誰でも不動産業を始めたばかり、もしくは始める前は手探り状態のはずだ。しかし、徐々に知識の量と幅を広げ、事業を拡大していく事は可能である。
今回は、夫が2棟18室、妻が法人で3棟21室を所有している年間家賃収入2千万の夫婦が、不動産事業を通じて変化していった思考とその経緯、そして学んだ事をどう活かしたかについて聞いてみた。
初めてのマンションで1500万以上の儲け!
不動産投資の魅力に気づく
この夫婦が不動産事業を始めたのは2010年。夫の勤務先の突然の引っ越しにより、所有していた区分マンションを賃貸に。その後、2015年に売却した事がきっかけとなった。
当時、リーマンショックの影響とアベノミクスの効果も追い風となり、不動産価格が上昇。中古の市場価格も高騰し、当時3100万で購入した区分マンションを3900万で売却。純利益約800万と5年間の家賃収入840万を得たことで、資産運用について真剣に考え始めたという。
人任せにしすぎた1棟目のアパート新築
利回りの低さに愕然
まずは、売買を行う不動産会社を調べ、片っ端から訪れた。しかし、主体的ではなく、はなから誰かに頼る前提で不動産を購入しようとしていた姿勢が要注意だった、と。
結局、知識もないままに、有名な大手メーカーで土地と新築木造アパート1棟を8000万で購入。いくつか土地を見て回り、駅前で活気があるという直感で購入したという。しかし、利回りが当時6.9%と低く、キャッシュフローは生みにくかった。
ただ、対応は丁寧かつ迅速、提案力もある為、他の管理会社と比べて信頼できることは有り難かった。

2棟目で気付く厳しい現実
6社すべてに融資を断られる
翌年、他の業者で土地及び新築木造アパートを6000万で購入。利回りは7.9%。このように、毎年1棟づつ買い増しをする計画でそれが可能だと思っていたそうだ。
しかし、2018年ファミリー向けの物件を探していた所、厳しい現実を知ることとなる。不動産事業に不可欠な金融知識が足らず、事業計画書も作成できないようでは金融機関からは相手にしてもらえなかった。
「何より、金融機関は初対面の人間に心を開かない」と重い口調で語る。結局、金融機関6社全てから断られる事となる。世間では、かぼちゃの馬車やレオパレスの偽造問題と、金融庁の不動産売買事業に対する絞り込みで全国的に厳しい状況でもあった。

無知な自分とサヨナラ
銀行融資のためには徹底的に調べて考え抜く
初期では大手メーカーの営業マンにお任せ状態。尚且つ、融資先もネットバンキングだった為、面談もなく付箋が張られた箇所に記入するだけ、言われた書類を用意するだけで終了。審査も知識を有する事なくスムーズに終えたそうだ。
「今思えば、自分で考えずにプロに任せておけば大丈夫、と高を括っていた部分がありました。たまたま、運が良かっただけで、もしかしたら融資資料改ざんが行われていてもおかしくないと思うと背筋が寒くなります。」
今では、金融機関へ持ち込む資料はすべて自前準備するという。さらに、営業マンに任せきりだった事業計画書は、今では自分達で物件の概要やセールスポイントをアピールできるように調べ尽くすという。

ゴール地点まで計算することで
見えてくる年単位の目標
彼らのゴールは物件数を増やし、会社員をセミリタイアして不動産事業に専念する事だ。初めは物件購入の為に、融資の審査が下りる事を念頭に事業計画を練っていたそうだが、物件数が増えるにつれ、計画の立て方が変わったという。
最終的にキャッシュフローいくらという目標さえ定まれば、現時点からゴールまでいくらのキャッシュフローを何年かけて得る事ができれば目標達成に繋がるのか、ということが明確になる。そこから更に、今年分のキャッシュフローを得るには、どのぐらいの規模の不動産を購入するべきかが必然的にわかってくるのだ。
そうすることで、確実に家賃収入を増やし、セミリタイアをする、というゴールまでのスピードは俄然速くなるという。

不動産投資事業を成功させるために
必要とされる5つのスキル
金融知識や税務知識はもとより、不動産事業から学んだこと。そして、これからも必要とされるスキルとは
・コミュニケーション能力
・行動力
・即決力
・学ぶ姿勢
・前向き思考
「不動産事業は一人で行えるものではないので、コミュニケーション能力は必衰です。とにかく、人の話を聞く姿勢。そして、段階的でもいいので知識の幅を広げる事です。営業マンはある程度の収入など個人情報を元に営業を行っているが、相手への個人情報の開示は自分の知識や、相手への信頼に比例します。
初心者は騙されまいと、収入を聞かれる事や源泉徴収票の開示などを拒みますが、知識さえあれば無謀な事業計画を提示されても、適切な判断で断ることができるので、臆することなく次の商談へと進むことができます。そして、学んだことを実践する。知識だけ蓄えて動かない、判断を下さない人は前に進めません。」
健美家編集部(協力:合同会社Noi 西山 絵里香)