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不良債権と銀行員のクソみたいな言い訳。投資をする上で最も愚劣な行動とは?

猫山課長さん_画像 猫山課長さん 第3話 著者のプロフィールを見る

2024/5/1 掲載

もう15年ほど前になるけど、忘れられないシーンがある。
銀行のクソさを間近で見た瞬間だ。
当時の僕は支店の融資担当者で、ある不良債権先の担当をしていた。

その会社は不動産会社で、仲介だけでなく自社物件も保有するなど、地域において老舗だった。不動産会社ではよくあることだが、そこの会長は地域の名士と認識されていた。

しかし、業容は最悪だった。バブルのころに仕入れた不動産が完全に足を引っ張っており、巨額の債務が一向に減らない状態が続いていた。毎月の利払いに苦しみ、上がらない業績が社内の雰囲気をより悪化させているなど、会社は徐々に傾きを増しているように見えた。

同社の課題は明白だった。不良化した不動産資産の売却による債務圧縮だ。それ以外にない、というか、それを行わなければ次の手が打てない、そんな状況だった。

もちろん、簡単に売れるわけがない。売れるならとっくに売れていたはずだ。そこにあるのは、借金の担保になっているから叩き値で売れないだけでなく、土地として魅力がない不良在庫と化した悪夢のような土地なのだ。

借金をまともに返せなければ、毎月の返済額を減免するしかない。
よって、同社は返済条件の変更を毎年行なっていた。いわゆる「条件変更」だ。

条件変更はたいていの場合、貸し付けている金融機関全行の同意が必要になる。1行だけがより多く回収することは許されない。貸付残高の割合で按分して返済額を割り振ることになる。

今年はどんな返済内容とするかを決めるのは、バンクミーティングと呼ばれる会議だ。ここには借入をした企業の役員ほか、貸付をしている全行が一堂に会する。

■銀行員のクソみたいな言い訳

ある年、僕はこの企業の担当者として会議に出席した。メインバンクであるので会議を仕切る必要がある。

その時、A銀行の担当者が発言をした。

「うちの借入ですが、もっと返済額を増加してもらえませんでしょうか? でないと条件変更に同意しかねます。」

面倒臭いことを言い始めた。どう切り返すか考えているうちに、80歳近い会長がその担当者に向かって喋り出した。

「そう言うけども、そもそもオタクの借金はウチが当時の支店長から、『この土地を買ってください。融資はしますから』って言われて仕方なく買った時のものなんだよ? ウチはそちらの不良債権処理を手伝ったんじゃないか。」

この場で言うことではない。しかし、言いたい気持ちはよくわかる。
それに対し、A銀行の担当者はこう返した。

「それは昔の話です。今さら言われても困る。」

正論。全くの正論である。
しかし、同時にクソみたいな言い訳である。このクソ野郎は、骨の髄まで銀行のクソ理屈に染まっている。

当時の支店長が不良債権を処理できて助かったということは、A銀行もそれなりに助かったはずだ。その恩を「昔の話」として賞味期限切れであると主張する。実にバンカーらしい仕草だが、クソなことに変わりはない。

しかし、A銀行の担当者を責めるのはお門違いだ。悪いのは、会長だ。それは間違いない。

塩漬けになるような土地を頼まれたからといって融資を受けてまで購入した自分が全て悪い。

意思決定に、他人の都合を介在させた。

その経営者としての脇の甘さが、10数年の時を超えて牙を剥いているのだ。

■不動産はとても特殊な資産

不動産はとても特殊な資産だ。基本的に高額であり、持っているだけで税金などのコストがかかってくる。だからこそ運用してお金を産んでもらいたいが、そう簡単にはいかない。

お金を産みやすい不動産は高価になり、利回りが低下するからおいそれとは買えない。逆に高利回りの不動産は何らかの懸念材料を抱えており、これまた買うのを躊躇してしまう。

最悪なのはお金を産まない状態で保有し続けることで、持っているだけでどんどんお金が溶けていく。そして、不動産は誰かに押し付けない限り、放棄することが極めて困難だ。不動産はその文字通り「不動」であることにより、他の資産とは大きく性格を異にしている。

冒頭の不動産会社だけではなく、平成中期は塩漬けの不動産に苦しむ会社が少なくなかった。経営改善計画を作成する際に、「塩漬け不動産の売却」を計画に入れることがよくあったが、売れた試しがなかった。

