2023年度のテレワーク率は22年度から2.7ポイント下落
新型コロナウイルス禍が収束しつつあることを受け、テレワークの比率が下がりつつある。国土交通省の2023年度調査によると、直近1年間でテレワークをした人の割合は全国で16.1%で、22年度調査から2,7ポイント減った。
つまり、コロナ禍で減りつつあった「出社」という勤務形態を選ぶ人が、再び増えてきたということでもある。東京のオフィスの空室率も徐々に下落。オフィス回帰が進み始めているこの動きをしっかりとらえ、不動産投資の戦略に生かしたい。
「コロナ禍では、週の一定の日数はテレワークを義務付けられていた。しかし、最近はそんな義務はなくなり、会社の一室で顔を合わせて行う会議も増えてきた」
こう話すのは、東京都内の大手企業に勤める40代の男性会社だ。
同じく都内の金融機関に勤める50代の女性も「コロナ禍では週初めの朝礼に、自宅からオンラインで参加すればよかったが、最近は出社して参加しなければならなくなった」と語る。
こうした働き方の変化は、勤め人ならだれしも実感しているのではないだろうか。
その実感を裏付けるのが、冒頭で紹介した国交省の調査だ。昨年10月から11月にかけインターネットで実施。対象は会社員や公務員、パートといった「雇用型の就業者」3万6228人だ。
回答の内容をみると、直近1年間でテレワークした人は全国で16.1%で、22年度の18.8%から大きく落ちた。この比率は年々減少しており、21年度は21.4%だった。
首都圏は28.0%、近畿圏は15.0%、地方は8.8% いずれも下落
地域別にみると、23年度調査で最もテレワーク率が多かったのは首都圏で28.0%となった。全国平均の16.1%を10ポイント以上、上回る水準だ。だが、首都圏も年々減っており、21年度は36.2%、22年度は31.6%だった。
ほかの地域は全国平均を下回った。
近畿圏のテレワーク率は、23年度は15.0%だった。全国平均をわすかに下回る数字となった。21年度は21.4%、22度は18.8%だった。
中京圏のテレワーク率は、23年度は13.3%。21年度は17.9%、22年度は14.6%だった。
さらに、地方都市圏は23年度は8.8%と一桁に落ち込んだ。21年度は12.0%、22年度は11.1%だった。
今後、ますます人流が回復していけば、これらのテレワーク率は下がっていく可能性がある。
東京都心5区の平均空室率 3月は5.47% 前月比マイナス
一方、オフィスの空室率はどうだろうか。不動産仲介大手、三鬼商事(東京)のまとめによると、今年3月の東京都心5区 (千代田、中央、港、新宿、渋谷)の平均空室率は5.47%で、前月から0.39ポイント低下した。
21年6月以降、平均空室率は昨年12月まで31カ月連続で6%を上回っていたが、今年1月以降、5%台に低下した。一般的に、都心では借り手と貸し手の優位性が変わる境目が5%とされ、いまだにそれを上回る水準だ。また、1~2%台の低い空室率で推移していたコロナ禍前には、まだまだ遠く及ばない高い水準ではある。
しかし、徐々に空室率が下がっており、オフィス回帰の動きが強まりつつある可能性がある。
また、首都圏以外の今年3月をみると、大阪の主要6区の平均空室率は4.77%で、前月比0.42ポイント上昇。名古屋の主要4地区は5.69%で0.07ポイント上昇した。
こうしたデータから読み取れるのは、オフィス回帰は進みつつあるものの、首都圏ではある程度のテレワーク人口があるということだ。
つまり、少々、鉄道の駅から遠い立地であったり、都心への鉄道の便が悪いところであったりしても、ネット環境をしっかり整えるなどテレワーク環境を整えれば、一定の物件の賃貸需要を見込める可能性があるということだ。
一方、地方の都市圏ではテレワーク率がかなり低い。物件の賃貸需要を高めるためには、駅近であったり都市中心部への通勤の便が良かったりといった、オーソドックスな立地条件が、引き続き大きなカギになるといえるだろう。
地域それぞれの人流れの特性を読みながら、賢く不動産投資戦略を練っていくことが重要だ。
取材・文:
(おだぎりたかし)