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無断ペット飼育、転貸、用法違反、追い出しできる?!

山村暢彦さん_画像 山村暢彦さん 第7話

2021/6/22 掲載

自ら大家としての経験も有する、不動産・相続トラブルに注力する弁護士の山村が、不動産トラブルを予防するために、実話を基にした解決事例をご紹介します。

1、「出ていって欲しい!」と良くあるご相談

今回は、アパート経営において頻繁に起こる退去トラブルについて、大家さんからご相談の多いケースを解説します。

「 ペット禁止なのに、猫を飼っているようなんです 」
「 Aさんに貸しているのですが、どうやらBさんに又貸ししてるようなんです 」
「 住居用として貸し出しているのに、どうやら事業所としても利用しているようです 」

このように、ペット禁止違反、無承諾転貸、目的外の用法遵守違反、これらは、法的には、契約書ないし民法に借主側が違反しているケースが多いのですが、だからと言って簡単に立退を求められないというのが実務動向です

どのような問題があるのか、一つずつ見てきましょう。

2、それぞれの法律の定めと実務動向

1)ペット飼育の禁止

ペットを飼っても良いのかどうか、これは賃貸借契約書で、当初の入居時に定めておく事柄です。室内でペットを飼うと、一般的には建物の損耗も激しくなります。そのため、ペット飼育可能で入居させるのか、そうでないかは非常に重要な事柄です。

昔ながらの契約書ですと、この点が明記されていない契約書もあると思います。予防の観点から、ペット飼育可能にするのであれば、@契約書の特則として、「 ペット飼育規約 」などを定めておく、A「ペット」と包括的に記載するのではなく、「犬、猫」など具体的に定めておくことなどが重要です。

そもそも定めがないと民法で、ペット飼育についての規定はないので、契約違反と言えません。また、抽象的に「 ペット 」と記載しておくのではなく、できる限り具体的に記載しておくことも大切です。

たとえば、「 犬、猫なら良いよ 」というつもりだったのに、大きなニシキヘビや、タランチュラを飼育されていたとしても、責任追及できない!なんて事態になってしまうのです( 極端な例ではありますが )。

2)又貸し=転貸の禁止

又貸しの禁止については、民法612条で、明確に定めがあります。

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

また、一般的な賃貸借契約書にも記載があることが多いです。特別事前対策に気を遣わなくとも、一般的には禁止する旨の契約になっていると言えるでしょう。

賃貸借契約は、物を貸す契約である以上、誰が使うのかが非常に重要なポイントです。真面目な人、誠実な人だと思って貸していたのに、実際は、乱暴な人に又貸しされていたとなると、話が違ってきます。

そのため、民法自体でも、又貸しは原則禁止、認めるなら、特別に大家側の承諾を取りなさいよ、という定めになっています。

3)目的外利用、用法違反

一般的な賃貸借契約のひな形であれば、どのような目的で利用するのか、居住用であれば、事業利用を禁止する旨の記載があると思います。

これも転貸と同様で、居住利用であれば、頻繁な来客等はないことが想定されますが、事業用利用であれば、不特定多数の人が頻繁に出入りし、周囲の住環境の悪化、セキュリティが低下するという側面もあると言えるでしょう。

最近のひな形であれば、この点も対策してあるものが多いと思いますが、一度自分の賃貸借契約書ではどのような記載になっているか確認してみましょう。

3、現実的な対処の難しさ

以上のように、ペット飼育違反、転貸違反、用法違反は、契約書等での対策をある程度行えば、借り主側に「 違反があった! 」と主張できるように対策することができます。

とはいえ、ここから、実際に、立退を求められるか否かという点には、@立証できるかどうかというハードル、A違反していたとしても、「 信頼関係を破壊するに足りるほど 」重度の違反かどうかというハードル等があります。

1)ペット飼育違反

実際に双方の書面や写真等をみて判断していく裁判官の立場をイメージしてみてください。「 自宅で猫を飼っているのか 」「 近所にいついている猫に餌をやっているだけなのか 」その区別を判断できるでしょうか?

