福岡市博多区にある、私が理事を務める築49年の区分所有マンション理事会での議題。
「 トイレが詰まったので業者に修理を依頼した。かかった費用22,000円は管理組合が負担せよ 」と要求があったという。
ある部屋の賃借人が、「 トイレの水を流そうとしたら詰まって流れなかったので業者を呼んで修理した 」という。
「 詰まった原因は古い排水管だ。排水管が錆びて、それに汚物が引っ掛かったから発生した。排水管は共用部なので、管理組合に管理責任がある。だから今回の修理費は管理組合が負担すべきだ 」という。発生から1カ月近くたってからの要求だった。その理由は「 出張で不在がちだから 」だという。大家には話を持ち込まず、管理人経由で管理組合に申し入れたようだ。
「 2万円くらいだったら払えばいい 」という理事が多かったが、私は事実関係の調査を提案した。
理由は、排水管の不具合ではないと思ったからだ。排水管は数年前に交換したばかりで、老朽化は考えにくいのだ。
また、老朽化や施工不良が原因ならば再発するので、不良個所を調査して対策をとる必要がある。もし、排水管の老朽化が原因であれば他の部屋でも発生する可能性がある。そうであればその都度コストが発生する。だからこの際、内部に劣化がないことを確認しておいた方がいい。
それと、あまり考えたくはないことだが、この話を聞いた別の部屋の居住者が同様な請求をしてくることも考えられる。だからこの際、きちんと原因を調査するべきだと主張した。
■ 節水型トイレは、使用頻度が低いと詰まりやすい?
また、発生から要求まで時間がかかったのは「 不在がちなので 」という部分が引っ掛かった。
節水型トイレは、不在がちなどで使用頻度が低いと詰まりやすいと聞いたことがある。節水型トイレは水を流す量が少ないので、トイレットペーパーや汚物が竪管まで流れないことがあり、長期不在時にそれらが乾いてダムのようになるのではないかと私は考えている。
また、リモデル便器であればさらに詰まりやすい。リモデル便器には専用アジャスターといって、既存の排水管につなぐ配管がある。途中で折れ曲がっていて、しかも細かったりするので詰まりやすくなる。もしリモデル便器であれば管理組合の責任ではないだろう。
そして、調査方法を考えた。
まずは便器の確認。便器を取り外してリモデル便器か否かを確認。リモデル便器でなければ、排水管がトイレ内から見えるのでカメラで撮影し、管の内部を確認する。これで劣化や施工不良が確認できる。劣化や施工不良がなく水が溜まってなければ配管に問題はないことになる。
■ 現地の調査でわかったこと
調査当日。トイレの業者さんと排水管内を撮影する業者さんと現地トイレに赴く。やはり、リモデル便器だった。排水管( 右側の丸い部分の下 )に行くまで2回折れ曲がっているし、細い。
トイレの業者さんは、「 管が細いし、折れ曲がって勾配も取れてないのでここが問題個所で間違いないです。紙質が悪かったり、使用頻度が低かったりすると詰まります 」という。
しかし、賃借人は納得しないかも知れないので、排水管内も調査する。トイレの排水は階下の部屋の天井の上にある横引き管( 横方向の配管 )を流れ、竪管と呼ばれる垂直の排水管に流れる仕組みだ。
トイレ内のアジャスターはコーキングで固めてあった。配管がうまく収まらず、コーキングで固めたようだ。配管が正規に収まってないのもアジャスターでの詰まりを助長しているかもしれない。コーキングして収めているということは、アジャスターを外して管内を確認すると復旧が面倒なことになる。
幸いなことに今回は階下がテナントで、しかも内装工事中で配管がむき出しだった。そこで、階下に降りて横引き管の端部からカメラで撮影することとした。また、目視でも配管をしっかり確認した。
横引き管にカメラを入れて撮影した結果、問題の部屋の下は水がなかった。つまり、ちゃんと排水されていることが確認された。
念のためその先の竪管( 縦方向の排水管 )まで撮影。一部に少し汚水が溜まっているところがあったが、問題ないレベルだという。しかも横引き管は塩ビだったので、錆もなく老朽化は見られなかった。
これらの調査の結果、何か流れにくいものを流したか、不在がちで使用頻度が低いため、汚物等がリモデル便器のアジャスターに詰まったということが「 プロにより 」証明された。
■ 再発防止策とDIYの効用
原因がわかったら次は再発予防だ。賃借人には「 紙を流すときは大便用のレバーを使ってください。長期不在の後は先に水を流してから使ってください。また、もし詰まったらラバーカップで吸い出してください。アジャスター部のつまりであれば割と簡単に流れるようになります 」とお伝えすることにした。
プロも、「 そういうアドバイスは的確ですね 」と言ってくれた。
さらに管理室にはラバーカップを置いて、詰まった時には使い方を教えて貸し出すようにした。
私はよくDIYをする。DIYをしていて何か事象が発生した場合は、その原因を考える。そして対策を考える。とりあえずの処置だとまた再発するからだ。
今回の事象も、最初に対応した業者がちゃんと原因を説明できていればそれで済んだ話だっただろう。DIYのメリットはコスト削減だけではない。そこで得たノウハウはこんな場面でも役に立つ。