時は平成不況ど真ん中で、積極的に不動産投資を行うプレイヤーは見当たらず、好景気時に迂闊に購入した不動産が完全に再生の足を引っ張っていた。

こんな背景から、「不動産を保有することのリスク」は日本で過剰なまでにクローズアップされている。不動産=リスクの方程式が完全に染み付いてしまっているので、好景気になってもなかなか不動産に対する負のイメージを払拭することができない。

それは、平成不況を間近で見た者たちが共通して抱える呪いだろう。
だから、多くの日本人は、簡単に不動産投資に踏み切ることができない。

(この話をすると、不動産投資を始めている人から「そんなことはない」と言われることがあるが、それは彼らが自らの類まれな行動力に無自覚な人たちだからだ。多くのフツウの日本人にとって、不動産投資は興味はあっても恐ろしいものである)

考えてみればすぐわかることだが、融資を受けて不動産を購入する場合、対象不動産は担保に入れることとなる。土地部分の割合によるが、返済が進んでいれば不動産を売却により融資はほぼ返済できてしまう可能性が高い。

例えば、創業して飲食店をする場合、テナントを借りて開業するとしたら担保に入れるものは何もないパターンが多い。その状態で事業に失敗したら、売って返済できるものはほぼ何もない。

一般的には不動産投資よりも飲食店開業の方が好意的に受け止められるが、安全度からしたら不動産投資の方がよほどマシだ。

しかし、平成不況で染み付いた偏見と、代金の高額さで不動産投資は危険と感じてしまう。自分でも躊躇してしまうし、周りからも止められることになる。家族ブロックなどは無視できないほど強力だ。

そんな中で、私たちは不動産投資に対し、自己決定していく必要がある。
そこに必要なのは、自己決定に対する自己責任の自覚だ。

■不動産投資を行う上で最も愚劣な行動とは

不動産を購入した以上、そこから利回りを取り出すのは自分の仕事だ。
もちろん、アパートであれば管理会社が客付けや入居者対応をしてくれるかもしれないが、利益や投資に関する決定を下すのはオーナーの仕事になる。

この世界の常として、全ては変化していくから、時代に合わせて決定を下し続ける必要がある。そして、致命的な間違いを起こさないよう細心の注意を払う必要がある。

その際に、最も愚劣なのは誰かに決定してもらうことだ。
そこには「誰かの都合で決定させられる」ことも含まれる。

自分の名義で借入をし、不動産を買う以上、全てはあなたに帰属する。利益も損も、あなたのものだ。決断と結果が紐づいているからこそ、真剣に検討することができる。もしそこに誰かの意志や事情が介在したとしたら、もう自分事として検討することはできない。

「自分で決めたんじゃないから」

そんな他責がどこかに入り込んでしまう。
それこそ、あの惨めな会長のように。

不動産を購入することは、ビジネスを開始することだ。責任から逃げても何とか給料がもらえてしまう会社員の感覚ではうまくいかない。

どんな不動産を購入するか、どう運用するか。決めるのは自分だ。それを誰かに任せてはいけない。任せた瞬間に、言い訳の余地ができてしまう。甘さが顔を出す。それはいつの日か、あなたを後ろから刺すだろう。

好景気に酔って誰かの都合で決定をしてしまい、業況が悪くなったら誰かのせいにするような連中に、あなたはなる必要などないのだ。

人の意見は聞いてもいい。でも「あの人が良いって言ったから」はダメだ。調べ尽くして、考え抜いて、自分で決める。決定に不純物を介在させてはいけない。そうすることで初めて、あなたはビジネスを自分事として受け入れることができる。

そうでない経営者は、世を恨み退場して行った。そんな人を何人も見てきた。
結局、生き残るのは、自責思考の人だけだ。
そのためには、自分で決めることだ。決定を誰かに渡してはならない。

 

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

猫山課長さん

猫山課長さんねこやまかちょう

金融機関勤務(課長)
不動産投資家
Note作家
(株)SUNABACO相談役

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経歴
  • 地方在住の限界サラリーマン

    勤務先の金融機関で社内初の「副業」許可を取り、新築アパートを購入

    Note作家をはじめとした様々な副業に取り組んでいる

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