不動産投資の始め方

不動産投資、最初の一歩が踏み出せないのは情報不足が原因かも…?
不動産投資の基礎やメリット・デメリットを知り、新たな一歩を踏み出しましょう!

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不動産投資とは何かそのメリットとデメリット

1-1不動産投資の特徴

不動産投資とは、利益を得る目的でマンションや戸建て、アパートや店舗などの不動産を購入し、賃貸することでインカムゲイン、時には売却することでキャピタルゲインを得ながら、資産の増加を目指す投資手法です。

景気等の外部要因に大きく左右される株やFX等と異なり、不動産投資では投資家自身の工夫や努力で収入を増やすことが可能であり、事前にしっかりと学習をして投資に適した物件を購入することで、長期に渡って安定的に収入を得ることができます。

かつては地主や一部の富裕層が中心でしたが、ロバ―ト・キヨサキ氏の『金持ち父さん・貧乏父さん』が2001年に出版されて以降、その魅力が広く知れ渡り、現在では副収入を得ることを目的に不動産投資を始めるサラリーマン等が増えています。

書籍:金持ち父さん・貧乏父さん
『金持ち父さん・貧乏父さん』

1-2不動産投資のメリット

不動産投資のメリットには、次のようなものがあります。

1定期的に安定した収入を得られる

世の中のビジネスは大きく2つに分類できます。売上のリピート性がない「フロービジネス」と、継続性がある「ストックビジネス」の2つです。

フロービジネスの「フロー(flow)」は「流れ」という意味で、「都度の取引で収入をあげる」スタイルのビジネスです。例えば飲食店などの小売店はフロービジネスに該当します。フロービジネスは大きな取引があった時には大きな売上が上がりますが、そうでない月には売上が激減するなど、収入が一定しないという特徴があります。

一方、ストックビジネスの「ストック(stock)」は「蓄える」という意味で、顧客と契約を結んだり、会員を確保したりすることで「継続的な利益を得る」スタイルのビジネスです。通信事業、電力・ガス事業、会員制の事業などがストックビジネスに該当します。売上が積み上がっていくため経営が安定し、長期的な視野で運営に取り組むことができます。

図解:フロー型ビジネスモデル

商品・サービスを提供した段階のみ収益となります

「フロー型」のビジネスモデル(イメージ)
図解:ストック型のビジネスモデル

サービスを一度提供すると、継続的な利用が見込め、定期的な収益となります

「ストック型」のビジネスモデル(イメージ)

毎月、決まった家賃収入が見込める不動産投資はこのストックビジネスに該当します。また、不動産は時間の流れがゆっくりであるため、先の収支計画を立てやすいという特徴もあります。このメリットを活用することで、サラリーマンをセミリタイアし、第二の人生に踏み出す不動産投資家も多くいます。

2融資を使って投資物件を買うことができる

不動産投資が他の投資と異なる特徴の一つに、金融機関からの融資を受けられるということがあります。融資のロジックを理解することで、借り入れを活用しながら効率よく物件を買い進めることができます。

ただし、物件の選定や運用の仕方を誤れば、毎月の返済額よりも家賃収入が少なくなるキャッシュアウト状態に陥り、資産を増やすどころか生活を圧迫することになります。そういった意味で、融資は諸刃の剣ともいえ、利用する前にしっかりと勉強することが重要です。

3プロに業務を任せられる

不動産投資では入居者への一次対応、リフォーム、物件の清掃等、多くの業務を専門家に任せることができます。そのため、サラリーマン等の本業を別に持つ人でも取り組むことが可能です。

4サラリーマンでも不動産投資はできる

通常、副業が禁止されている民間企業でも例外として、不動産投資は認めているというケースが多く見られます。本人の意思にかかわらず、親族から収益物件を引き継いで大家になる人たちも少なくないからです。

また、勤務先が不動産投資を禁止している場合、不動産投資用の会社(=資産保有法人)を設立することで、不動産投資を行えます。その際、当人は株主として会社を所有し、取締役にはならないよう注意が必要です。取締役には家族を任命することで、勤務先の規約に抵触することを防げます。

