日本中はもとより世界中から熱い視線を浴びる「ニセコ」エリア。
今年の公示地価も日本一位で上昇率58%のニュースは記憶に新しいだろう。
実際の取材を通じて感じた「ニセコ」の盛上がりと、それに伴う不動産の動きを2回に渡りレポートする。
初回は海外からの投資が盛んなスキー場エリア。2回目はそれに伴う倶知安市街地の状況と不動産投資の状況等をレポートする。
札幌に住む筆者も近くて遠いニセコ。
頻繁には足を伸ばすことは少ない。
しかし2018年の12月8日に、札幌から伸びる高速道路(後志自動車道)が小樽から余市まで延長し、距離感は更に近づいた。
取材に行ったのは6月14日15日と二日間。本州では夏を感じる時期だが、ニセコの6月の夜は10度以下の気温で寒いくらいだ。しかし一言で言うとニセコは熱かった。
スキー場については、ニセコ全山スキー場の公式ホームページ「NISEKO UNITED」に詳しく出ている。
ニセコには小樽方面から見ると奥から以下のスキー場がある。
●ニセコHANAZONOリゾート
●グラン・ヒラフ
●ニセコビレッジスキーリゾート
●ニセコアンヌプリ国際スキー場
この代表する4つのスキー場がニセコユナイテッドに属するスキー場でリフトも共通になっている。
倶知安で不動産業を営んでいる方にアテンドをお願いしスキー場やその周りの別荘地を見てきた。
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① ニセコHANAZONOリゾート
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元々は東急が開発したエリア(地図①)。東急がお金をかけてしっかりと開発したので、すぐ近くの別荘地は無電柱化になっており非常に閑静なエリアとなっている。
2004年(平成16年)、オーストラリア資本の「日本ハーモニー・リゾート」がニセコ花園スキー場を買収し、その後2007年に香港企業のPCCWの子会社PCPDが日本ハーモニーリゾートを企業買収した。
このPCPDは香港の有名人「リチャードリー」が率いている企業。
「リチャードリー」はアジアきっての大富豪で「時価総額8兆円の香港の超人」と称される李嘉誠の次男だ。
hanazonoスキー場では2019年開業予定の「パーク ハイアット ニセコ HANAZONO」が、既に建設着工されていた。
約100室のホテルや温浴施設、屋内プールのほか、約100室のレジデンス(分譲住宅)も設けられる予定である。
レジデンスは、ハイアット・ホテルズ&リゾートが日本で初めて取り組むもので、地下2階、地上8階建て、敷地面積約7300坪(2万4117.87㎡)で分譲戸数は114室の計画。
販売は三井不動産リアルティなどが手掛けている。購入者はパーク・ハイアットに委託することによって所有物件を宿泊施設として貸し出すことができ、いわゆるコンドミニアムとしての利用ができる。
物件概要を見ると販売価格は1億7900万円~3億4500万円で最多価格帯は3億1000万円台。
このホテルが開業した後には、約500名のスタッフの雇用が生まれると言われている。ニセコエリアではこういったスタッフの住居不足の問題が常にあるのだ。
そのHANAZONOスキー場から、新たに現在は閉鎖されているスキー場「ニセコワイススキー場」(地図⑤)までリフトが行く構想がある。そうなるとニセコ連邦を中心として、岩内側の共和町までもが一連のスキーリゾートになる壮大な計画だ。
また花園地区は、道路が整備されているために瀟洒な別荘が多い。
HANAZONOリゾートの売り土地看板は英語で「FOR SALE」。
ターゲットは日本人ではなく、完全に海外である。
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② グランヒラフの山田
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ニセコの代表と言えばグランヒラフ。(地図②)
元々オーストラリア人(オージー)が投資をし始めたのがこの山田地区からである。
この山田地区を「ヒラフ」と呼ぶ。
4年振りくらいの訪問だったが、開発が進み、スキー場までのメイン通りはもう開発できる余地が殆どないくらいに、建物がびっしりだ。
ヒラフエリアは、道道より上のスキー場エリアを「アッパーヒラフ」と呼び、その下の別荘が多いエリアを「ミドルヒラフ」。更にその下の方を「ローワーヒラフ」という言い方をする。
ヒラフ地区は、ホテル・コンドミニアム・別荘等の集積地で、ニセコが世界的に認められる前から開発されてきた。
だから道が細いまま、どんどん開発されて行政の開発が追いついていないエリアだ。
また、HANAZONOエリアのように、大手資本(当初の東急)が開発していないので、コンセプトも無く、道も狭く、砂利道もまだある。
ただこういった細い道の先に、例えばタイのレッドブル創業者の超巨大別荘が存在したりする。
このヒラフにも様々な開発案件がたくさんある。
特に注目がニセコ地区初の大規模商業施設「アルクザカストリート」が2019年に着工することだ。
香港の不動産開発会社であるメトロポリー・ホールディングス・リミテッドが、コンドミニアム(分譲別荘)とホテル、ショッピングモールを備えた複合施設建設だ。
同施設は2019年春に本格的に着工し、2022年の開業を目指している。事業費は約230億円でニセコ地区では初めての大規模商業施設である。場所はニセコグラン・ヒラフスキー場の南約100メートルに位置し、敷地面積は約3ヘクタールもある。
