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ハトへの餌やりが信頼関係破壊に当たるとされた裁判例(最新裁判例 その4)

山村暢彦さん_画像 山村暢彦さん 第62話 著者のプロフィールを見る

2023/10/10 掲載

1、屋外のハトへ餌やりを続けていた裁判例

さて、大家さんの知っておくべき裁判例シリーズ第4回は、迷惑行為に基づく立退き系の裁判例です。屋外のハトへと餌やりを続けていたという事案なので、ペット禁止特約にも関連する部分もあるかもしれませんね。

ハトだけでなく、猫への餌やりなども同様にトラブルになる事案です。大家さん側としては、なかなかハードルが高いという嫌な現実を目にするかもしれませんが、知識も武器になると信じて、裁判例を見ていきましょう。

2、事案紹介

今回の事案は次のようなものです。(東京地判令和3年3月25日ウエストロー・ジャパン)

(1)立退請求事件の基本は賃料滞納「3か月分以上」かどうか

まず、簡単に基本を思い出しましょう。賃貸人と賃借人は、継続的な関係性であり、賃借人は違約から解除されると住む場所を失うという観点から、「信頼関係破壊の法理」に守られ、軽微な違約では追い出せない、という裁判例が確立しています。

賃貸借契約を大家さんの側から解除するには、「信頼関係を破壊するに足りる」ほどの重大な違約があった場合でないといけないとされています。

この法理に賃借人は守られているため、基本的に大家さんの側から追い出せるのは、賃料滞納「3か月分以上」の場合です。

そして、迷惑行為、ペット規約違反や、無断転貸、老朽化による立退き要求などなど、いずれも、法的相場としても、証拠収集が難しい点でも立退きは難しい、というのが立退法務の基本です。

(2)裁判を起こさざるを得ないほど、迷惑行為が継続していた

さて、では事案の概要を見ていきましょう。

・賃貸人X(原告・個人)は、平成22年5月、賃借人Y(被告・法人)へと賃貸借契約を締結し、物件を引き渡した。

[約款概要]
・禁止行為等:本件建物において危険な行為・騒音・悪臭の発生その他近隣に迷惑及び共同生活を乱す行為や衛生上有害となる行為等をしてはならない。
・無催告解除:賃借人・使用人の行為が、本件建物内の共同生活の秩序を著しく乱すものと認められる場合には、賃貸人は、何ら通知、催告を要せず即時に本件賃貸借契約を解除することができる。
・Yの職員(支配人A)、Y1(Y代表者)は、平成29年頃から、本件ビルの周辺でハトに餌を与えるようになり、多数のハトが飛来するようになった。
・その結果、糞や羽が散乱し、通行人の衣服に糞が付着したり、通行人が歩道上にいるハトを怖がって車道を通行することを余儀なくされたりした。
・近隣の飲食店において衛生上の支障を生じたり、同店の店主等がAと、ハトの飛来を巡って口論となったり、Xに苦情が寄せられるようになった。
・Xは、行政や警察に相談し、平成29年9月、警察署員がAらに対しハトに餌を与えないよう要請したが、その後もハトへの餌やりをやめなかった。

箇条書きで事案を整理してみましたが、いかがでしょうか?どうしてもその当時の状況等は、推測でしかお話しできないのですが、相当程度ひどく、警察への要請をしなければならないほどの悪影響が生じていたようです。

ただ、ここまでの証拠を収集し、裁判を起こさざるを得ないほど、迷惑行為が継続していたので、相当ひどかったのではないかと推測されます。

(3)裁判所の判断は「信頼関係破壊」

すでにタイトルで結論は言ってしまっていますが、裁判所の判断を見てみましょう。信頼関係破壊=立ち退き請求を肯定しています。

・ビル近隣には、各種の事業所、商店、飲食店等が密集して存在している地域であり、多数の苦情が寄せられていた。
・警察署員の要請、近隣店主との口論などにより、近隣への迷惑を認識していながらも、餌やりをやめなかった。
・さらに、訴訟後も、「(ハトに対する)責任と動物愛護の観点」と称して、餌やりを継続していた。
・「近隣に迷惑をかけ、共同生活を乱す行為として、本件賃貸借契約約款に違反しており、かつ、その程度は著しく、当事者間の信頼関係が破壊されたものというべきである。」
・「契約約款に基づき無催告でした本件解除は、催告をしなくても不合理とは認められない事情があるものとして、有効である。」