5現物資産であるため、インフレに強い

不動産は「現物資産」です。現物資産と呼ばれるものには、不動産の他にゴールド等の貴金属、美術品、車などがあります。もしも日本がインフレに見舞われた場合、現金や預貯金などの「金融資産」は貨幣価値が目減りする可能性があります。一方、不動産であれば物価の上昇とともに不動産価格も上昇するため、資産価値が大幅に下落することは考えにくいといえます。

6所得税・相続税などの税金をコントロールできる

日本の所得税は累進課税方式であり、所得金額が増えた分だけ税率が上がります。税率は課税所得金額が330万円以下なら22%、900万円以下なら35%、1,800万円以下なら45%というように増加し、4,000万円以下の場合は52%と、所得の半分以上が税金となります。社会保険料も加算すると税金の額はさらに増加します。

一方、不動産投資では税率を合法的にコントロールすることが可能です。例えば、家族名義や資産保有法人を通して不動産投資を行うことにより、所得に対する税率を下げられます。

相続税も、法定相続人の取得金額が1,000万円以下なら税率は10%、1億円以下なら30%というように、累進課税で決められます。6億円を超えた時の税率は55%にもなります。

仮に全額現預金で相続した場合は、そのままの税率が適用されますが、不動産で相続した場合はそうではありません。例えば、都心のマンションなどでは時価1億円の物件の相続税評価額が3,000万円程度ということも珍しくありません。このように、現金よりも不動産で相続を受けた方が節税になることがあります。

1-3不動産投資のデメリット

メリットの裏側にはデメリットがあります。このデメリットをよく理解し、必要な対策を講じることで、不動産投資で成功する確率を上げることができます。

1ある程度の初期費用が必要

超低価格の築古物件投資も台頭しているものの、不動産投資では一般的に100万円単位の自己資金が必要となります。購入の際に融資が使うこともできますが、その場合も頭金や諸費用として一定のキャッシュは必要です。

不動産投資での資産形成はよく、「雪だるま」を作ることに例えられます。その際、核となる「雪玉」は大きな方が早く、大きな雪だるまになります。この核となる雪玉の部分が自己資金です。

書籍:スノーボール
ウォーレン・バフェット伝『スノーボール』

2金額が大きいため、失敗したときのダメージが大きい

不動産投資は扱う金額が数百万円、数千万円、数億円と大きいため、失敗したときに被るダメージが大きくなります。1991年~1993年のバブル崩壊時には、「総量規制」により倒産した不動産業者や自己破産した不動産投資家が多くみられました。

近年でも“かぼちゃの馬車”を始めとした都内シェアハウスをめぐる事件において、借金の返済に行き詰まったサラリーマン投資家が自己破産をしたケースが見受けられました。このように、一歩間違えれば人生を棒に振るリスクがあるのも不動産投資の特徴のひとつです。

3REIT等に比べると手間や心労が多い場合もある

不動産投資では現物のアパートやマンションを購入・運営することになります。そして、建物の中では入居者が日々の生活を営んでいます。パソコンの前で売買を完結することも可能な金融投資とは異なり、台風で建物が壊れたり、設備が故障したり、入居者が夜逃げをしたり、業者が倒産したりと、ありとあらゆる出来事が起こるのが不動産投資です。

自殺や火災等に遭遇することもあるかもしれません。不動産投資では仕組みとして作業を人に任せることはできますが、起きた出来事にどう対応するかの方針は投資家自身が決めることになります。人によってはそれを手間や心労に感じるケースもあるでしょう。

4流動性が低い

不動産投資のデメリットのひとつに、投資対象となる不動産の絶対額が大きく、マーケットのプレイヤーが株やFX等よりも少ないため、いざ売り出そうとしても、買い手が見つかるまでに時間がかかる「流動性の低さ」があります。

株式投資ではいわゆる「塩漬け」状態で、売り時が来るまでただ放置しておくということが可能です。一方、不動産は入居者がゼロの状態でただ保有しているだけでも、管理費や固定資産税などを支払う必要があるため、売却を完了させなければ出費が続きます。そのため、次の買い手が見つかりにくい物件は「トランプのババ」に例えられることがあります。

