• 完全無料の健美家の売却査定で、できるだけ速く・高く売却

×

  • 収益物件掲載募集
  • 不動産投資セミナー掲載募集

「商売童貞」を卒業せよ。アパートを建てた経験は20年の会社員人生の学びを一瞬で超えた

猫山課長さん_画像 猫山課長さん 第2話 著者のプロフィールを見る

2024/4/3 掲載

偉そうな上司がいる。
でも、その上司だってサラリーマンだ。
なら、「商売童貞」じゃないか。何を偉そうに。

私は金融機関に20年以上勤務しており、役職は課長で、支店長と呼ばれる人と同格の立場にあります。そう聞くとなんだか偉い人のように聞こえるかもしれませんが、たいしたことはありません。

体質が古い会社であるため、長く勤務すればそれなりに役職は上がっていくものです。その証拠に、ろくに経費すら使う権限がありません。課長である私の決済権限を聞いたら、きっと驚かれると思います。

とはいえ、金融機関の支店長クラスですから、取引先の社長などから頭を下げられることもあります。

私が支店長をしていたとき、融資先の会社の社長A氏に会食に誘われました。相手は50歳を超えており、そのとき私は42歳でしたから相当に年上の経営者です。

A氏は、一流大学を卒業しキャリアを重ねて地元に戻り、会社を立ち上げました。医療福祉関係の会社を立ち上げた理由は地域貢献の部分が大きく、その志には頭が下がる思いがします。

また、A氏はとても勉強家で、常に学習を欠かさず、真摯な姿勢で経営に向かっている人物です。はっきり言って、こちらから指導することなど何もない人物であり、逆に教えを請いたくなるほどです。

そんなA氏からの会食の申し出を断ることができず、承諾してしまいました。

会食の時間が近づき、私は指定されたお店の暖簾をくぐりました。
お店の人に案内され、部屋に入ると、なんとA氏が正座して待っているのです。

私は、正直ドン引きしてしまいました。
A氏はずいぶん年上であり、立派すぎる経営者です。そんな相手が、正座して私を待っている。

もちろん、こちらは融資をしていますから恩があると感じるのは当然でしょう。融資が止まれば経営は傾きますから、そのキーマンである私を厚遇するのは当たり前かもしれません。

しかし、彼は経営者であり、私は会社員です。そこには、とてつもなく大きな差がある。なのに、いま逆転現象が起きてしまっている。

消しゴム一つ自分で売ったことのない私は、混乱してしまいました。
料理の味など、何も覚えていません。

今は随分と変わってきましたが、ある時期まで、会社が融資を受ける際に、代表取締役が連帯保証人になるのは当たり前のことでした。

もし会社が倒産すれば、代表取締役は会社に代わって返済しなければなりません。ただ実際は、会社と社長は一体ですから、両方とも同時に破産するパターンが多いです。

社長は会社を経営します。もし失敗すれば破産してしまいますから、それこそ必死で経営します。全ての結果責任は会社に帰結しますが、会社=社長ですから、最終的には社長が全てを背負うことになります。

日々の業績が、自分と家族の未来を左右する。そして従業員の未来もその肩に乗っています。社長という存在は、信じられない重圧の中、日々決定を繰り返しているのです。

その一方で、会社員は社長ほどの責任を負うことはありません。

会社員は決まった時間に出勤し、決まった時間働き、退勤していきます。もちろん各人に与えられた仕事があり責任もありますから気楽なものだとは言えません。

しかし、会社員は会社が倒産したとしても、責任を取る必要はありません。会社に代わって借金を返済する必要もなく、代表して謝罪する必要もありません。社長が背負っているものと比べたら、何も背負っていないも同然です。