(4)数年単位の証拠+警察要請まで発展したことがポイント

原文も長いので、事実と裁判所の判断のポイントを箇条書きで抜き出してみましたが、いかがでしょうか。今回は、東京裁判所の管轄ですので、商業性の高いオフィスビルだった可能性があったようです。

また、記録から読み取ると4年前後トラブルが継続していたにもかかわらず、餌やりを続けており、訴訟が始まった後にも「責任と動物愛護の観点」と称して、餌やりを続けていたなど、かなり強硬な姿勢だったようですね。

なかなか立ち退き請求が認められづらい迷惑行為による立ち退き請求、そのなかでも近隣のハトへの餌やりのケースですが、影響の大きさのわかる証拠が数年単位で残っており、近隣テナントとのトラブルの記録、や警察による要請も無視したという記録、まで残っているのが、さすがに立退請求が認められたポイントではないかと思います。

他の迷惑行為で立退請求を肯定した裁判例でも、「数年単位の証拠+警察要請まで発展」したケースが多いように感じます。

3、大家さんの心構えとして、ダメだと諦めずに証拠を残すことが必要

さて、この裁判例から得る教訓ですが、この裁判例自体を見ると、「ここまで酷くならないと裁判所は助けてくれないのか」と気が重くなるかもしれません。

それでも迷惑行為で立ち退き請求が認められていることは良いことです。この裁判例が存在することで、今度は、仮にここまで長期化せずとも、本件裁判例と類似の状況だと主張し、少し短い期間でも勝訴できる可能性が出てきます。

たとえば、仮に期間が半年~1年程度の影響でも、再三餌やりをやめるように警告してもやめず、また近隣住民や近隣テナントとのトラブルが生じ、警察への介入まであった事案なら、同様に勝訴判決がとれてもおかしくないかと思います。

このように裁判所というのは先例主義ですので、少しずつ裁判例が積み重なって、「裁判例によるルール」というのが構築されていくのです。

もっと個別の視点でいえば、「ダメだと諦めずに、証拠を残す」というのが必要な姿勢だと思います。仮に、もっと軽微な段階で弁護士に相談に行っても、「証拠が少なく難しいです」という回答であったとしても、長年積み重ねれば結果につながることもある、というのを知っておいて損はないと思います。

4、総括

さて、今回も比較的新しい裁判例から、大家さんの悩みの種でもある迷惑行為による立ち退き請求の裁判例をご紹介させていただきました。ハードルが高いものの、大家さん側の勝訴事例ですので、頭の片隅にでも残していただけると嬉しく思います。

最後にお知らせです。下記のように、不動産大家さんのトラブル専用のホームページを公開しています。興味がある方はブックマーク等お願いいたします!( ※おそらく、自然検索では辿り着かないと思われます・笑 )

https://fudousan-ooya.com/

では、また次回もどうぞ、よろしくお願いいたします。

 

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

山村暢彦さん

山村暢彦さんやまむらのぶひこ

弁護士
不動産投資家

不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • 祖父母の代からの大家の家系に生まれる。
    古い借家で家賃滞納などのトラブルを経験し「不動産・相続」の悩みを解決したいという思いから弁護士を志す。
    自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。

    多数の不動産会社の顧問弁護士を務めており、また、そのネットワークから建築・リフォーム会社、運送会社等の顧問先企業の数も増加している。
    昨今、「働き方改革」の反面、労働トラブルが増える中で、企業側の労働者問題の対応が増加しており、企業研修などでは「副業」について話す機会も増えている。

    趣味はウイスキー、読書、靴磨き。
    大勢でお酒を飲むのも好きだが、一人の時間を作り、頭の整理をする時間も好き。
    好きな言葉は、「運と縁」。

    山村法律事務所
    神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2 ニュー本町ビル6階

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