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どの手法・種類を選ぶか

2-1様々な不動産投資の手法と物件の種類

不動産投資と一口にいっても、その投資手法や物件の種類は多岐にわたります。

<レジデンス(住居)系>
区分マンション・一棟アパート・一棟マンション・戸建て,etc…

<商業系>
ビル・更地・駐車場・コインランドリー・店舗・倉庫・ホテル,etc…

この他にも、近年は物件を購入・所有せず、人に借りた物件を転貸する手法や、戸建てを複数の入居者に貸すシェアハウス、一日単位で貸し出す民泊等、より少ない資金でより大きなリターンを目指す手法にも注目が集まっています。

上記のように、多様な不動産が投資対象となる上に、立地や築年数、価格や規模、資産価値や利回り等も各物件で異なり、ひとつとして同じ案件がないのが不動産投資の大きな特徴です。

2-2不動産投資におけるリスクとリターン

不動産投資には様々なやり方があり、どの手法を選ぶかによって、リスクとリターンのバランスが変化します。どの手法が正解というものはなく、それぞれの手法に成功者と失敗する人がいます。大切なのは、どのやり方を選んだとしても収支の合う物件、そして、自分の目的に叶った物件を選ぶことです。

図解:不動産投資における金額と利回りのマトリックス
不動産投資における金額と利回りのマトリックス
  • どの種別でも、築浅であるほど高額・低利回りに、築古であるほど小額・高利回りになりやすい
  • どの種別でも、入居率が高いほど高額・低利回りに、空室率が高いほど小額・高利回りになりやすい
  • どの種別でも、積算評価が高いほど高額・低利回りに、積算評価が低いほど小額・高利回りになりやすい
  • どの種別でも、建物の状態がいいものほど高額・低利回りに、建物の痛みがが激しいほど小額・高利回りになりやすい
  • 新築戸建てと地方新築区分マンションは、新築時は実需向けのものが多いため、マトリックスから外している

満室経営のためには、古い物件より新しい物件の方が選ばれやすいですし、人口が多い都心の方がそうでない地方郊外よりも有利です。また、金融機関の評価が出やすい(積算評価が高い)物件の方が融資を引きやすく、流動性も高まります。

しかし、満室経営がしやすく融資がひきやすい物件は、購入希望者が多いために物件価格は上がり、利回りは下がります。反対に満室にするのが容易ではなく融資も引きにくい物件は、買いたい人が減るために物件価格は下がり、利回りは上がります。

不動産投資家としては、こうしたリスクとリターンのバランスの中で、自分の資金や経験、値、属性、目的等に合ったやり方はどれなのかを総合的に判断し、当面の投資手法やターゲットとする物件を絞っていくことになります。

2-3初心者こそ重要!不動産投資における目標設定

上記のように、不動産投資には多くの手法があり、選択肢があります。初心者の多くは最初、その時に流行している手法に挑戦しようとします。最初に読んだ本や最初に出たセミナーの影響を受ける人も少なくありません。

そこで注意したいのが、初めから一つのやり方に固執せず、様々な投資法を浅く広く知ることです。それまで知らなかった手法の中に、自分に合った手法があるかもしれません。

自分に合った手法に迷った時は、ライフサイクル表を書き出して、家計の流れを見える化することで、不動産投資に求めるものを整理できることがあります。「子供たちの学費を家賃で支払うためには、〇年後に〇〇万円が必要だ」というように目標が定まれば、自然ととるべき手法は絞られてきます。

また、5年後、10年後に「不動産投資を通じてこうなりたい」というイメージを膨らめて、その像に近い先輩投資家を参考にするのも一案です。健美家では様々な手法で成功を収めている複数の不動産投資家がコラムを連載しています。

この中から自分がピンと来る人のコラムを読んだり、セミナーに出たり、SNSをチェックしたりすることで目指す不動産投資家像、ひいては自分の求める生き方がクリアになるかもしれません。

2-4現金で買うか、借金をして買うか

不動産投資は借金(レバレッジ)を使えることが大きなメリットとされています。しかし、そこには当然、リスクもあります。借金のリスクを嫌い、現金だけで不動産投資を進めている人も少なくありません。

しかし、現金で物件を買うには相応の資金を貯める必要があり、回収にも時間がかかります。例えば利回り20%の物件であっても、現金買いでは自己資金の回収に5年が必要です。利回り10%なら、投入した自分のお金を無利息で10年で回収しているだけという見方もできます。これでは、なかなか大きく資金を増やすことができません。

