気候変動や人口、社会などに対応した
ESG・ SDGsに沿った不動産投資とは?
近年はメディアでもたびたび報じられ、身近になりつつある「ESG」や「SDGs」というキーワード。多くの企業がこれらに取り組み始めているのは、ご存じの通りだ。

言わずもがな、ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉。企業が持続的に成長するにはこれら3つの観点が必要で、2006年にESG投資のガイドラインである責任投資原則(PRI)が定められたことを機に注目され始めた。
簡単に言うと、企業は気候変動や人口問題、ダイバーシティ、企業統治について積極的に取り組み、投資家はこうした企業に投資するという考え方だ。
一方、SDGsは2015年9月に国連がまとめた「持続可能な開発目標」のこと。2030年までに世界で達成すべき目標を「貧困」や「飢餓」「エネルギー」など17のゴール・169のターゲットにわけて提示している。
2001年に国連で策定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」と1990年代の主要な国際会議で採択された国際開発目標を統合したものであり、日本も積極的に推進している。
両者の違いだが、ESGは投資家から投資先に配慮を求めたり、企業が株主や顧客、取引先などステークホルダーへ配慮するといった視点を指し、企業の長期的な成長に寄与するという考え方。SDGsは持続可能なより良い世界を目指すため、国や地方自治体、企業のすべてが取り組む目標というように、視野がさらに広い。
企業目線であれば、ESGを意識して事業を展開することが結果的にSDGsの達成にもつながり、持続的な企業価値の向上になる。いずれにしても、気候変動や世界的な人口増加、片や日本では少子高齢化など、経済・社会・環境を取り巻く課題は山積している。
ESGやSDGsを通じて解決することが、地球や人類の存続にかかわることは言うまでもない。
そうしたなか、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)の不動産ワーキンググループはPRIを不動産投資に適用する考え方として「責任不動産投資(PRI)」を推進していて、近年は不動産におけるESG投資の考え方が浸透しつつある。

出所:国土交通省ホームページ
分野別の具体的な取り組みとしては、環境なら省エネ性能などの向上、社会については健康性や快適性の向上、地域社会・経済への寄与、災害対応などがあり、これを意識した物件を購入する個人投資家も増えてきた。健美家のニュースでも取り上げているので、ぜひご覧いただきたい。
加えて、UNEP FIは下図のような、SDGsにも資するポジティブ・インパクト不動産投資のフレームワークも示している。

出所:「ESG不動産投資の在り方検討会 中間とりまとめ(概要)」
大手ならまだしも、個人投資家がSDGsを踏まえた賃貸経営をすべき、もしくはできるのかと思うが、決して難しいことではない。
例えば、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」を指す「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」。
政府は、「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」という目標を掲げ、経済産業省や国土交通省など関係省庁が実現に向け動いているが、まさしくSDGsの視点に立った住宅だ。
ZEHは高い断熱性や高効率設備の利用により月々の光熱費を安く抑えることができ、室温を一定に保ちやすいことから、急激な温度変化によるヒートショックによる心筋梗塞などの事故を防ぐ効果もある。
太陽光発電や蓄電池を備えていると災害時などでも生活を維持しやすい。入居者からすると低コストで快適な暮らしができるので、非ZEH賃貸住宅より選ばれる可能性は高いだろう。
いまの若い世代は幼少のころからESGやSDGsの関連する教育を受けているので、環境や社会に対する意識は非常に高い。かつ、収入も限られるのでランニングコストが抑えられる住宅へのニーズは高く、環境保護に貢献している満足感も得られる。
これから先は、物件選びにSDGsが関わりやすくなり、賃貸経営に影響を与える可能性が高い。今後、収益物件を購入・建設する際は、これらの要素も取り入れると、それこそ持続可能性の高い賃貸経営が実現するかもしれない。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))