと金沢中心部の雰囲気は大きく変わるでしょう」。

ちなみにコロナ前のホテル建設ラッシュではメインストリート百万石通りの金融機関がホテルに変わっている。

農林中金金沢支店、北國銀行本店第二本館、同中橋支店、三井住友信託金沢支店、金沢東京海上ビルなどがそれぞれにホテルに変わっており、枚挙にいとまがないとはこのこと。その状況で中心部に高層ビル新築は大丈夫なのだろうか。

もうひとつ、香林坊の少し南側でも再開発の予定がある。「片町四番組海側地区第一種市街地再開発事業」で2019年に野村不動産がリリースを出している。

その時点では準備組合と事業協力に関する協定書を締結したということだった。背後に飲食店街が広がる通り沿いで、古い低層の商業ビルが並ぶエリアだが、さて、どのように変わるのか。

どのような変化にせよ、金沢を他の都市同様に再開発ビルばかりにするのでは面白くない。よその都市が失ってきたその土地らしさをきちんとキープ、その上での更新を目指して欲しいものであるが……。

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健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

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株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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