新潟県では、新潟地域と上越地域間の公共交通機関を利用したアクセスが悪いことが問題となっている。
北陸新幹線開業後の在来線の減便や、コロナ禍のダイヤ見直しで問題は急速に悪化した。
そこで、新潟県では、検討委員会を立ち上げて両地域を結ぶ鉄道高速化構想を進めてきた。昨年から今年にかけて、鉄道高速化の具体案や費用対効果の調査結果がまとまり、公表されている。
羽越新幹線開業をにらんだ国家プロジェクトが始まるきっかけとなるのか。新潟地域と上越地域を結ぶ鉄道高速化構想の進展と、現状、今後のゆくえを追った。
■ 新潟地域と上越地域のアクセス改善に向け、新潟県が検討委員会を設置
新潟県内では、北陸新幹線開業後、新潟地域と上越地域とを結ぶ在来線特急の減便や廃止が相次いだ。また、このような少ない在来線特急や、高速バスなどを利用しても自家用車を利用するよりも時間がかかる状況になっている。
具体的には、たとえば、上越地域の糸魚川駅から新潟地域の新潟県庁までは、在来線特急では2時間45分程度となっており、自家用車よりも30分近く時間がかかる。上越妙高駅から新潟県庁までも、在来線特急で2時間20分程度もかかり、こちらも自家用車の方が30分強早い。
このような公共交通機関の状況を踏まえ、県民へ行ったアンケート調査でも、新潟地域と上越地域の移動手段は、95%が自家用車を利用すると答えており、アクセスの改善が課題となっている。
そこで、新潟県では、2022年に「高速ネットワークのあり方検討委員会」を設置して、その改善方法について議論して来た。
■ 新潟上越間・鉄道高速化手法の概要
2023年には、検討委員会が議論を踏まえ、新潟上越間の鉄道高速化案として4つの案をまとめ、公表した。
長岡までのJR信越本線をミニ新幹線化する案として、直江津駅を経て内陸に入るえちごトキめき鉄道(トキ鉄)の妙高はねうまライン上越妙高駅までのミニ新幹線化(案1-1)と、同様に、直江津駅を経て日本海の海岸沿いを走るトキ鉄の日本海ひすいライン糸魚川駅までをミニ新幹線化(案1-2)がある。
その他、単純に、信越本線にトンネルを整備し曲線を減らして改良する案(案2)と、北越急行ほくほく線をミニ新幹線化し、長岡駅から柏崎駅間をシャトル化する案(案3)である。
■ 検討委員会が示した各案の費用対効果と今後の動向
今年3月には、検討委員会は、それぞれの案の概算工事費と、短縮時間の試算を示した。
工事費は、(案1-1)が最も安く、約1,200億円と見積もられた。ただ、この案だと、37分の時短効果しか得られない。
55分と最も時短効果が得られるのは、(案1-2)で、工事費も約1,500億円と試算されるが、工期が20年程度かかる。
だが、これらの案では、ミニ新幹線の車両の購入や開発が必須だ。試算されている工事費には車両の費用は含まれていない。
ミニ新幹線を利用せずに車両費を抑えるのが(案2)だが、この案では、時短効果は27分とわずかだ。
(案3)は、風の影響を受けやすい日本海沿いの路線を避けてリスクを抑える。工期も8~10年と短くて済むが、一方で工事費が約2,100億円まで膨らむ。
このように、費用対効果が明らかになってきた段階で、今年4月には、新潟県の花角知事が、定例会見で国家プロジェクトになるとの見解を示し、「高速鉄道の整備の機運を広げていきたい」と話した。
新潟県としては、羽越新幹線の整備もにらんで鉄道高速化を進めたい構えであり、必要性を強調して幅広く費用負担を求めていきたいものと考えられる。
今後、国や関係自治体を含めてどのような議論が展開されるのかによるが、在来線の工事が少ない案もある。費用負担が具体化すれば一気に鉄道高速化事業が進展することになるだろう。
新潟上越間の鉄道高速化によって、周辺地域の利便性が向上し、再開発がなされる可能性もある。議論がどのように進展していくのか、今後も注視していきたいところだ。