最少の手数で最大の効果を狙う!
築古物件の強みを活かす差別化戦略

築古物件選びは欠点を探すネガティブチェックになりがちであり、改修も古いところを直す方向で考えがちだ。
もちろん、致命的な欠陥は避けるべきである。しかしながら、新築のように改修すれば客付けできるほど単純な市況ではないし、築古ならではの魅力を損ねるのは、とてももったいないことだ。
そこで、築古賃貸物件の改修アイディアを軸に、空室対策や不動産活用を実現するためのプラットフォームサービス「モクチンレシピ」を展開しているNPO法人CHAr代表の連勇太朗さんに、築古物件ならではの風合いを活かし、差別化した物件をつくるためのヒントを聞いた。
「子育てでは欠点ばかり探していると、才能が伸び悩むと言われています。反対に良いところを見つけて伸ばすと、才能を発揮しますよね。これは築古物件も同じです。
物件の欠点を直すという発想ではなく、すでに備えている魅力を引き出す工夫をすれば差別化につながります」と連(むらじ)さんは話す。

見た目を綺麗に改修した物件や、設備が新しい物件は山ほどあるから、そこでの差別化は難しい。その物件ならではの特徴を活かした改修を行うことで、少ない手数で最大の成果を狙うというのが、「モクチンレシピ」のコンセプトでもある。
物件を肯定的に分析するから
差別化ポイントが見えてくる
「僕は『どんな物件にも絶対に良いところがある理論』を提唱しています。物件を肯定するところから入るからこそ、優れたところが見えてくる。この感覚は不動産投資家のみなさんにとっても重要なものだと思います」
他の人が見落としている価値を見出すことができれば、不動産投資としてのうまみも出てくるというもの。そういう視点で見れば掘り出しものにも出会える。
しかも、SDGsの観点が重視される今、デザイン性のある築古物件は支持されやすい。新しいものが好きな人には受け入れられないかもしれないが、万人受けする必要はないのだ。
「例えば、ワンルームはどこから切っても同じ金太郎飴的な物件に見えがちですが、本当は価値あるものに変わるポテンシャルを秘めているんです」



入居者の暮らしをイメージしながらポイントを一つ作るだけで、ストーリー性のあるワンルームに変身するのだ。
「どこを改修するか」ではなく
「どこを残すか」から考える
「室内のエレメントを軸に発想することもあります。例えば、和室の六畳間にアンティークのような味のある建具があったとしたら、それを軸に考えてみる。残すべき軸が決まってはじめて改修するべきところが見えてくるんです」
改修の方向性と優先順位も決まっているから、改修費用を抑えつつ、効果的に使うことができる。そのため、改修費用の減額調整が必要になったときも「もっと安くならないですか」という単純な価格交渉ではなく、戦略的な減額調整が可能となる。
もちろん、古いところを全て改修するよりも、トータルコストも安い。しかも、新築にはない風合いを出すことができるのだ。
「築古物件のトイレやお風呂にはタイルが使われていることが多いです。壁も床も新しくするとお金がかかりますが、側面だけ残すことによって新築にはない特徴をつくることができます」

「風呂も同じで、タイルのままでも鏡やシャンプーヘッドを変えるだけで随分と印象が変わります。既存のものを活かすことが差別化ポイントになるのです。
ちなみに、築古物件にありがちな『押し入れ』を一般的なクローゼットに変えてしまう人が多いですが、もったいないです。『押し入れ』には収納以外にも活用パターンがあるんですよ」
物件の「面影」を残しているから
元の持ち主から感謝されやすい
差別化ポイントを仲介や管理会社に伝えれば、単なる築古物件ではなく、レトロな魅力が詰まった物件として案内してもらえる。そういう意味で、ただ改修するだけではなく、物件ならではの魅力をしっかり伝えることも重要になる。
「ちなみに、僕たちの改修アイディアは元の持ち主さんに喜ばれることが多いです。ここ最近、ご両親から築古物件を相続し、持て余す方も増えてきました。
愛着のある実家が全く違うものになるより、どこか面影が残っていたほうが良いですよね。元の家を尊重したことによって、改修後に感謝されることも多々あります」
さて、今回の改修理論の話はここまでである。これから1年間に渡り、モクチンレシピのコンセプトに基づき「築古物件のリノベ理論」を展開していく。次回はモクチンレシピの「押し入れ最強理論」を紹介する。
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健美家編集部(協力:
(とやまたけし))