今回は、不動産をこれから始めようとしている、特に若い人たちに向けて書きたいと思います。
昨今のSNS上では流行りのテーマやかっこいい横文字を並べ事業をアピールする人が散見されますが、本当にビジネスとして成立しているのか不明なものが多く見受けられます。
たとえばTwitterでフォロワーがたくさんいたとしても、実体は詐称の塊であったり、実績さえも嘘であったりということがありえます。しかし、現在ではそういった人に注目が集まる傾向にあります。これは若い世代にとって、危険なことであると思います。
今流行りのテーマ、一過性の売上やSNS上でのきらびやかさにみんなが惹かれて、「 泥臭い 」とか「 地道 」とか「 継続 」を軽視する文化になりつつあります。土壌がしっかりしていないと美しい花は咲かないんだよ、ということを理解してほしいです。
■ 圧倒的な量が質を生み出す
どんなビジネスをやるにしても、最初は泥臭い地道な作業を「 質より量 」を意識してこなす必要があります。しかし、昨今ではいきなり質を求め、省力化する傾向にあるように感じます。
たしかに、信頼する人がいて、そこから情報を貰えばいいという発想は分かりますが、それだけでは本来経験すべきことを経験しないでステップアップすることになります。自分が窮地に立たされた時、その人は本当に助けてくれますか?
特に不動産は投資する金額が大きく、購入までで8割以上の勝負が決まる世界ですので、不勉強のまま見切り発車で買うのはとても危険です。失敗をリカバリーできるくらいの現金があればよいのですが、そうでない人がほとんどだと思います。
なんでもインターネットで情報が簡単に手に入る時代ですが、もっと自分の足を使い、不動産会社や銀行員、様々な士業の人と会って情報を貰えるようなルートを作るべきです。
私自身も、今も現在進行形で一週間に3〜4人は欠かさず不動産会社の人に会っています。地道な情報検索、情報収集を毎日行っています。
■ 泥臭さを身に沁み込ませる
繰り返しになりますが、これから始める人にはまず、地道に行動すること、つまり「泥臭さ」を身に着けて欲しいと思います。泥臭さを経験して継続していくうち、例えば不動産ならば売却益のように時流に乗れるようになります。
それは狙ってできることではなく、継続の延長線上にあるのです。狙ってできる人はいません。バブル崩壊やリーマンショックはその当時、いずれ崩壊するかもしれないがいつ崩壊するかは誰もわかっていませんでした。
土地値も建築費も高い、中古もエリアによっては値上がり、融資も簡単ではない、現在は厳しい状況であると言えます。そういう状況の中では、誰しもが欲しくても買えないので、「 買えるまで待とう 」といったように、行動しないことを正当化するようになります。ここが差になるのです。
できあがった商品を買いたい。答えを教えてくれる人の言うとおりにしたい。そうやって失敗を防ぎたい気持ちはわかります。しかし、そこに依存すると長期の安定した成功は望めません。泥臭く行動あるのみです。
■ オフラインで人と会うことの大切さ
オフラインで人と会うことはご時世的に難しい部分もありますが、初期の段階は効率が悪く時間がかかることをあえてやる必要があります。それを経験した上で近道、コストカット、省力化を図るべきだと思います。
不動産に関して言えば、経験上、本当に良い物件をグリップするならオンライン上のコミュニケーションだけでは絶対にダメです。ZOOM等のオンラインコミュニケーションのみで人を信頼させるのは不可能に近いと思います。
実際に会って話をしないと伝わらない部分は多いものです。私は今でも地道にオフラインのコミュニケーションを通じて不動産会社から情報を貰うようにしています。何回も取引しているにも関わらず、相手も私と話すための時間を作ってくれます。
それは、対面で会うことで相手の本気度を確かめているのではないでしょうか。どれだけ真剣に検討しているのか、どれだけ真剣に計算をしているのか、会った時点で相手に伝わるのです。そういった、地道な積み重ねがいわゆる川上の情報を仕入れることにつながります。
たしかに、現金資産が多くある方や、融資が付きやすい人は良い情報を入手しやすいです。しかし、それだけでは本当の源流にまでは辿り着けないのです。お金でおおよその情報を引き寄せられますが、残りの10~20%は人としての魅力がなければ手に入りません。
いつでも決済できるだけの現金と融資状況を用意しつつ、更にしっかりオフラインで会って、自分の実績と魅力で情報を引き寄せることが非常に大事であると思います。
■ 指値という概念がない
前回のコラムでお話しした通り、私は元々教育者です。たくさん知識を与えて、幾ら分かりやすく相手に伝えても本人が動かないと意味がありません。相手の心にまで刺さって動かすことが教育なのです。
不動産に限らず、取引の世界ではよい意味で相手の心に刺さっていって、仲良くなっていくことが重要です。そうすることにより、真っ先に情報が来るようになります。
私は指値をすることがありません。取引業者さんからは、「佐藤さんならいくらを付けますか?」という話がきます。そこで正直に、事業収支が合う最高値を提示します。
私が出せるのは相場に比べたら安い金額です。しかし、相手は私が本気で調査し、検討する姿を見てくれているため、相場より安い価格でも「 頑張ってくれた 」という評価を受けられるようになります。
そういう関係作りがあって、良い物件を買えるようになるのです。これもまめにコンタクトを取り、会って話をして、情報が来た時に速やかに回答することを20年間地道に続けてきた結果なのです。
■ 10年先を行くゲームの世界、20年遅れている不動産の世界
「 ゲームの世界は他の業界より10年進んでいる 」と感じます。反対に、「 不動産の世界は20年遅れている 」と思います。私は両方の世界に触れているので、30年のギャップを感じることができます。
例えば、ゲームの世界では30年以上前からAIを取り入れており、また一早くオンラインで対戦できるようになっていきました。
そういう世界を経験してきた人たちが、今一番大事にしているのが「 オフラインの世界 」です。例えばチーム戦はオンラインで練習をすることもできますが、実際に集まって手元の操作方法を見ながら互いにトレーニングすることによって、チームワークが形成できるとされています。
中国や韓国のesportsのトップチームでは、まるで宇宙船のようなゲーミングハウスを作り、そこで切磋琢磨しています。彼らは、世界のトップを目指すにはオフライン要素が大事だと分かっているのです。
新型コロナウイルスの流行と共に、いまの日本では「 なんでもかんでもオンライン化 」という風潮になっていますが、その風潮自体が時代遅れではないでしょうか。私には、なぜオフラインの大切さに気付かないのか不思議でなりません。
こんなご時世だからこそ、地道で泥臭いオフラインでのコミュニケーションを意識してみるとよいと思います。