60~80店の店舗が並ぶ予定で、レストランや服飾店、薬局などの誘致を想定しているという。
さてこのヒラフエリアのホテル「木ニセコ」に宿泊した。
「木ニセコ」で宿泊した下のような部屋は、ウィンターシーズンでは、一泊約50,000円になっているが6月はちょうど一番の閑散期で一泊10,000円での宿泊ができた。
「木ニセコ」はHTM株式会社が2014年12月にオープンさせた、温泉、レストラン、客室96室を備えた一棟建てのプレミアブティックホテルである。
このHTM株式会社について、ホームページから抜粋する。
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2003年にオーストラリア人のマット・デニングと、サイモン・ロビンソンが、ニセコのパウダースノーに魅せられ、当時、日本では数少ない新しいコンドミニアムスタイルの施設を開発、販売、管理するために設立。
その後、毎年施設数を増やしていき2007年5月に、開発と販売を目的とした、北海道トラックスデベロップメント有限会社(社長 サイモン・ロビンソン)と、管理、貸出を目的にした株式会社北海道トラックスマネージメント(社長 マット・デニング )に分社化、2013年9月にHTM株式会社と社名変更、現在に至っている。
HTMは北海道トラックスディベロップメントが開発したコンドミニアムのほかに、他社が開発した施設も管理や貸出を行っている。管理施設は2017年10月現在、約40棟、160ユニットになる。 転載以上
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HTMの前身、北海道トラックスは、ニセコのコンドミニアム開発の先駆的会社。
この木ニセコは、部屋を一部屋ずつ販売しており、それぞれにオーナーがいる。
投資物件としての収益はホテル全体の収益を投資家全員でシェアする、「プロフィットシェア方式」が採用されている。
4月現在木ニセコのペントハウスの売物件がある。
こちらの部屋で252平米の価格が4億8000万円で売りに出ている。
この価格が現在のニセコの状況で、このような富裕層市場がニセコには存在するという事だ。
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③ ニセコビレッジ
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ニセコビレッジの歴史はニセコ東山プリンスホテルだ。
そのプリンスホテルからヒルトンニセコビレッジに名称が変更になったのが2008年。そして2010年にマレーシアの大手ゼネコングループ「YTL」が買収し今にいたった。
YTLはニセコだけではなく、イギリスやマレーシア、オーストラリア等にホテルがある大手。
このニセコビレッジは冬のスキー、夏のゴルフや自然体験グラウンド等を併設し、更にショッピングモール「ザ・ビレッジ」なども併設され、ニセコ全山の中でも一番開発が進んでいるスキー場として有名で人気をはくしている。
そして更に2020年開業で、YTLが保有するスキーリゾート、ニセコビレッジに約50室の富裕層向け宿泊施設を建設し、世界的高級ホテルブランド「ザ・リッツ・カールトン」が進出してくる予定だ。
リッツ・カールトンのHPにも記載されている。
この様に、ニセコエリアではハイアットやリッツ・カールトン等の、超高級ブランドが進出しその開発は更に進んでいるのだ。
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④ ニセコアンヌプリ
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(地図④)ニセコアンヌプリ国際スキー場は、北海道中央バスグループが所有、運営するスキー場。
昔からファミリー向けスキー場として知られている。
ここは、アテンドの方が言うには、「中央バスがのんびりしていて、今ひとつ開発が進んでこないエリア」とのこと。
現地に行ったが、お店がほとんど無く、昔ながらのペンションがあり懐かしい雰囲気だった。
花園、ヒラフ、ビレッジに比べると大人しい感じがするエリアだ。
現在のニセコ地区はオージーから中華系投資家にプレイヤーが変わってきている。
冬はヒラフエリアで宿泊料が大幅に上がり、オージーが宿泊できないような金額に上がって、宿泊数が下がったという事も一部では言われていた。
また国際情勢で大きく客入りが左右されるので、中国と何らかの情勢悪化があったり、北朝鮮問題が悪い方へ行ったりした時には一気に人が減少するリスクがある事も感じた。
さて、今回はスキー場エリアについてレポートした。
次回は倶知安市街地の状況とアパートマンション等の不動産投資の状況等をレポートしたいと思う。
倶知安の不動産業者を訪問し情報交換をしたが、その社長がスキー場エリアの不動産を扱う業者の事を「山の不動産屋」と読んでいた事が印象的だった。
次回(5月2日掲載)では倶知安市街地の状況と不動産投資の状況等をレポートする。
執筆者:J-REC教育委員 原田哲也
【プロフィール】
2010年より、一般財団法人日本不動産コミュニティー(J-REC)の北海道支部を立上げ、不動産実務検定の普及に尽くし、多くの卒業生を輩出。2018年よりJ-RECのテキスト編集、改定などを担当する教育委員に就く。
また自身が主宰する北海道大家塾は既に50回の開催を数え、参加人数も述べ3000人を超える。