• 収益物件掲載募集
  • 不動産投資セミナー掲載募集
  • 収益物件 売却査定

1,546アクセス

「太田垣章子のトラブル解決!」コロナで収入激減カラオケ店長の滞納。家主の温情は凶と出た

賃貸経営/トラブル ニュース

2021/03/18 配信

2020年世界中はコロナに翻弄された。当初は得体の知れぬものとして、緊急事態宣言に国民が従い、街は閑散とし、交通機関も利用する人はまばらだった。

多くの職種がダメージを受け、経済的にダメージを受ける。当然賃貸に住む賃借人も、経済的困窮に追い詰められたケースが目立った。

若い人たちの中には「いったん実家に戻ります」と自ら退去する人たちもいたが、ファミリー層はそう簡単ではない。特に就学生をもつ親は、転居のハードルはかなり高くなる。「コロナさえ落ち着けば」そう願いながら、家賃を滞納してしまった賃借人がいた。

2184294_m

約束もしたから待ってあげたい

賃借人はカラオケ店の店長をしていた。換気の面でも飛沫の面でも、コロナ禍から「悪」の矢面に立たされた業種のひとつだ。

緊急事態宣言を受けて店は休業。その間の収入は完全に途絶えた。

それでも当時はさまざまな給付金を受給したり、コロナさえ落ち着けば、そう思って事が深刻になることまでは考えていなかった。それよりも店長として、アルバイトの学生への対応に追われる毎日だった。

当然収入は激減した。小学生の子どもが2人。3LDKで家賃は14万円。妻の飲食店でのパート代もなくなり、ぎりぎりの生活がさらに追い詰められる。

生活費の大半を貯金で繋ぐ生活になり、家賃を払えないようになってしまった。家主に自分から現状を伝えた方がいいと思ってはいたが、コロナさえ落ち着けばすぐに払えるようになるのだから、もう少し様子を見よう、そう思っている間に家賃を滞納する日々は続いてしまう。

一方家主の方は、滞納に気が付いた時には、すでに4ヶ月になっていた。滞納額が家賃3ヶ月分であれば、すぐに訴訟を提起することができることは知っていたが、このコロナ禍で手続に踏み込むのは少し躊躇いもある。

結局、賃借人との話し合いで「今売り上げも回復してきている」という言葉を鵜呑みにしてしまったのだ。後ろ向きの話はストレスフルなので、そこから逃げてしまったと、後になって家主は苦笑いする。

しかし当時は滞納分をどう支払っていくかという確約書を交わして、その場は終わった。

裏付けのない温情は大きな損失になる

家主の「できればストレスフルな状況を避けたい」という気持ちは、とてもよく分かる。

訴訟手続きに携わっている者として、当事者ではないものの楽しい気分にはなれない。そう思うと、家主の対応を否定することはできなかった。ところがこの行動が、結果家主の生活を脅かすことになってしまった。

賃借人との合意書を交わしても、家賃に加算して払うはずの過去の滞納分は払われず、それだけでなく通常の家賃も払われることはなかった。

結局毎月滞納はどんどん加算されることになり、私のところに依頼される時にはすでに7ヶ月分の滞納となっていた。

「いったんは信じたし猶予したけど、この先支払が改善される見込みがない」

コロナも長期戦となると判断した末のことだろう。

私が手続に入って、すぐに賃借人から電話があった。

「転居しなければならないとわかっているのですが、引っ越し費用がないんです」

話し方や声からしても、嘘をついている印象はない。むしろ一生懸命に頑張ってはいるものの、どうにも身動き取れない、そんな空気が電話からも読み取れた。

経営が悪化しているカラオケ店は辞め就職活動を始めたが、46歳という年齢からなかなか次の就職先が見つからない。貯金も底をつき、今は失業保険で何とか食い繋いでいるいるということだった。

「この年齢からの転職で、学もない技能もないとなれば、受け入れてくれる業種は限られます。でもその大半がコロナで苦しいから、新人を雇う余裕なんてあるはずがない。あのままカラオケ店にしがみついていた方が良かったのでしょうか……」

生活保護受給まではすぐだった

最終的に賃借人は、生活保護を受給する決断をした。訴訟手続きに着手して2ヶ月。今後のことを考えて訴訟を避けたかったのか、賃借人は裁判期日の1週間前に転居した。生活保護費から初期費用や引っ越し代金が支給されたという。

「家主さんには迷惑かけられないから、滞納分は月々1万円くらいは払っていきます」

しかしその言葉は、1ヶ月もしないうちに覆された。

破産申し立てを依頼された弁護士から、受任通知が送られてきたのだ。これで家主は滞納額の回収ができないことが確定。結局家主側の未収賃料は、120万円を超えた。

「コロナ禍で皆が被害者だと思ったから、強く言い出せなかった」という思いが、結果このようなことに繋がってしまったのだ。賃借人の気持ちや状況は、分からなくはない。それでもやるせない思いが残る。

「結局ビジネスなんだから、家主は温情かけてはいけないってことだよね」家主は呟いた。

賃借人が滞納しながら住めるだけ住んで、最後に破産手続きをするケースが増えている。良かれと思った温情が、逆に自身の賃貸経営を悪化させるなら、早い段階で専門家に依頼することを検討して欲しい。

執筆:太田垣章子(おおたがき あやこ)

章子先生
【プロフィール】
OAG司法書士法人 代表
平成14年から主に家主側の訴訟代理人として、悪質賃借人の追い出しを延2000件以上解決してきた賃貸トラブルのエキスパート。徹底した現場主義で、早期解決のためにトラブルある物件には必ず足を運んできた。現場で鍛えられた着眼点から、賃貸トラブルの解決を導く救世主でもある。著書に「家賃滞納という貧困」(ポプラ社)「賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」(日本実業出版社)がある。

不動産投資ニュースのライターさんを募集します。詳しくはこちら


ニュースリリースについて

編集部宛てのニュースリリースは、以下のメールアドレスで受け付けています。
press@kenbiya.com
※ 送付いただいたニュースリリースに関しては、取材や掲載を保証するものではございません。あらかじめご了承ください。

最新の不動産投資ニュース

ページの
トップへ