リスクを抑えながら借金をする方法として、自己資本率を意識しながら、借入をコントロールすることが有効です。また、返そうと思えば返せるレベルの借金から始めてみるのもいいでしょう。レバレッジか現金買いの二者択一で考えるのではなく、自分の年齢等も考慮しながら、投資効率と安全性のバランスをとっていきましょう。

2-5個人で買うか、法人で買うか

不動産投資を始めるにあたり、個人で買うべきか、法人を設立して買うべきか、迷う人は多いものです。個人・法人、それぞれのメリットとデメリットを紹介します。

1個人で物件を買うメリット

  • 個人でしか使えない住宅ローン(期間35年、金利1%以下など超優遇されている)等の商品を使える
  • 賃貸併用住宅など、住宅ローンで買った物件を(ルールの範囲内で)収益と絡めることでキャッシュを効率よく増やすことができる
  • 住宅ローンで購入した物件(マイホーム)は売却益3千万円までは税金がかからないため、マイホームを安く買って高く売ることで、キャッシュを効率よく増やすことができる

2個人で物件を買うデメリット

  • 住宅ローン以外の物件は5年以内に売却すると売却益にかかる税金が高く、キャッシュを残しにくい(売却する年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合短期譲渡所得として39.63%、5年超の場合は 長期譲渡所得として20.315% の税率)
  • 個人で買った物件の家賃収入は給料等の本業の所得に合算され、そこに税金がかかるため、所得が上がるとキャッシュが残りにくくなる(例えば、1500万円を超えた分の所得は半分以上が税金となる)。

3法人で物件を買うメリット

  • 損益通算の仕組みなどを使って税金をある程度はコントロールすることが可能(短期で物件を売却するつもりなら法人で買う方が節税になる可能性が高い)
  • 経費を計上しやすい
  • 自分が法人代表になり、自分個人を保証人にすることで、第三者を巻き込まずに融資を受けられる
  • 相続をスムーズに行いやすい

4法人で物件を買うデメリット

  • 法人を設立する際にお金がかかる
  • 法人を維持するためにお金がかかる

法人と個人、どちらか一方を選ぶのではなく、両方の特徴を生かしつつ、同時に買い進めることも可能です。また、法人を作るタイミングとしては、「物件の数に関係なく、不動産投資を本気でやろうと決めた時」と答える投資家が多いようです。

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不動産投資で失敗を避けるには

世の中に、リスクのないものは存在しません。不動産投資にも当然、リスクが存在します。 一番のリスクはリスクを知らないこと、二番目のリスクはリスクを知っていて学ばないことです。リスクと向き合い、回避する方法を知れば、リスクはリスクではなくなります。次に、不動産投資における代表的なリスクとその回避法をお伝えします。

3-1物件購入時におけるリスク

1儲からない物件を買うリスク

不動産投資の最大のリスクは、“儲からない物件”を買って資産を失うことです。マーケットを見渡せば、「満室でも収支がマイナス」という物件が売られています。サブリースをあてにして購入した物件で契約内容が変わり、収入が激減するといった例も珍しくありません。

不動産投資家は事業者であって消費者ではありません。そのため、購入した物件が当初の想定通りに儲からなかったとしても、物件をすすめてきた仲介業者に責任を押し付けることはできません。また、サブリース契約の内容が一方的に変更され、それを家主が訴えた裁判でも、サブリース業者側の主張が認められています。

2無知であることのリスク

不動産投資の世界には、自社の利益のためなら、“儲からない物件”であることを承知で販売・仲介する業者も存在します。不動産投資における最大のリスクは「人」である、という不動産関係者も多いほどです。

しかし、必要以上に恐れる必要はありません。儲からない物件を買ってしまう人は結局「無知」なのです。そのリスクは、事前に学習して不動産投資についての正しい知識を身につけることで、防ぐことができます。

その物件が自分の目的に合致しているか? 購入することで資産を増やせる可能性は高いのか? 等を自分自身でシミュレーションし、良し悪しを判断できる投資家になることで、“儲からない物件”を避け、”儲かる可能性の高い物件”を選べるようになります。

