熱海の土砂災害、熊本を中心とする令和2年7月豪雨など、各地で水害・土砂災害が増加傾向にある。
「正しい知識があれば、リスクを軽減できる」ということで、不動産コンサルティングの株式会社さくら事務所が、2021年7月に災害対策セミナーを開催した。その内容を元に不動産投資家に向けてポイントをお伝えしたい。
「水害の可能性のあるところとないところで、損害保険料の違いが出てきています。損害保険会社はここ数年、赤字が続いているので、今後、保険料のコントラストがより強くなるかもしれない。金融機関の担保評価に差が出ることもありえます」とさくら事務所会長・不動産コンサルタント長嶋修氏は話す。
水害・土砂災害のリスクは
ある程度予見できる
ではリスクの高い土地はどう見極めればいいのか。先日の熱海の現場を含め、日本各地の災害現場で調査をしているだいち災害リスク研究所所長の横山氏が解説する。

「先日の熱海の土砂災害が起こった場所は、もともと土石流が繰り返し起きて、その土地の地盤になっていたと考えられます。ハザードマップでも土石流の警戒区域となっていました。
人工改変地があったことが報道されており、静岡県の調査も引き続き行われることと思いますが、今後は土地改変基準の厳格化も進むでしょう」
2018年の西日本豪雨では
「まさ土」が多い地域で土石流が発生
熱海で土石流が起こったのは1カ所だったが、2018年の西日本豪雨では、約760カ所で土石流が発生した。その多くが花崗岩地帯で「まさ土」と呼ばれる風化土砂の地域で発生している。
近年は豪雨の発生頻度が上がり、比例して土砂災害も起こっている。しかし、全くの想定外の土地で起こることは少ない。
「崖は崩れますし、水は低いところに集まり、あふれることによって肥沃な土を下流に運び、豊かな農地をつくります。自然の原理原則に基づいて災害は起こりますし、近年の気候変動や、人工的改変がそれらに拍車をかけているのです」
では災害リスクを考慮して物件を選ぶときは、どのような点に注意を払うべきか。ハザードマップで色がついているエリアはリスクが高いとわかるが、色がついていなければ安全というわけでもないという。

「ハザードマップは目安にはなるものですが、洪水や河川の増水で亡くなる方は、色がついている想定浸水区域の外にいることも多いです。
注意してほしいのは地形の情報。例えば、水害による遭難のほとんどは、川沿いの低地で発生していることがわかっています。
地形区分、土地の履歴、災害の履歴などを考慮することで、 災害リスクを検討することは可能です」
ハザードマップや地理院地図を使いこなせば
最低限の情報は手に入る
現状の制度下で、不動産の災害リスクについて知ることができる制度はない。
2020年8月からハザードマップをもとにした水害リスクの通知が重要事項説明で義務化されているが、重要事項説明は購入意思が固まった後に受けることが多い。
リスクを避けようと考えるなら、災害リスク研究のプロに相談するか、自ら知識をつけることが大事だろう。ハザードマップや地理院地図で最低限必要な情報を得ることもできる。

なお、国土地理院が公開しているベクトルタイル「地形分類」を見ると、土地の成り立ちと、その土地が本来持っている自然災害リスクを知ることができる。
早速、購入検討をしている物件の住所を入れて調べてみてはいかがだろうか。
健美家編集部(協力:外山武史)