
トランクルーム市場が順調に拡大している。コロナ禍で縮小・閉店を余儀なくされたテナントが増えたことで雑居ビル、店舗ビルのオーナーが空き区画をトランクルーム仕様にして提供するなどのほか、テレワークが浸透するなど在宅時間の増大といった住環境の変化を受けての収納ニーズもトランクルームの市場拡大を後押ししている。
トランクルーム大手であるキュラーズ(東京都品川区、スティーブ・スポーン代表取締役)は、2021年11月に現状の市場を調べた結果をまとめている。
その同社が毎年実施している「Annual Supply Survey」によると、トランクルーム市場(屋内・屋外含む)は2008年比2.4倍となる670億円規模に成長している。
店舗数で見ると、1万1000店舗を突破してファミリーレストラン市場を超えた。全国のトランクルームの延べ室数は統計史上初めて50万室を突破。将来的には、2026年に1000億円規模を超えると予測している。
最近の分譲マンションは販売価格が高騰している。こうした市況下では不動産会社が販売価格を抑えるために専有面積を縮小して開発するのが常だ。マンションの収納不足は今に始まったことではないが、縮小によりさらに収納不足感が増していることでトランクルーム需要は都市部を中心に増大すると見られている。
住宅よりトラブル少なく維持管理しやすい
そのような中、アパート・マンションに比べてトランクルームの利回りに魅力を感じるサラリーマン不動産投資家が増えている。
東京23区の賃貸マンションの区分価格は高騰し、白金や高輪といった人気の都心エリアは利回り3〜4%台の水準だが、トランクルームは初期投資額が低く抑えられることで10%を超える水準だ。
利回りは年間の収入を初期費用で割って100を乗じて割り出すが、屋内型のトランクルームの場合、利回りは15%前後、屋外型では屋内型に比べて賃料が低いケースが多いことから利回りが低下するものの、それでも10%程度は確保できると言われている。なかには25%前後の利回りをたたき出すケースが見られる。
ただ、初期投資額について、「設備や内容によりけり。既存の建物を借り上げてパーテションを入れて展開する場合、100室程度で約1000万円となるが、土地を購入して建物を建ててとなるとそれなりの費用がかかる」(中堅トランクルーム事業者)。
ランニングコストが低い点に投資家が注目する。電気・給排水などのメンテナンス費用が低く抑えられ、入居者トラブルがない。もちろんリスクがないわけではない。
トランクルームは満室稼働に持っていくまでに時間がかかるのがネックだ。100〜150室あると1年からそれ以上の期間を要するケースが多い。出店立地を誤ればいつまでも満室に至らないし、そもそも参入障壁が低いため好立地では競合にさらされる。
ただ、一度利用してもらうと長期に使ってもらえる。そのためには、トランクルームの質の確保が客付けに欠かせない。収納ニーズとしては、季節モノの衣服・電化製品、書籍、趣味の道具などだが、ビジネス街では企業の需要もある。これら収納していたモノが傷んだり、盗難に遭ったりしないよう空調管理ができる設備や盗難を防ぐための防犯設備を整えておく必要がある。
遊休資産の有効活用でキャッシュフロー生み出す
サラリーマン大家さんの延長線上でトランクルームを運用するケースとしては次のようなものがあるが、基本的に土地・建物の有効活用の側面からのアプローチである。
@土地・空き室を仕入れてトランクルームを整備して運用するケース。まともな整形地では土地代が高く付くため、特に主要都市部の住宅街やビジネス街が近い場所では狭小地・変形地を狙うことで地ぐらいの高い立地にありながら利回りを出せる。
A遊休地を持つ地主が自らトランクルームを開発して運用するケース。賃貸住宅に比べて自主管理しやすいが、管理・客付はサブリース(一括借り上げ)事業者に任せる。ブランド力のあるトランクルーム業者のフランチャイズ店として運用することで早期の客付けにつなげられる。
また、記事冒頭でトランクルームの需要は都市部を中心に増大するとしたが、地方・郊外においても需要がある。収納ニーズは地域によって異なる。郊外に住んでいる人は、より多くの荷物を持ち、より多くの車を持って生活しているので、実はどんな過疎地にあっても収納ニーズはある。
それに見合う料金と安い不動産があるかというバランスの問題にすぎないためトランクルームは全国ベースで拡大する可能性を持っている。
健美家編集部(協力:若松信利)
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))