3-2物件の運営に関わるリスク

“儲かる可能性の高い”物件を買ったからといって、成功を約束されるわけではありません。物件の運用中は、次のリスクに気を付ける必要があります。

1空室リスク

不動産投資における収入のほとんどが入居者からの家賃です。そのため、入居者がいない空室状態が続けば収支は悪化し、経営は成り立たなくなります。

リスクヘッジとしては、賃貸需要が見込まれる物件を選ぶと同時に、空室が出た際に時流にあったリフォームを行う等の「物件力」アップのための工夫と、仲介賃貸の会社に周知する等の「マーケティング」の観点から見た工夫の両方が必要となります。

2建物の老朽化リスク

不動産は買った瞬間が一番新しく、年数が経つごとに建物は老朽化していきます。老朽化が進めば外観だけでなく、住み心地にも影響を及ぼすため、次の入居者を見つけにくくなり、空室リスクが高まります。

対策としては、普段から修繕とメンテナンスを心がけることが有効です。屋根の防水工事や外壁の塗り替え等の大規模な修繕については、計画をたてて準備することが大切です。

3金利リスク

ローンを利用して不動産投資をする場合で変動金利を選択した際には、金利上昇に伴う返済額負担増のリスクがあります。対策としては、ローンの借入期間を短くする、固定金利を選択するなどが考えられます。

4資金流動化リスク

不動産の場合、売却しようとしてもすぐに売却できるとは限りません。市場の変化により、投資用不動産が将来売却できないかもしれないというリスクもあります。資金流動化リスクを避けるためには、物件の購入前にあらかじめ、出口戦略を立て、中長期的に見て利益が出やすい物件を選ぶことが大切です。

5不動産価格下落リスク

不景気等により、購入した不動産の価格が下落することがあります。価格下落リスクに強い不動産、もしくは価格下落リスクを見込んでも収支が合う不動産を選ぶことが大事です。

6災害・事故による収益性の低下

火事や大きな自然災害などにより、物件が損害を受けた場合には運用が難しくなります。対策として、保険によるリスクヘッジがあげられます。

7借金の返済リスク

上記のようなリスクが重なることで収支が悪化すれば、借金の返済ができなくなります。対策としては現金で購入すること、借入の際の「返済比率」を低くすることがあります。返済比率は通常、50%以下なら安心といわれています。

返済比率を抑える方法としては、1)安く買う、2)頭金を増やす、3)低い金利で借りる、4)返済期間を延ばす、などがあります。この中で注意したいのが、4)返済期間を延ばす、についてです。

金利が高く返済期間が長い借金は、見かけ上のキャッシュフローは出ていても、借金の元本が減らないため出口戦略を立てにくく、先々で持ち続けることが困難になるリスクが高まります。ローンを使う場合は、返済比率の仕組みについて、事前に理解することが大切です。

3-3入居者に関するリスク

1滞納や夜逃げのリスク

不動産投資における売上の大部分は家賃収入です。そのため、家賃の滞納や夜逃げは、極力避けなければなりません。対策としては、入居申し込みの際の審査を適切に行う、保証会社を利用することなどがあります。

2事故や事件のリスク

孤独死、自殺、物件内での事件等があった物件は「心理的瑕疵」のある物件として、家賃の低下や売却時の価格低下につながります。対策としては、入居申し込みの際の審査を適切に行うことや、孤独死を防ぐための対策を講じることなどがあります。また、孤独死や自殺については、保険で損失をカバーすることも可能です。

3入居者等に不利益を与えてしまうリスク

不動産投資は現物であるため、地震で建物が崩れて入居者にケガを負わせる、老朽化したマンションのタイルが剥がれて通行人にケガを負わせるといったリスクも存在します。対策としては、物件のメンテナンスを適切に行うこと、施設賠償責任保険(ただし地震による被害には適用されない)に加入することなどがあります。

3-4キーワードは早く、小さく!? 不動産投資で失敗する人

ほとんどのリスクは事前に備えることで回避が可能です。しかし、すべての投資家が正しい対策を講じられるわけではありません。特に初心者のうちは、多少の失敗は「あって当然」と考え、失敗経験を通じてスキルと胆力を積み上げていくくらいの心構えが必要です。

実際に、今は成功している多くの不動産投資家たちも過去には何度も「失敗」を経験しており、彼らの多くが、「早いうちに小さな失敗を経験することが、先々の大きな失敗を防ぐ」と語っています。

