自己の所有する賃貸住宅物件の特性をよく知り、それに合った火災保険商品選び、補償する項目を決定し、適切な保険金額を設定する・・・。
この一連の作業は、本来代理店と一緒に一つ一つ確認しながら行なうことだが、なかなかそれができていないという。賃貸物件の新規購入の場合などでは、予め用意された保険申込書に慌ただしくサインをしただけ、などという話しも時折耳にするのだ。
火災保険は決して安い買い物ではない。況してや希望通りの契約内容になっていないなど、事故が起きたときに損害を十分に補償できなければ、それはとてつもなく高い無駄な買い物になってしまうのだ。
そうならないためにも、これら一連の手続きについてもその手順を知っておく必要がある。今回は火災保険の契約手続きについて解説したいと思う。
・保険契約申込書で確認すること
言うまでもなく、保険契約において最も重要なのが契約申込み手続きだ。
一部にはWebによって完結可能な保険商品もあるが、賃貸物件に掛ける保険は事業用であり専門性が高いため、紙の申込書による手続きが一般的だ。白紙の申込書に必要事項を記入して使用することはあまりなく、契約者情報、建物の詳細、保険期間、補償内容、保険金額、保険料などは契約者の意向に沿った内容が予め申込書に印字されている。
これらが正しく印字されているかを一つ一つ確認し、意向通りの内容になっていることを確認してサイン(法人の場合は押印)して契約は有効となる。
確認する項目は以下のとおりだ。
@契約者、および被保険者情報 A建物の詳細※
B建物評価の根拠 C適用可能な割引※
D保険料払込方法 E他の保険契約の有無
F保険期間 G保険種類 H保険金額(免責金額)
I補償内容 J付帯する特約 K保険料
L重要事項説明書確認の有無
M地震保険申込みの有無
N約款、保険証券の発行方法
上記の※印は、確認のための公的資料の提出が必要である。どんな資料が必要なのか十分な説明を受けた上で、事前に代理店に提出しておくことが望ましい。契約締結時までに写しなどを提出できない場合、割引が適用できないこともあるので注意が必要だ。
*公的資料の例:建物謄本、確認済証、設計住宅性能評価書など
その他の注意点
@の契約者住所は、郵送物が確実に届く宛先にする。
A物件の所在地は「地番」ではなく正しい「住居表示」を申告する。(謄本に記載されているのは「地番」なので注意する。)また、建物の付属物(建物の基礎、畳・建具・造作、門・塀・垣・屋外設備装置)を補償対象に含めるか否かについても必ず確認する。
E他の保険契約が有っても、新契約の保険始期日当日までに解約する予定があれば「なし」と回答して可。
F保険始期は特に申し出がない場合当日の午後4時からとなっているため、新規購入時などでは決済予定時刻から補償が開始されるよう任意の時刻を申し出ておく必要がある。
L重要事項説明書には必ず目を通す。どんなときに保険金が支払われないのか、告知義務、通知義務とはどんなことなのかなどを確認し、わからないことがあれば質問する。
M地震保険は原則付帯するものとなっているため、付帯しない場合にサインまたは押印をしてその意思を確認する。
N約款(ご契約のしおり)、保険証券はWeb閲覧版として紙の帳票の発行を省略することもできる。約款はWeb閲覧の方が必要項目を探しやすいが、保険証券は紙で発行した方が管理しやすいだろう。
対面による手続きの他、郵送などによる手続きも認められている。これだけ多くの確認事項があるため、契約手続きには相応の時間が掛かる。時間に余裕を持って、または事前に書類に目を通しておくとよいだろう。
(住宅用火災保険申込書イメージ)
・保険料の払込み
保険料の支払はキャッシュレスが主流だ。契約時に保険料を用意する必要はなく、口座振替、クレカ払、コンビニ払(一時払のみ)などの後払いが可能だ。
契約申込時にいずれかの払込方法の依頼手続きが完了していれば、保険契約申込書を提出したその場から補償を開始することもできる。
実際の支払時期は、クレカ払はカード会社の約定日、口座振替とコンビニ払は保険始期月の翌月の約定日となる。何らかの理由で約定日に支払ができなかった場合(預金残高不足、口座情報相違、届出印鑑相違、コンビニ払込票期限切れなど)でも、保険契約が直ちに失効することはない。
通常、保険始期月の最長3ヶ月後の月末までを猶予期間としているので、保険会社への直接振込入金がなされれば保険契約は失効しない。
・契約開始後の保険料の追加、返還
保険契約が開始された後に、保険金額を増額したり、特約を中途付帯したい場合などでも、追加保険料はキャッシュレスの後払いが可能だ。
取扱代理店に電話でその意向を伝えれば、契約内容の変更は即時に可能となり、追加保険料の収納は口座振替やクレカ払では翌月以降の約定日に自動的に行なわれる。
また、建物の構造や面積に変更が生じ、建物のリスクが変化するような増改築や改装、使用用途の変更などが生じた場合、保険契約者はこれを遅滞なく保険会社または代理店に通知しなければならない(通知義務)。この場合の保険料の差額精算も同様に行なうことができる。
このように契約内容の変更は即座に、比較的手軽にできるので、物件の新規購入などで補償内容を十分に検討する時間的な余裕がない場合には、一定期間経過後に再度検討して契約内容を見直すのもありだろう。
執筆:
(さいとうしんじ)