私は課長ですが、同時に会社員です。社長ではありませんし、オーナーでもない。なので、真の意味で自分の責任で仕事をしているわけではありません。

普段は偉そうに各種サービスを売ったり、融資をしたりしていますが、それは自分の責任で売っているわけではなく、自分の身銭を切っているわけでもありません。

そんな私が、自分の責任で商売をしているA氏のような社長よりも偉いなどということはありえない。

あなたにも、嫌いな上司がいると思います。
いつも偉そうにして、上から目線で、全てをわかったような物言いをする上司などどこにでもいるでしょう。私の会社にもいます。

しかし、そんな上司も経営者でなければ、あなたとそこまで変わりません。どんなに偉そうなことを言ったところで、自分の責任で消しゴム一つも売ったことのない「商売童貞」に過ぎないのです。

童貞同士が想像の中で分かったような顔をして語っている。
会社で日々行われているのは、そんなコントなのです。

最終的に責任を負うものこそが、自己決定をすることができます。
それ以外の社員の自己決定など、極端に言えば児戯に等しい。

会社と自分と家族と、そして社員の未来を懸けて自己決定していく。
それこそが社長の仕事であり、真に価値がある行為です。

私は、そうありたいと願いました。どうせ仕事をしていくのなら。
自己決定をし、その結果を自分で受け止めていく。

そうして初めて「仕事をした」と言えるのではないか? 商売について語れるのではないか? A氏のような社長たちと同じ目線で語れるのではないか? 私は、そう考えました。

自己決定をできる領域を作り、広げていく。
地方で社畜として働く私は40代になって、そんな挑戦を始めました。

本業を続けながら、自己決定できる領域を作るには副業が一番です。というか、それしかありません。そして、本業に差し支えが出ない副業という視点でいくと、不動産賃貸業は理想的です。なので、私はアパートを建てることにしました。

アパートの建築は、自己決定の連続です。
建築する土地、部屋数などの規模、構造、間取り、クロスに至るまで自己決定の洪水に見舞われます。そして何より、多大な借金を背負うことになります。

簡単に人生が壊れてしまうような、信じられないくらいの高額な借金。いったん借りてしまえば、後戻りはできません。「やっぱりダメでした。ごめんなさい」で済まないことは自分がいちばん知っています。

そんな重大な決断を、他の誰でもない自分の責任で自発的にしていかなければならない。正気の沙汰とは思えません。
しかし、それこそが自分が望んだ、どこまでもリアルな商売の実感なのです。

不動産賃貸業を始めたことにより、私は大きな自己決定を体験しました。それは、これまで20年以上やってきた仕事の全てよりも、私を変えてくれました。

大きな資産と、それと同等の大きな負債。それらは私だけの肩に乗っています。それは時々深く食い込んで不安になりますが、不思議なことに後悔からは無縁です。

自分の責任で消しゴムを売るどころか、いきなりアパートを新築した私は、おそらく会社の中では異質な存在です。私ほど多くの負債を背負っている人間は社内には他に存在しないでしょう。

ならば、会社内で私がもっとも商売についてリアルな体験を持っていると言えるはずです。

うちの経営陣は雇われ経営者ですから、会社がどうなっても金銭的保証をする必要はありません。なので、実質的には会社員と変わりません。彼らも商売童貞でしかないのです。

私だけが、自分の責任で商売をしている。
そんな自信は無意味ですし、偉そうにしたところで敵を増やすだけです。何の価値もないのかもしれません。

けれど、顧客である社長に、本当の意味で寄り添えるようになったのは間違いありません。少なくとも私は、「商売童貞」ではないのだから。

私はこれからも、自己決定の機会を増やしていく。
偉そうな上司を負かすためではなく、自分の成長と経済的自由のために。

「商売童貞」を卒業した私は、知ってしまったのです。
底もないけれど天井もない。こちら側の世界の面白さを。

無料会員登録

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

アクセスランキング

  • 今日
  • 週間
  • 月間

プロフィール

猫山課長さん

猫山課長さんねこやまかちょう

金融機関勤務(課長)
不動産投資家
Note作家
(株)SUNABACO相談役

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • 地方在住の限界サラリーマン

    勤務先の金融機関で社内初の「副業」許可を取り、新築アパートを購入

    Note作家をはじめとした様々な副業に取り組んでいる

閉じる

ページの
トップへ