ただし、全財産を失って人生を棒に振るような「とり返しのつかない失敗」だけは絶対に避けなければいけません。それを防ぐためには、事前に正しい知識を身に着けること、相談できる先輩や仲間を持つこと、そして、最初は小さな物件から始めること等があります。

4

始める前に知っておきたい
不動産投資の流れと注意点

4-1不動産投資の勉強から売却・納税まで

不動産投資の流れは、簡単にいうと以下のようなものです。

事前準備物件を探す

不動産投資の流れ:写真01 不動産投資の流れ:写真02
  1. 学習する・自己資金をためる

  2. 良い収益物件を探す

  3. 欲しい物件があれば調査の上、買い付けを入れる

  4. 融資を付ける(現金買いの場合は不要)

賃貸による
インカムゲイン

不動産投資の流れ:写真03 不動産投資の流れ:写真04
  1. 購入

  2. 管理会社を選定し、管理を依頼する

  3. 必要ならリフォームを行う

  4. 管理会社や賃貸仲介業者に空室の募集を依頼する

  5. 退去者が出たら必要なリフォームを行い、8に戻る

売却による
キャピタルゲイン

不動産投資の流れ:写真05
  1. 売却

上記の流れを繰り返し、時には同時並行で行い、資産の増加を目指します。

4-2初心者が不動産投資を行う際の注意点とリスク回避術

次に、それぞれの注意点を紹介します。

1学習する・自己資金を貯める

「学習する・自己資金を貯める」の部分はすべての基礎となり、ここをしっかりと抑えることで失敗のリスクを低減できます。学習については不動産投資に関する書籍、セミナー、勉強会等で正しい知識を知ることが大前提となります。

学習する際の注意点は、「その情報を得るために、身銭を切った人」から学ぶことです。世の中には、不動産投資の経験のない人が講師を務める不動産投資セミナーや、収益物件を持たない著者が書いた不動産投資本も数多く存在します。

書籍の著者やセミナー講師の実績を参考に、幅広い情報を集める中で、自分にあったやり方を見つけていきましょう。

2良い収益物件を探す

aより多い情報に触れて相場観を身に着ける

物件の探し方として一般的なのはネットでの検索です。その他に、不動産会社を訪問して物件の紹介を依頼する、空き家の謄本を調べて持ち主に手紙を出すといった方法もあります。

最も大切なのはより多くの物件情報に触れ、気になる物件があれば内覧に行くというルーティンを繰り返し続けることです。勉強会等に入り、まわりの不動産投資家が実際に買った物件を見せてもらうのもいいでしょう。多くの物件を見るうちに、「この場所でこの価格は安い」といった相場観が身につき、良い物件を見つけられるようになります。

不動産投資情報を扱うポータルサイト等で、希望する物件の条件を登録しておくと物件情報が届くサービスを利用できます。効率よい情報収集のために活用してみるとよいでしょう。

b収支シミュレーションをする

検討中の物件に買い付けを入れる前に、購入後の収支をシミュレーションしておくことは非常に大切です。専用のアプリやシミュレーションソフトなどを利用することができます。

ここでの注意点は、自分自身で必ずシミュレーションを行うことです。失敗する投資家の中には、家賃が下がらない、空率や修繕費を考慮していない等、不動産会社が作成した不正確なシミュレーションを鵜呑みにして物件を購入してしまったというケースが見受けられます。

3欲しい物件があれば調査の上、買い付けを入れる

自分の基準に合った物件があれば、現地で近隣の様子や物件の状態などを調査します。また、近隣の不動産屋をまわるなどして賃貸需要を確認します。その上で問題がなければ買い付けを入れます。

買付を入れる際に、「融資がつけば買う」という条件付きの買い付けを「融資特約つきの買い付け」と呼びます。通常は買い付けの一番手が優先されますが、買い付けに融資特約を付けた場合、現金での買い付け客に順番を逆転されることがあります。

4融資を付ける(現金買いの場合は不要)

物件購入にあたり融資を利用する場合は、お金を貸してくれる金融機関等を見つける必要があります。その際、不動産会社が紹介してくれるケースと、不動産投資家自身が金融機関を回り、借入先を見つけるケースの2パターンがあります。