このような違反を行う方ですから、保健所に正式に届出をしてしっかりとペットの世話をするというよりも、近所の野良猫を集めて世話する、ということのほうが実際には多いと予想されます。

よほど継続的に証拠を集めていかないと、「 猫を飼っていた 」と認定できるだけの証拠を集めることは難しいのです。

特に賃貸関係であれば、部屋の中の様子を盗撮するわけにもいかないので、部屋の中の証拠を集めることはできません。そうすると、部屋の出入りやせいぜいベランダ等の状況証拠を集めていくほかありません。

2)転貸違反

転貸についても、基本的に部屋の中のことを把握するのは難しいので、入退去の様子や管理会社が尋ねた場合に対応した人など、証拠を地道に集めていく他ありません。

怖いことを言うと、「 黙って転貸されていても気づかない 」ということもあると思います。やはり、転貸のケースでも証拠を集めるのが非常に難しいのは想像してもらえたでしょうか。

仮に他人が管理会社の対応に出たとしても、「 一時的に家族がきていて対応した 」「 一回泊まっていた限りです 」などと言い訳されれば、証拠としては弱いと言わざるを得ません。

3)用法違反

居住用として貸していたのに、事務所、個人事業主の事業所として利用されているというケースでも、その分岐点は非常に難しいケースが多いです。

居住用の物件なのに会社の登記をいれて、頻繁に来客がくるようなショールームを作っている、なんて明確なケースはほとんどありません。

あるとしても、外部的には実態の残らないような形で事業利用されるケースが多く、ある程度外部の人が訪問してきているようでも、「 友人だ 」と言い逃れされると追及するのが難しいケースも多いです。

4) 「 信頼関係を破壊するに足りるほど 」重度の違反か

各種問題に共通するのですが、明確に違反であり、その上で重大な違反だと言えるケースは非常に稀です。賃貸借契約関係は、別記事でもご紹介したとおり、基本的に「 賃借人有利 」に修正されます。そのため、仮に違反があったとしても、「 重大な違反だ 」とまで言えないと解除できないのです。

ペット飼育違反などで解除が認められたケースでも、相当周りに迷惑をかける方だったらしく、継続的に何匹の猫を飼育し、糞尿をまき散らしていたようなケースでやっと認められていました。大人しく小さな猫を部屋で飼っていたようなケースでは、解除が認められないのが裁判例の傾向です。

転貸や事業所利用のほうも同様に、そもそも立証が難しく、さらに立証が難しいような微妙なケース=言い逃れしやすいようなケースが多く、正面から転貸違反による解除や、用法違反による解除を認めた裁判例は非常に少ないです。

4、現実的な大家さんの対策法

以上のとおり、別記事で開設した「 賃料不払の立退 」以外は、法的に違反があっても、その責任を追及するのは非常に難しい実務動向があります。

少なくとも、@入居時の契約書で、それらの対策をしておくというのは必須で、Aその上で、仮に違反が認められたら、「 違反を認めた事実を書面に書かせる 」など、できることを地道にやっていく他ありません。

最初から喧嘩腰でまったく非を認めない人もいますが、一般的には、「 ごめんなさい。次からやりません 」というような方もいますから、そういう方には 反省を促し、「 次に違反したら退去します 」などの念書をとって、少しずつ状況証拠を積み上げていきましょう。
 
今回みたように、不動産賃貸業を営む上では、借り主有利に判断される傾向が非常に強いです。そのため、大家さん側としては、事前の情報収集と、いざとなったら早期に専門家に相談するということを肝に銘じて、リスクを抑えるアパート経営に励みましょう!

プロフィール

■ 山村暢彦さん

山村暢彦さん

弁護士
不動産投資家

不動産大家トラブル解決ドットコム
https://fudousan-ooya.com/

事務所 ホームページ
https://fudousan-lawyer.jp/

フェイスブックページ
https://www.facebook.com/profile.php?id=100011023749150

不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。
不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。
不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。


■ 主な経歴

祖父母の代からの大家の家系に生まれる。
古い借家で家賃滞納などのトラブルを経験し、「不動産・相続」の悩みを解決したいという思いから弁護士を志す。
自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。

多数の不動産会社の顧問弁護士を務めており、また、そのネットワークから建築・リフォーム会社、運送会社等の顧問先企業の数も増加している。
昨今、「働き方改革」の反面、労働トラブルが増える中で、企業側の労働者問題の対応が増加しており、企業研修などでは「副業」について話す機会も増えている。

趣味はウイスキー、読書、靴磨き。
大勢でお酒を飲むのも好きだが、一人の時間を作り、頭の整理をする時間も好き。
好きな言葉は、「運と縁」。

山村法律事務所
神奈川県横浜市中区本町3丁目24−2 ニュー本町ビル5階C号室

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