経済不安や金融不安、円安により価格が高騰
2020年は1グラム当たり6000円台だったのが、2024年に入り1万円を突破した金価格。アメリカをはじめとする欧米のインフレや需要の高まり、円安などが影響して、その価格は史上最高値を更新し続けている。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東の緊張の高まりなど地政学リスクも価格を押し上げている要因だ。
金は世界共通の実物資産で、通貨と異なり総量に上限がある。インフレで通貨の価値が相対的に下がるのに対して、モノである金の価格は上昇するのが特徴だ。
また、今後アメリカで利下げが実施されるとドル買いは一服し、資金の一部は金に流れるだろう。景気の失速が顕在化した中国でも投資資金は不動産から金へとシフトしつつある。このように、価格上昇の理由を探せばきりがない。
こうした状況下、その割安感から注目されているのが金と同じく貴金属である銀だ。
2020年は1グラム当たり60~80円台で推移していたのが、昨年には本格的に100円を超え、今年3月には126円の高値を付けた。金は高くて手を出ないが、銀なら少額で投資が始められる。
また、金には及ばないものの同じく貴金属であり安全資産のひとつであることから、世界的な情勢不安やインフレが上昇圧力となり、投資需要を加速させている。
実需としてのニーズも価格上昇に拍車をかけている。金は宝飾や投資用として使われるが、銀は産業用需要が圧倒的に多い。
パソコンやスマートフォンなどのデバイス、さらには需要が高まり続けている太陽光パネルに使われているが、銀の供給量自体は増えておらず、世界的な銀不足が続く限り右肩上がりで価格が推移する可能性が高い。
ただし、景気動向の影響は受けやすく、世界経済が低迷すると工業素材としての需要は鈍り、価格にも影響するだろう。
また、銀の主な産出国は中国やメキシコ、ペルーなどだが、これらの国で政治や経済に大きな変化が起きると供給状況に響き、市場価格も大きく変動する恐れがある。
現物の購入だけではなくETFを使い投資することも可能
銀は金と同じく地金商などから現物を購入したり、「純銀上場投資信託」など銀価格に連動したETF(上場投資信託)を通じて購入することが可能だ。
証券会社によっては、月1000円台程度から積み立て投資を始めることもできる。CFDや商品先物もあるがリスクは高くなるので、よほど投資に慣れた層以外は避けたほうが無難だ。
注意したいのは、配当や利息は得られず、金に比べると市場が小さいことから値動きが激しい。短期でキャピタルゲインを狙える一方で、損をするリスクもある。
積み立てで取り組むのが理想的だろう。金は長期の資産形成に向くが、銀はハイリスク・ハイリターンで投機色が強くなることは理解しておきたい。
一方、貴金属投資といえばプラチナもよく知られたジャンル。産出量の約6割は工業用で、景気に左右されることから株式に近い値動きをしやすいのが特徴だ。
金より希少性が高く、近年は投資対象としても注目されている。ただし、金や銀に比べると値動きは安定していて、1グラム当たりの価格は2020年の2000円台~3000円台から昨年には5000円近くまで上昇したが、今年に入ってからは4500円台で落ち着いている。
今年に入りアメリカのS&P500や日経平均株価は史上最高値を更新。4月以降は下落に転じたが、暴落したわけではない。ただし、アメリカでは年内の利下げは確実視されている。
為替相場は波乱含みだ。米ドル円は一時160円台まで円安が進んだが、日銀による市場介入が行われたとの観測から円高に振れ、5月3日は米雇用統計の結果を受けて153円台まで進行した。しかしながら、空前の円安状況であることは依然として変わらず、日銀の金融政策には注目が寄せられている。
先行き不透明感は増すばかりで、安全資産とされる金や銀といった貴金属に投資資金がシフトすることも考えられるだろう。分散投資の候補先としても悪くないのかもしれない。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))