候補としては都市銀行、信用金庫、ノンバンク、日本政策金融公庫などがありますが、時期や借りる人の属性、物件の種別によって結果は全く異なります。事前に地域の大家の会などで情報を入手し、できれば先に融資を受けたことのある投資家の紹介を受ける形で相談に行くと、検討してもらえる確率が高まるでしょう。

日本政策金融公庫は民間の金融機関よりも間口を広く設けており、初心者にも利用しやすい金融機関といえます。

5購入・決済

契約書と重要事項説明書は事前にメールで送ってもらい、内容を確認しておきましょう。不明な点があれば、ネットで調べたり、詳しい知り合いに相談したりして、解決しておくことが重要です。

6管理会社を選定し、管理を依頼する

物件を購入した後は、自主管理をするか、管理会社に管理を任せるかのどちらかを選ぶことになります。自主管理では、家賃の回収や入居者とのやりとりなどを不動産投資家自身が行います。それができない場合には、それらの作業を管理会社に委託することになります。

管理会社は物件の仲介をした不動産会社に依頼する場合や、売主の利用していた管理会社をそのまま引き続くケースの他、評判や実績などを調査して新たなところに委託する方法もあります。

管理会社に支払う管理費は地域や管理内容によっても異なりますが、一般的には家賃の5%程度(家賃6万円なら毎月3000円の管理費)です。悪質な管理会社に売り上げをごまかされるといった事例も少なくないため、管理会社の選定は実績や評判などを加味して慎重に行うことが大切です。

7必要ならリフォームを行う

管理会社のアドバイス等を取り入れながら、満室経営に向けて必要なリフォームを行います。注意点は、あれもこれもと手を入れてやりすぎにならないようにすることです。コストを抑えつつ、入居者に選ばれる部屋を作れるようバランスを探りましょう。

8管理会社や賃貸仲介業者に空室の募集を依頼する

管理会社だけでなく、物件の近くやターミナル駅にある賃貸客付け会社を営業に回ることで、満室へのスピード感を早めることができます。その際、マイソクや画像などをデータで渡すようにすると掲載までをスムーズに行ってもらえるでしょう。

9退去者が出たら必要なリフォームを行う

退去者が出た後は、次の入居者募集に向けて部屋の修繕を行います。原状回復でいいのか、それとも家賃アップを狙ってバリューアップするのか、その時の状況に応じて作戦を練りましょう。

リフォーム会社の見積もりを複数取り、その中から発注する方法の他に、管理会社にリフォームを任せることも可能です。その際も見積もりをとり、適切な価格かどうかチェックすることが大切です。

10売却

家賃収入でインカムゲインを得ながら、物件の売却でキャピタルゲインも併せて得ることで、資産を効率よく増やすことができます。不動産を売却する理由としては高く売れるタイミングだから、新しいものに組み替えたい等、様々なものが考えられます。

注意したいのはそのタイミングです。個人か法人か、所有して何年目か等によって売却益にかかる税率が変わってきます。売却を想定した物件の買い方を心がけたり、お金が残りやすいタイミングを計ったりすることで売却で得た資金をより有効に活用できます。

11納税

給与所得であれば、会社が源泉徴収や年末調整という形で処理をしているため、従業員は何もする必要はありません。しかし、不動産投資を始めたら、不動産所得を申告するための確定申告が必要になります。確定申告は自分で行う以外に、税理士に委託することもできます。

4-3不動産投資をやらない・やめるという選択

どんなことにも、向き不向きがあります。勉強を始めたけれど面白いと思えない。小さいものを一つ買ってみたけれど、続けるかどうか迷っている。中にはそういう人もいるでしょう。

不動産は流動性が低いため、大きく買い進めた後ですべての物件を手放そうとしても時間がかかりますし、借金や多額の税金が残ってしまうこともあります。そうなる前に、見切りをつけるのは悪いことではありません。

検討した上で買わないと決める、試しに始めて見たけれど撤退する。どちらも失敗でもなければ、後退でもありません。行動したことでその結果を得られた以上、それを始める前よりも前進しているのです。

不動産投資の他にも、資産を増やす手法は世の中にいくつもあります。山を登るルートは一つではありません。自分に合った方法で豊かな人生を目指しましょう。

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