■ 11世帯110万円のアパートを発見!
前回の「12戸450万円のアパートのその後。雨漏り・カビ・柱の腐食をどうしたか?」はいかがでしたか? 築古・激安物件を購入する際の建物等の事前検査の重要性を改めて考えさせられる物件でした。
今回のコラムも、築古・激安物件のお話です。今回は脇田の友人が、「11世帯110万円アパート」を紹介されたところから始まります。ワンルームではありますが、11世帯で110万円とは脇田もびっくりです。
まず友人と物件との出会いですが、ある日、親しくしている売買仲介さんから「 11世帯で110万円の一棟物アパートがあります。興味はありませんか? 」と連絡が入ったのが始まりでした。
友人は当初「 まともな物件ではないのでは? 」と冷ややかに捉えていたのですが、「 土地は所有権、11世帯中4世帯は入居中 」と聞き、すぐに物件を案内してもらう約束をしました。
■ 共用廊下崩落
すぐに現場へ駆け付けて物件を見ると、それはよくある2階建ての築古アパートでした。ところが、一つおかしな点がありました。2階の共用廊下が約1/3程度、崩落していて「 ない 」のです。
こんな状態では、2階の奥にある3世帯は玄関から出入りすることができません。「 売り出し中のアパートで、共用廊下が使えないほど崩れている物件を見たのは初めて! 」と脇田の友人は笑っていました( 笑 )。
「 なぜ共用廊下がないのだろう? 」その原因を探ろうと廊下の真下を確認したところ、なんと、廊下を支える鉄製の柱や梁がその部分だけ存在しないことが分かりました。
後日、大工さんと鉄骨屋さんに現場を確認してもらったところ、「 建物本体の住居部分はしっかりとしているので、共用廊下設置時の手抜き工事が原因だろう 」との見解でした。
逆に言うと、この崩れ落ちた2階の共用廊下を復旧することさえできれば、建物は使えるということです。工事の見積もりは約200万円でしたので、それを考慮してもいける物件かを検討することになりました。
■ シロアリ天国
次に問題だと感じたのは、シロアリ被害についてでした。外部からでもよく観察すれば判別できるほど、シロアリによる木部の劣化が進んでいたのです。
共用廊下や室内のいたるところにシロアリの死骸が認められましたし、外壁の隙間から内部を観察してみると、シロアリが木材を食べた痕跡である「 蟻道( ぎどう ) 」も確認できました。
また、1階のユニットバスの天井にある点検口からLEDライトで2階の床下を確認したところ、素人でも判断できるほど分かりやすいシロアリ被害の後が複数確認できたそうです。
後日、シロアリ屋さんと大工さんに修繕の見積もりを依頼してみると、シロアリの駆除と予防に約75万円、被害箇所の木材交換に最低でも150万円かかるという見積もりが出ました。
友人は「 最初、11世帯の一棟物アパートが110万円だ! これは掘り出し物だ!と盛り上がっていた気持ちが、徐々にクールダウンしていくのが分かった 」と冷静に話してくれました( 笑 )。
客付けには困らない立地だったため、リフォーム費用をしっかりと用意できる場合は、ボロ物件投資として成り立つが、「 なかなか大規模な工事で骨が折れそうだな 」という印象だったそうです。
■ 壁面・屋根緑化
最後に大きな問題だと感じたのは、長年手入れされてこなかったせいで、進行してしまった建物外壁と屋根の緑化( 笑 )についてでした。
近隣に自生していたツタなどの植物が建物にがんじがらめに絡み付いており、壁面と屋根の隙間から室内へ水が回っているのが確認できました。
この物件を購入して再生する場合は、建物全体を覆っているこのツタを取り除いた上で、水が進入している部分を補修、または下地と外装板のやり替え、屋根の修繕または一部葺き替えが必要になるだろうと考えられました。
屋根屋さんと大工さんに見てもらったところ、部分補修でもそれぞれ200万円はかかるのではないか? との見解でした。
■ 修繕費の合計は800万円超
ここまでで、廊下の工事が約200万円、シロアリの駆除と予防に約75万円、シロアリの被害箇所の木材交換に約150万円、それに加えて屋根と外壁の修繕がそれぞれ約200万円( 計400万円 )です。
合計すると、再生するには最低でも825万円はかかるということになり、最初のアパートの金額110万円とあわせると、935万円になりました。
ただ、935万円かけても、一部屋3万円の家賃として、11部屋が埋まれば毎月の家賃収入は33万円。年間で約400万円ですので、充分に高利回りであることは間違いありません。
この物件を買うか流すか、その友人はまだ決めかねています。いずれにせよ、「 予想していたより修繕費用がかかりそうだから、プロの人に見てもらってよかった 」と話していました。
熱心に探せば、今の市場でも今回のような激安物件は出てくるものです。しかし、物件をよく調べずに購入すると、後になって収支計画が大きく狂うことになります。
投資である以上、投資物件として仕上げるためにいくらかかり、その上でいくらの賃料が見込め、利回りはどの程度になるのかを、把握した上で購入を決めるのは、当然のことです。
物件を買うときは、見た目上の安さだけではなく、修繕に必要な費用まで計算に入れた上で、投資として成り立つどうかをしっかり判断する目を持つことの重要性を感じる案件でした。
この物件がどうなったかは、また機会があれば、このコラムで報告していきたいと思います。