最終回でも実際にあった事故事例と対策を紹介していきます。知っていて作業するのと知らずに作業するのではケガのリスクも変わりますので、是非目を通していただければと思います。
【 電動工具編 】
1、電動工具で最も危険な丸鋸

回転工具の中でダントツに危険な工具は、丸鋸だと私は思います。実際、以下のような事故事例があります。
・逆歯にした卓上丸鋸で材料と一緒に指先を切断
・手持ち式の丸鋸で刃が材に食い込んだ時に、工具のトルクでキックバック(丸のこが後ろに跳ねる)を起こし、太ももの大動脈を切断、そのまま出血多量で死亡
・切断した時の屑が飛んできて目に入って失明
・手袋を付けたまま作業して、手袋が回転部分に巻き込まれ手首を切断
対策ですが、必ず手袋を外して使用してください。巻き込まれると指がなくなります。また、卓上丸鋸の使用時は、直接手で押さなくていいようにガイドを使用してください。
保管するときも、手持ち式の丸鋸の真後ろに身体を入れないでください。キックバック時に逃げられません。保護メガネの着用も忘れてはいけません。
2.回転式のハンマードリルの高トルクは危険

回転式のハンマードリルはコンクリートや石材に穴を開ける便利な道具です。その機械の特性上、硬い物を削孔する為に高トルク回転となっています。もしビットが材料に噛み込みロックした時のことを想像してください。実際に起きた事故を紹介します。
・両手でしっかり本体を抑え込まなかったために軽く握ったままの電動工具ごと手首が回転し360度回転。ボキッっと手首を折る
・長時間に渡って切削音を聞いたために難聴に
対策ですが、最近の回転工具は異常トルクが掛かった時に強制的に停止する機構がついている物があります。心配な方は安全装置が付いたものを購入しましょう。それと耳栓をしっかり着用して作業を進めましょう。
☆ハンマードリル使用風景
3.電動ハンマー

電動ハンマーでの事故には次のようなものがあります。
・斫った破片が目に入り失明
・振動作業を長時間行ったことから、慢性的な疲労が取れない、完治しない手のしびれが継続するといった振動障害
・耳栓をせず長時間斫り音を聞き続けたために音が聞き取りづらくなる・聞き取れなくなった・ずっと耳鳴りが止まらない難聴障害
音の後遺症は、年を取ってから発生します。若い時に今は聞こえるから大丈夫と甘く見ていると知らず知らず音は失われていきます。また、振動作業における振動障害も報告されています。
振動作業の作業規制は、安衛法に明確に定められています。具体的には打撃機構を有する工具は一連振動ばく露時間をおおむね10分以内とし、一連作業後の休憩時間は5分以上設けることとなっています。
また、一日の作業は2時間以内と法令で定められています。回転機構はおおむね30分以内の作業5分の休憩です。作業時は前編でお話をした防振手袋・耳栓・保護メガネを着用しましょう。
☆電動ハンマーの作業風景
4.ディスクグラインダー

ディスグラインダーでの事故には次のようなものがあります。
・鉄鋼切断用の刃を使用時に砥石が欠け目に飛んできて失明
・鉄材の切断時に火花で火傷をした
・防塵マスクを使用せずにコンクリート切断の歯を使い続け、健康診断で塵肺認定を受けた
意外と盲点なのは切断時の火傷ではないでしょうか、肌を露出しなければ防げる怪我でもあります。皮手袋( 鉄鋼作業時 )・保護メガネ・防塵マスク・長袖長ズボンを着用して作業をしてください。
☆ディスクグラインダー切断作業
【エンジン工具編】
1.エンジンチェーンソー
エンジンチェーンソーでの事故には次のようなものがあります。

・振動・音量ばく露による振動障害・難聴障害
・切断くずが目に入り失明
・切断時に誤って自分の太ももを切って出血多量で死亡
林業従事者はチェーンソーの歯が皮膚に到達しない特殊な作業着を着て作業をします。

この服には、服を切ると瞬時に繊維がほどけ、チェーンソーに絡まって歯を強制停止する機能がついています。チェーンソー作業は、防振手袋・保護メガネ・耳栓・防護服の着用をお願いします。
2.草刈り機

草刈り機での事故は身近な存在といえるでしょう。
・草刈り作業中に足元の石に気づかずに接触、反動で手元が滑り地面に落ちた。回転の勢いで跳ね返ってきて顔面を切断、20針以上縫う大手術に
・斜面での作業時に足元が滑り転倒し、回転している草刈り機が自分自身に降ってきて動脈切断、そのまま出血多量で死亡
・草刈り機で切った飛び石・欠けたチップが目に入り失明
草刈り機で危険なのは飛び石と回転体の飛来です。長い草( 80p程度 )がある場合は上から50p毎に切っていき、足元の障害を確認しながら切り進めましょう。また斜面の作業は熟練しないと非常に危険です。スパイク付安全靴・スパイク地下足袋を準備して挑むようにしましょう。

【 その他 】
・足場組立
足場の組み立てをするには、「 足場の組立て等作業主任者技能資格 」が必要になります。技能講習は特別講習より専門性がより高くなります。以下のような必要経験も求められる簡単には取れない資格です。
1.21歳以上で、足場作業に3年以上従事した経験を有する者
2.20歳以上で、大学、高専、高校、中学において土木、建築又は造船に関する学科を専攻した者で、その後2年以上足場作業に従事した経験を有する者
経験が求められるのは、組み立て作業には、強度の計算・筋交いの配置・建物に合わせての構造計算等の知識が必要だからです。素人が簡単に組めるものではありません。
足場が必要な場合は、迷わずプロに頼みましょう。強風で倒壊すれば、大きな事故につながります。
【 まとめ 】
これらの道具にはそれぞれに適切な使い方と安全のための対策がありますし、保護具も用意されています。
知識を身につけて、安全基本セットの「 保護メガネ・保護手袋( +防振 )・安全靴・長袖・長ズボン・ヘルメット・防塵マスク 」を準備した上で、DIYに挑んでください。
DIYや道具の使い方を学びたいけれど教えてもらう相手がいない場合は、講習を受ける事も視野に入れてみましょう。安全作業について詳しく聞くことができ、場合によっては資格も手に入って一石二鳥です。
安全は愛です。自分・仲間・家族を思いやることは、他の何よりも優先されるべき事項です。私の記事がDIYで人生を切り開こうと頑張っている方々のお役に立てば、土木屋の端くれとして嬉しく思います。
本日もご安全に!!
